紙の本
ODA,NPO、ボランティアで日本はなにをしてきたのだろう
2009/04/14 12:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
菜々美は、学生時代に、かつて自宅に下宿していた従兄・稔が
紛争地帯の東ティモールで殉職した過去を忘れられません。
彼女は新聞記者だった彼の後を追うように、同じ新聞社に入社し
雑誌記者としてキャリアを積み重ねつつある28歳。
インドネシアでの地震取材をきっかけに
稔の謎の死に徐々に迫っていきます。
ODAや途上国でのボランティア活動、
NPOやNGOなどの題材がリアルに描かれます。
ただ説明に従事してしまった部分もあり、やや躍動感に欠けます。
これは主人公を雑誌記者とし、彼女を常に距離感を保つ
「優等生」的なスタンスを持たせたせいでしょう。
しかし、これらの活動に対する批判的な視線に共感を覚えます。
特にボランティア活動に身を投じている礼子に
「現実逃避」と言わせるのは、(小説内では別の理由があるにせよ)
冷めた視線で、日本人が海外でボランティアをする意味を
誰もが感じている「もやもや感」を見事に言い当てています。
著者の深い経験から生まれた言葉とともに
今一度、その意味を問いただす時期に来ているのだと
時代性を感じました。
また、菜々美をとりまく人々の物語がきちんと出来上がり
それらを読ませる力があります。
インドネシアを拠点とするフリーカメラマン兼ライター、
現地のインドネシア人のコーディネーターなど
魅力的な人物が行動を、いい意味で勝手に起こしていく。
その活動がいい。
ただ和樹の正体まではよかったのですが
礼子の正体はやりすぎかもしれません。
ここまで偶然を引っ張ると
他の部分のご都合主義も目に付いてしまいます。
また主題に隠れてしまっていますが、
女性を描くことにも秀でています。
稔の婚約者への菜々美の直感、
派遣社員と総合職女性との差、
NGOやボランティア活動に参加する日本人の半数は女性など
要所要所で、女性の姿を登場させ、心に残していきます。
このテーマは著者のなかに眠っているものではないでしょうか。
骨太な社会派の題材と女性との組み合わせ。
こんな作品を読んでみたい作家です。
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第1回「城山三郎経済小説大賞」受賞作。
2009年3月5日 第一刷発行
ロロ・ジョングランというタイトルに魅かれて読む。
ロロ・ジョングランは、プランバナン寺院遺跡の伝承の細身の王女の名まえ。
ガチガチの経済小説ではない。
東ティモールで殉死したいとこの「稔ちゃん」をいつまでもあがめている雑誌記者菜々美の、ロマンス、インドネシア、ODA、リベンジ、ミステリーを行ったり来たり。ぐぐっとひきこまれる。インドネシアのコーヒーもいい味を出している。
菜々美はやがて「稔ちゃん」の死の真相を知る。ところどころで性格が変わるがより「男性的」な菜々美を創りたかったのだろうか。クライマックスで少女時代の英雄が、白馬に乗った王子さまよりどうしてそんなにだいじなの?と思えてしまい残念だったが、それもありだった。
受賞後、作者はブログに「経済小説の定義って何だろう」と書いている。
地道な国際協力の活動が、いずれ役立つ日が来ると信じている、とも書いている。
悲劇はあるが性善説な小説だった。
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これはもう最高の一冊!
城山三郎経済小説大賞を受賞した作品。城山作品のファンであった著者の作品が、その第一回目の受賞作に選ばれるという幸運も…。
国際開発コンサルタントとして活躍する著者が、ODAやボランティアの実態を少しでも理解して欲しいと、仕事の傍ら執筆した作品です。
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「ロロ・ジョングランの歌声」を読み終わった。
雑誌の編集者がインドネシアでの震災NPOの取材から
徐々に物語の回転が速くなっていく・・。
ODA問題、雑誌編集者の悩み、援助する側される側の論理など
経済的なトピックを交えながら、人間模様も同時並行で進んでいく。
これまでの経済小説とは少し趣の違う小説です。
私は、女性?作家らしい文体に感じました。
今まで読んできた経済小説はよくも悪くも男くさい(^^;。
その意味では新鮮だった。女性の方にお勧めかも。
ただやっぱり私は、問題を強引に解決していく
熱い・男くさい、できればハッピーエンドの経済小説のが好きだ(^^;)
ということで★4つです。
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091129 byMixiあしあとMikaさん
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第1回城山三郎経済小説大賞受賞作。「もっとも城山賞に相応しいロマンある作品」(佐高信氏)「一気に読ませる高いレベルのエンタテインメント」(高杉良氏)選考委員絶賛!!
単純な正義では語れない国際協力の光と影
城山三郎経済小説大賞を受賞した本作は、格差社会の濁流に揉まれながら生きる道を模索する人々を描き、国際協力のあり方を問いかけている。新聞記者だった従兄の殉死の謎を追う主人公・菜々美がインドネシアで経験する様々な出来事を通して、支援現場の空気を感じ、戦後補償から始まった日本型ODAの現状に触れる。女性記者の仕事と恋、ODAを巡る政治と経済。単純な正義では語れない国際協力の光と影の向こうに、貴方は何を見るだろうか。
東ティモールで殉死した従兄・稔の後を追い記者になった藤堂菜々美は、中部ジャワ地震の被災地取材の機会を得る。援助する側と取材する側の確執を知り、単純な正義では語れない国際協力の表と裏に葛藤する菜々美。更に、稔の死をめぐる疑惑までが浮上する…。女性記者の仕事と恋、ODAをめぐる政治と経済を描きながら、経済格差が存在する世界で個人はいかに生きるべきかを問う意欲作。第1回「城山三郎経済小説大賞」受賞作。
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自分にはあまり合わなかった。
道具立ては興味深かったけど、良くも悪くも二時間ドラマっぽいというか・・・。
あと、主人公から視点が切り替わって別の登場人物から見た事件の真相や心境が書き連ねられるところとか、小説というよりもプロット文みたいに見えてしまった。
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32歳の雑誌記者が、東ティモールで不慮の死を遂げる。従兄と同じ道を歩むことになった菜々美は、彼の死の真相を探るうちに、汚れたODAビジネスと独立運動の狭間で従兄が亡くなったことを知る。この作品の面白いところは、亡くなった従兄とその彼女、主人公の菜々美とその彼氏との関係が、一本の糸で繋がっているという設定の妙にあり、恋愛小説としても面白い作品だ。
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岩手県遠野で2年位前ボランティアをした時に出会い贈って頂いた一冊。国際関係学が一応の専攻だったわけだが、その在学中に読んでみたかった。「国際開発・国際協力」という大文字の概念が投げかける問題と、そこに今ここと同じように普遍的に在る人間の営みが絶妙に織り交ぜられ、リアリティの生々しさと、現実を生きていく脆さが語られる。より近づいた学問への導入として、思考し体感せねばと思わせる著。
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女性記者が、インドネシアでの従兄弟記者死亡事件の真相に迫っていく。そこには汚職が絡んでいて。。。
舞台はインドネシア。プランバナン遺跡のあるジョグジャカルタ付近や、東ティモールが主に登場する。
インドネシア住みとしてはとても面白く読める。以前に読んだ神鷲商人と関連する部分も多々あります。登場人物それぞれの人間関係もうまく絡んでいるように思います。