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貧困という監獄 グローバル化と刑罰国家の到来 みんなのレビュー
- ロイック・ヴァカン (著), 森 千香子 (訳), 菊池 恵介 (訳)
- 税込価格:2,530円(23pt)
- 出版社:新曜社
- 発行年月:2008.12
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紙の本
失われる人々。
2008/12/25 07:42
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
刑務所といっても。石井輝男監督の『網走番外地』シリーズ、ジャック・ベッケル監督の『穴』、スティーブン・キング原作の『ショーシャンクの空に』などなど、映画では親しんできたが、体験はしないで済んできた。
しかし、子どもの頃、ニュースで禁固、懲役と耳にするたびに。どう違うのかが分からず、親に聞くのも憚られた。そして上記の映画でも。その辺は分からない。
つまり、映画・ドラマで描かれる現代の刑務所では(一部の映画、例えば松方弘樹氏・若山富三郎氏主演の、山下耕作監督の秀作『強盗殺人放火囚』(1975年)などを例外として)、教育・訓練風景は描かれることはあっても、懲役=刑務所内の労働は余り描かれてこなかったように思える。
数年前の深夜、ふとTVで見たピーター・バラカン氏解説の『CBSドキュメント』を見て文字通り、瞠目した。アメリカの民営刑務所のレポートだった。日々、囚人達に十数時間の労働(コンピュータ部品の組み立てなど民間大企業の本格的下請け)が強制される。自らの「滞在」費用を弁済するためノルマが課され、そのノルマを達成できず「家賃」を支払えなくなった囚人は。「滞在」が延長されるのだ、という。
当たり前、とおっしゃる方もおられるだろう。
自分の食い扶持を自分で稼ぐのは。
ましてや「悪いこと」をしたのだから。
しかし、「貧・病・苦」が犯罪の温床であることは、無視できない事実ではないだろうか。
例えば、100円相当の盗み。100円分盗むくらい貧しいのだから、それをはるかに上回る罰金が払えるわけもない。当然懲役を選択せざるを得なくなる。そして、そこに民間企業が力こぶを入れて、「囚人のジレンマ」どころか、上記のような競争原理が導入されたら。
そして、残された家族は。まるで昔の戯れ歌のような展開だ。
「母も来ました、母も来る、父も来ました、父も来る」
本書は。アメリカにおける、そんな刑罰政策が、レーガン政権期以降、一貫して、「貧困を刑務所に閉じこめることで解決を図る」本来、学問的にあやうい「学者たち」と互いに協力・利用し合った事実を指摘していく。
貧困(者)を罪と同一視する政策が、はじめに結論ありきで、政府や民間「企業」からの補助金による「調査」によって「立証」された上で、「政策」として具申され、それが「実現」されていった、背景と過程。
さらにはその「成功」が、英国を中継点にフランスをはじめ、欧州に影響を及ぼしている現状を、簡潔かつ丁寧に描写、分析した、一冊である。
斜め読みに耐える、しっかりした日本語で翻訳されている。
膨大な原注に加え、親切な訳注も巻末に備えられていた。
40数年前、『革命の中の革命』(晶文社)を目ざし、南米に渡り、自ら「囚人」となった経験を有するレジス・ドブレ氏までもが。欧州の左派、第三の道グループの多くがこの流れに対して、とっている態度には。一体、なんと言ったら。
旧ソ連:ロシアには。この政策の輸出の必要もあまりなかった旨、本書でも触れられている。
「貧困」に対しての選択肢としての「兵舎」か「監獄」。
かつて。『監獄の誕生』の著者、ミシェル・フーコーは「囚人の権利」のための動きに自ら、携わっていた。
そんな彼の営みにも関わる、一冊の書物が、2008年3月、物故された、「もの書き」の本の山の中に、あった。
当方もまた。今、その山の中に入り込んでいるところである。
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