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紙の本
こんな書名をつけてはいけない!
2009/04/10 13:54
16人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野蛮人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あとがきにこうあります。M.J.アドラーとC.V.ドーレンの『本を読む本』を解説したあと、《ぼくが本書でおススメした多読術は、そういうものではない。うんと柔らかい。もっと認知関係的で、かなりパフォーマティブで、プロセス的で、きわめて編集的なのだ》(P203)。この文章の意味がわかった人は、本書を十分に楽しめるのかもしれません。ちなみに本書は「岩波新書」でもなく「中公新書」でもなく、まして「ちくま新書」でもない「ちくまプリマー新書」です。
引用箇所を読んで意味不明・脳ミソ停止・自己嫌悪のかた、本書に触れてはいけません。先に読むべき読書法の本が数多(あまた)あります。それでも本書に多読術を期待するあたな!多読術については(1)目次を先に3分間読め(前戯?)(2)理解できなくても、どんどん進め(3)マーキングしながら読め(4)本は二度読め(5)たくさん読めば速くなる、主にこれだけです(多読術なのか?)。
「千夜千冊」ファン・松岡正剛ファンなら、ありきたりな読書法しか書いてなくてもいいのでしょう。いな、あのセイゴウ先生もこんなシンプルなことしかやっていないのか!という発見はあるかもしれません。けれど、本書が読書法案内として内容が薄い理由が、「詳しくはISIS編集学校へ」(著者が校長をされている学校)ということなら、残念なことです。多くの先達の書物から、その怜悧(れいり)な頭脳で果実を味わいつくしてきたであろう人なのに、840円では教えてくれないのですか。
ちょっと愚痴りすぎですね、すいません。これもひとえにボクの頭が悪いのです、本書が悪いわけではありません。そもそも読書法メインの企画ではなかったのかもしれません。己の脳ミソの至らなさと、「えっ松岡正剛が、多読術の本!!」と興奮した時の淡い過去を惜しんでいるのです。そこにはめくるめく多読法や「セイゴウ式マーキング」の、そのマークの意味が解説してあるのでは、と期待したのです。
「多読術」という書名に、ない胸ふくらみすぎてしまったのです。本書はインタビュー形式ですが、秀才編集担当者には、真っ向からそして微細に、松岡正剛氏に多読術を聞く気がなかったのか(もっと突っ込んで聞いてよ)、あるいは、単に売れそうだと思って書名を付けたのか。思惑通りボクは買ってしまったのです。愚痴が止まらずごめんなさい。この秀才編集担当者のインタビューにはイライラします(秀才さんごめんなさい)。もしかしてペーパー見ながらインタビューしてる?松岡正剛氏の著作読んできてる?インタビューマニュアル読んできた?えっおしっこ行きたかったの?なぜもっとえぐって質問しないの?
つまり、ボクの愚痴の起因は、秀才編集担当者のインタビューの質の粗末さなのです。せっかくセイゴウ先生にインタビューできるのだから、秀才ではなくとも己の質問と相手の回答にくらいつく、知的誠実さのあるかたにお願いしたかった。
とは言うものの、松岡正剛ファンなら読まざるを得ないですよ、その豊潤な思考には触れられますし。読書法の本、という視点で読まなければいいのです。書名も「セイゴウ先生、本を語る」(陳腐でしたね)ぐらいなら愚痴も出なかったのに。ではボクの愚痴ではなく、グッときたぜおーポイントを少しだけ。
《いちばん厄介なのは、読書のプロセスは外からなかなか覗きにくいということなんです。マルセル・デュシャンは、「人が何を見ているかは見えるが、人が何を聞いているかは聞こえない」と言ったけれど、「人が何を読んでいるかはわかっても、人がどのように読んでいるかはわからない」といったところがあるんです。》(P8)セイゴウ先生がどのように読んでいるかをもっと知りたかった。
《蔵書家ってつねに収納に悩みますね。でも、これは最初は武田泰淳さんに、次に松本清張さんに聞いたことですが、本が溢れてきたからといって書庫を作ってしまうと、急に本を読まなくなるんだという。「読む」のじゃなくて「調べる」になるらしい。》(P11)蔵書家の人はグッときたかな……。
P85のセイゴウマーキングの具体例は必見!なぞがなぞをよぶ、そのマーキングの意味を教えてほしかった。
セイゴウ先生は、本はどんなふうに読んでもいいんだよっとおっしゃる。どんな読み方があるかというと、感読・耽読・惜読・愛読・敢読・氾読・食読・録読・味読・雑読・狭読・乱読・吟読・攻読・系読・引読・広読・精読・閑読・蛮読・散読・粗読・筋読・熟読・逆読・句読(くとう)・掩巻(えんかん)・慎独(しんどく)・音読・黙読・デジ読……。あなたはいくつ出来る?ボクは蛮読だけ。
最後にひと言。「あなたにとって、そもそも○○とは何ですか?」と質問する奴の感覚をボクは信用しない。こんなインタビュアーは、●●とおもって間違いない!たとえば、○○に「本」とか入れるヒト(仕事としてやっている人限定)。あなたにとって、そもそもインタビューとは何ですか?
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電子書籍
「多読」という単語の印象から…
2022/02/19 13:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルファ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ビジネス的な読書術」としての「多読」を紹介している本をイメージしていたので、良くも悪くも予想外の内容だった一冊です。
「千夜千冊」という著者の松岡氏が運営する本のレビュー的なことをやっているサイトに関するお話や、彼が実際に読まれた多数の本から得たものについてのお話を交えながら、実践的な「多読術」の方法の説明を進めていくという流れになっています。
両者の内容が結構複雑に絡んでいるので、私にとってはさらさらと読める本ではありませんでしたが、その分興味深い記述もありました。
特に、「人が『黙読』できるようになったのはおそらく14世紀~16世紀で、それまでは、『本を読む』というと全て音読だった」、そして「それが無意識の領域を広げている」という話が印象に残りました。
一方で、「多読」、そして「無意識の領域」とはいっても、決して「速読」にこだわることは勧められていないというのが、他ではあまり見ない松岡氏独自の意見だと思います。