- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
女性の視点で描かれた短編集であるが・・・
2009/02/20 23:11
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
<まがりなりにも三十数年を生きてきた今の私たちは知っている。答えはひとつじゃないことを。結婚に生きても仕事に生きても、子供がいてもいなくても、離婚をしてもしなくても、セックスに愛があろうとなかろうと、そんなことは別段、人間の幸せとは関係がなさそうなことを。>(本文より引用)
オール讀物2007年2月号~12月号にわたって掲載されたものを単行本化。
『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞して2年半。
表題作がNHKでドラマ化も決定している森さんの短編集ということで期待して読んだのであるが、正直なところ読後ちょっと肩すかしを喰らった感は否めない。
ちょっと私の偏見かもしれないが、どちらかと言えばオール讀物より別冊文芸春秋に掲載された作品の方がクオリティが高いような気がするのである。
単行本化された時に前者(オール讀物)の方が“寄せ集め的”な印象が強い。
本作はあまりにも作品集としてのコンセプトがはっきりしないように感じる。
内容的には“文芸誌”じゃなく“女性雑誌”に掲載すべきだったと思うのは私だけであろうか。
200ページに満たないペース数の中に11の物語が描かれているのであるが、中には当然掌編と呼んだ方がいいものが半分近くある。
まあとらえようによっては女性の本音という部分では書けてるとも言えよう。
ちょっとこきおろしたけど(笑)、味のある印象深い作品もいくつかある。
まず冒頭でセリフを引用した「銀座か、あるいは新宿か」。
女性視点で語られていていわばこの作品集の主題を凝縮させた言葉だと言えそう。
ちょっと男性読者が読めば引いちゃうかも。
あとは女性の虚栄心を見事に描いた「パパイヤと五家宝」。
それとラストの意外性と女性の強さを誇示した「ドバイ@建設中」。
ちょっとブラックテイストの混じったものが多かったのがやはり期待外れだったのであろうと結論付けたい。
『風に舞いあがるビニールシート』はとっても女性にエールを送ってくれ、森絵都末恐ろしと感じたものであるが、はたしてこの作品集は同じような効果があるのだろうか。
全体的に深みのなさを感じざるをえず“物足りない”というのが私の結論なんですね。
ひとつの要因としてやはり枚数が足りないというのも大きいと思う。
そこで胸のすく終わり方よりも、どちらかといえばコミカルで意外性のあるエンディングに終始せざるをえなかったのもわからないことはない。
ただ“ユーモア短編集と割り切れないところ”が、森さんへの大きな期待の表れであるのですよね。
寡作な人だけに余計に期待しちゃう部分もあるのでしょうが・・・
その結果として私的には冒頭の表題作で登場するコーチのように“空回り”してる部分が多分にあるように感じたのである。
並の作家ならいざ知れず、直木賞作家に対する読者のハードルは高いと自覚して欲しいなと思う。
どちらかと言えば、胸のすく明日に繋がる作品を読みたかった。
読者の気持ちを代弁したい。
でも私の代弁って男性一読者ゆえのものかもしれないけど(笑)
みなさん薄い本なんでサラッと読んで意見を是非聞かせてほしいなと思います。
ちなみに私は結構、森さんのファンですよ。