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想像とは何か?
作るとは何か?
自分とは何か?
表現をするとは何か?
表現をする、その前の心構え。
何度も読み返したい、とても素晴らしい内容の良書。
買って読んで正解だった。
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第1章 着眼/発想の海のまなざし
→コンテキストの読み替え「そのものが置かれている“背景”を読み替える」「ある一点(色・音・線etc)を強調してとりだし、読み替える」
第2章 心身をチューニングする
→リラックス:ソフトアイとハードアイ。3段階のチューニング「自己への意識を集中させる」「まわりをゆったりとらえ、きづく」「呼吸を意識する」。ディテールを感じる。ポジションを決める。
第3章 ブラッシュアップの道具
→表現にもスパイスを。あいまいな表現「ということ」「というもの」への戒め。レイアウトとは水槽であるby菊地信義。
発想と表現のためのエクササイズ
ひっかかり=微細な変化を見る/コンテストを入れ替える/メタファーになるまで見る/逆説にする/一本の木をいろいろな位置から眺め、感じる/3分間書き続け、そこに個性が表れる/写真を並べ、傾向を探る/共感覚を使って感情の奥をのぞく:アーノルド・ミンデル「プロセス指向心理学」/すべてにイエス、すべてにノーと言う/ラストシーンからの物語の創造/からだで言葉のイメージを思い起こす/鷲になれ、虫になれ。そしてイメージをふくらませろ
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自分の気持ちに正直であること
新しいものより、大切なものを表現していく
「いかに発想するか?」
1. 「ひっかかり」を見つめる
わたしたちが日頃気づかないところを新しく発見する、ユニークさ。これがないと、表現は単なる事実の伝達でしかなくなる。「朝は早い」ではなく、「どう早く、どうすばらしいのか」。「事実」ではなく、「事件」ともいえる感動を伝えること、それが表現。
違和感の中に意味が変わり、新しい意味が生まれている。
ただし、その「ひっかかり」が「わざとらしく」感じられるものだったら、あっさり無視していい。それは表現者の自意識のあらわれであり、小手先のテクニックの披露にすぎない。
・ただならぬ、言葉にできない気配
・わずかな異変、徴候
・見えていながら、すぐには見えないもの
こういうものの中に「ひっかかり」が表現されている。それはディテールに潜んでおり、非常に繊細なもの。普段は見落としてしがいがちなもの
常識や思い込みの弱点を探ると、「ひねり」が突然出てくる
反語の問いかけ ex. 「笑いなどいらない」「愛などいらない」「怒りまくろう」
反語は冷たく見えるようで、そこに本質を発見しようとする姿勢がある
2. 「メタファー」にして、見る
メタファーとは、幻想のようであっても、嘘の世界ではない。
本物のような幻想=真実
3. 組み合わせてみる
ミシンと傘
関係ないものを関係づける、異質なものを結びつける。この関係の発見は、ものの見方で一番ダイナミックなアクション。
「動詞化」…動かすようにイメージすること
ミシンをふむ、傘をひらく→衣の風景がイメージされてくる。2つの異なるものが、1つのイメージに集中していく
矛盾をひきうけていく力。だからインパクトの強い世界ができる。「ジャンル」にすることが「まとめ」だとすると、想像力を使った「動詞化」は意外性に満ちたインパクトのある発見
エイゼンシュタインのモンタージュ。異質に見えるものを結びつけるとは、ものごとの新しい誕生の瞬間、この瞬間には、イメージが動きだしたがいにひっつこうとしている。そこから何かを発見しようとする私たちも、呼応するように想像力が活発に動き出す、つまり「動詞化」する
私たちは、なにかをひらめくとき、かならずしもデスクに座っているわけではありません。道を歩いていたり、電車に乗っていたり、そうした動きや移動の最中に面白い着想が浮かぶことが多いです。それは、発想が、脳だけの処理ではなく、体全体のうごめき=ダンスによって生まれるからだとも言えるでしょう
4. 空から見下ろす(俯瞰)
5. ゼロ・セット(意味なし)にしてみる
第3の意味
意味という重力
自分という主人公が弱くなってくると、自分の関心外のこともあざやかにいっぱい視野に入ってきます
ゼロセットの見方とは、微弱で、繊細な、はかない瞬間的な光景へのまなざし
意味をはずして見るためには、ただ、からだを感じること。自分のからだ全体を感じていれば、風景への所有、妄想、幻想が著しく弱くなってきて、静かに静かになってくる。
反対に体を感じていないと、頭を中心にして、妄想やイメージの渦に巻き込まれていく。そうなってくると、対象からの微妙な「質感の情報」が弱くなってきて、相手の存在感を感じとれなくなってくる。よからぬ妄想が渦巻き出す。
6. コンテキスト(文脈)を読み替える
コンテキスト=文や意味を成立させる「まわりの環境」
ex. 私という存在をグランドキャニオンという環境におくと「ちっぽけな存在」に見える
情報は文脈でできている(「知の編集術」松岡正剛)
ex. 戦場の中で、彼は彼女を思った vs 温泉の中で、彼は彼女を思った
コンテキストの読み替え法
・そのものが置かれている「背景」を読み替える ex. 戦場→温泉、コップを置く場所
・ある一点を強調して取り出し、読み替える ex.「赤」という色を中心に世界を見てみる
7. 逆説でとらえる
真理に反しているようではあるが、よく吟味すれば真理である説。外見上、同時に真でありかつ偽である命題(「広辞苑」)
常にひとつの視点で単純に見ていくのではなく、その反対の視点を含めて物を見ていく。反対の立場に立って見ていくと、見方のふくらみが出てくる
ex. 「フランス人の贅沢な節約生活」「浪費なき成長」
常識を疑うこと、そして常識を逆転できるか
逆説として見るためには、相反する2つを無理矢理にこじつけても逆説にはならない。まず一極を自然に長く強く感じていくのがいい。たとえば、「チープ」と「リッチ」であれば、1つの極である「チープ」をずっとイメージしていく。そうすると、1枚のチープなグッズであっても、たんに貧しいだけだはなくて、工夫次第で面白くなり不思議な個性を生み出すのではないか、そう考えると「チープさがリッチに」になる
「どうやって心身をチューニングするか?」
1. まずはリラックスする
ソフトアイ まずは、集中。力む事ではない。ネガティブな気持ち、「自信がない」「だるい」「忙しい」などそういう想念を取りあえず一切停止させる。そして、いきなり有無を言わせず表現を開始する。調子が悪かろうが、時間がなかろうがおかまいなく進める。
どうしても表現がいきづまるときは、いったん休むことも必要。た休むのではなく、「問題点を明確にしてから休む」こと。問題点が整理されていないと、その先を考えようがない。マックスまで凝縮して考えておく。たとえば、このパートと次のパートがスムーズに連動しないとか、何かを見落としているとか、ここは読み抜きができていないとか。こうした問題点の整理をしておく。
休み方 無意識を活性化させる→スポーツ、自然の中をウォーキングする、電車に乗る..
2. モチベーションを探る
ディティールから何かを想像できるとき、書くモチベーションが潜んでいることがある
モチベーションとは、
・自分にしかわからない対象のディテールを知っている
・その表現は、あなたと人をつなげ、itになる可能性がある
・わくわくするような偏愛に満ちた想像力が働くか、あるいは誰より痛みを感じることができるか
3. ポジショニングを決める
相手(被写体)を尊重して、共感する関係になっているかどう��?
4. エモーションを受け入れる
感情フリーズ型…イメージが湧き出て来るのを押さえ込みやすい。「自分の子供の感情」をあたたかく許してあげることが大切
「私は」を「彼は」に置き換えることができたとき、はじめて文学に入った。(カフカ)
5. 私らしくとは?
私らしく思う自分」と「人から見える自分」とが大きく違うこと
「私らしい」と思うイメージはわりと平凡で的外れなものが多い。そうすると、「私らしくあるもの」とは、「私らしくないもの」に含まれている可能性が考えられる。
次にそれを私なりにアレンジし解釈、変形、構成していくこと。
物語創作でも、最初ヘンテコだった主人公がマイナスの要素である「影」を受け入れ、すごく魅力的に変化して、感動させるのと同じ現象がある
自分自身になりきるとは「もうひとりの自分」を受け入れ、それをよい方向に向ける作業。私らしさとは、私の中にある他者(私ではないと思われるもの)との出会い
6. トラウマを大切に
悲しいものを悲しく見る、それは常識。かわいそうなものはかわいそうだという目も常識。反対に、表現とは負からエネルギーを借り手途方もない別のものに変えてしまう。もし私たちが、負の感情を感じたら、それを放置しておくのは苦しいだけ。自己反省するよりも、表現し、世界を再構成していくこと。
7. インプロを使う
・アクシデントでも受け入れ、すべてをイエスと言うこと
・自分を信じること
8. 苦手なことを短期間する
次の水準にいこうとすると、日頃自分が使っていない、特に苦手なものと取り組む必要がある
日頃使わない感覚を使う
「いかに表現するか?」
1.誰にどのように贈るか
どういう相手に、言葉を贈るか
・見知った人かそうでないか ・年齢、世代はどうか ・専門知識が必要か、不必要か
相手が感じ、考えやすいように表現すること
「伝わる」とはどういうことか
単に「悲しい」というだけでは伝わらない。素直な気持ちを伝えたければ、反対にひねらないと伝わらない
表現のジャンルの特徴を知っておく
目に見えるジャンル…写真、映画、絵画、漫画など、ビジュアル表現 → 外面で内面を表現
言葉よりビジュアルでどう語るかが勝負
ex. わずかに影をつけることで人間の不安な気持ちが表現される 風景にゆるやかな風をとらえるだけで、開放感を与える
目に見えないジャンル…小説、エッセイ、詩、クリティックなど、文字表現 → 読者は、想像力を補わなければ世界は見えない
2. スパイシィなひねりを
「美しさとは、きれいで、透明なものである」→ 間違いではないが、味わいはない
「透明」という言葉の奥に何か潜んでいないか?仮に「汚れを浄化するような作用」というイメージが見えてくるならしめたもの。そこを深く掘っていくと、「透明」とは違う別の言葉が出てくる可能性がある。「美しさとは、ゆっくりと澄んでいく姿」とか、別の表現の可能性はないか?そこを見つめていく根気がいる
そのとき書き手の中で具体的なイメージが湧いていれば、もっと説得力がある
イメージが見えている状態は、その人にしか見��ないディティールが表現されている
ディテールがあると、言葉がリアルになる
3. ミニマルな言葉にする
これだ!と自分が思うインパクトのある対象だけを書き、それ以外は書かない。そこに簡潔さとともに、言葉の響きが起きる。なにかを論理的に説明しようとするより、対象のもっとも核心部分をとらえ、そこを大胆に表現することだけを考えてみる ex. 古池や、蛙飛び込む、水の音
説明的な因果関係(こうだからこう)を飛び越えてしまう「飛躍」。私たちの日常にも、はっきりと説明できない現象が多い。そのなんとなく「飛躍」するとき、私たちは謎につつまれ、それを深く響きとして感じる
4. こころの状態が、文体のクセに
①助詞の不調
書くとき、躊躇し自信がない場合、なんとなくとりあえずという感じで「が」を挟みやすい
②あいまいな表現
「ということ」「というもの」→よく考えて具体的な名詞を入れること 「という経験」「という世界」
ex. 私のしたことは、社会というものへの挑戦だった → 私のした実験は、社会という掟への挑戦だった
③文字のかかり方に問題がある
ポイントへの集中が効果的な文章を生む
④リズム感に問題がある
文章を区切り、長短をつけること
⑤ひらがな、カタカナ、漢字が意識的に使い分けられていない
ひらがなは「やわらかさ」を、カタカナは洋風な感じを、漢字はイメージを分からせる力がある
⑥面白くない
伏線がある
私は、気分が悪くなって、寝込んだ → ふと時計を見ると、針が死んでいるように止まっていた。私は、気分が悪くなり眠りについた
5. ラストシーンは一つの宇宙
ラストの作り方
・さりげなく終わる宇宙 ex. 庭とは、一つの呼吸である
・今までの価値をひっくり返す宇宙 ex. 庭とは、たんなる空間ではなく、春夏秋冬であり、つまり時間である
・強調している宇宙 ex. すべての庭は、秋である ワンポイントを強調して表現する
6. 正直な気持ちがオリジナルに
オリジナルとは、「独創」ではなく「自分の気持ちに正直になる」ということ
いろんな囚われや先入観をどんどん削っていき、自分をからっぽにしていく。足し算ではなく、引き算をしていく。欲望や衝動のようなものが起きたら、それもずっと見ていきながら、その先にある自分の正直な気持ちを確かめていく。
正直な気持ちから出て来る表現とは、ふいに、ディティールに輝きがあり、それが全体の雰囲気を決定する表現。
不思議な、面白い言葉のディティールをもった表現が浮き上がってくる。
独創的なものよりも、万人が感じる「何気ないこと」の中に潜んでいる可能性が高い
7. 森の中にトーテムを立てる
タイトルの付け方 わかりきったことはタイトルにする必要はない。未知へ差し向けている、わからないから読んでみたいと思わすものがあるかどうか?
8. デザインではなくデザイニング
「質感の情報」が詰まった根源的な「はじまりの海」に帰ることが大切な行為。この海に帰ることは、「生き直すこと」
本格的な表現者は、かならずこの「生き直し」を経験し、すばらしい���現に例外な変えている。表現がたんに「うまい、きれい」とは違う次元のものをはらんでいるのは、この「生き直し」があるから