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相変わらずベッキーさんは素敵だ。
最終章「鷺と雪」はなんだかもうひたすらせつない。
英子お嬢様のことを考えるともうね、やるせないね。
時代的に暗くなっていってしまうのはしょうがないけど、これで終わりなの?
「別宮には何もできないのでございます」っていうひと言が色々含みすぎてて重いです。
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北村薫さんの作品は初めて読みました。
「街の灯」「玻璃の天」に続くベッキーさんシリーズ3部作の完結編です。
この作品集で北村薫さんは直木賞受賞です。
北村薫さんは1949年生まれですから、今年60歳です。
元高校教員です。
「週刊ブックレビュー」に出演されていましたが、物腰の柔らかさに好感が持てました。
ベッキーさんはお抱え運転手です。
当時の日本では珍しい女性ドライバーです。
主人公の女学生の花村英子を送り迎えします。
ベッキーさんは難題を解決します。
英子は「ベッキーさんが文殊菩薩に見える」と言います。
「不在の父」「獅子と地下鉄」「鷺と雪」の3編が収められていますが、ミステリー的な要素よりも昭和初期の空気を伝える作品になっています。
華族の名門の娘の生活ぶりを読みとることができます。
北原白秋、柳田国男、金田一京助、山村暮鳥、野上豊一郎、川端康成、長谷川如是閑、芥川龍之介といった人たちが同時代人として登場します。
野上豊一朗は妻の弥生子とともに夏目漱石の弟子です。
野上弥生子は大分県臼杵市の出身で、臼杵に記念館があります。
昭和初期に、アメリカではママがパパを裁判所に訴え、別れても生活の面倒を見てもらえる、日本では夫に非があるのに実家に逃げ帰った妻が夫に訴えられたりしていました。
どの国に生まれるかで、弱い立場の者の生き方には大きな差があります。
男女が手をつないで尊敬し合う、優しくし合う、良い国になって欲しいと言っています。
70年後の今日はどうでしょうか。
昭和初期の試験地獄についても出てきます。
このころの日本の子どもの多くは小学校卒業で働いていました。
受験することすらできませんでした。
しかし、一部の中学入試は過熱していました。
卒業を前にした英子は11月に修学旅行に出かけます。
東京駅から列車に乗って、1週間の旅です。
二見浦、伊勢神宮、興福寺、春日大社、東大寺、清水寺、天橋立などを回ります。
70年前の上流階級の女学生の旅ですが、このスピードは、いまの青春18きっぷの旅とあまり変わらないような気がします。
「鷺と雪」は「街の灯」「玻璃の天」に続けて読むのがよいとされていますが、これだけでも味わいがありました。「街の灯」「玻璃の天」も読みたいと思います。
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令嬢の花村英子と才色兼備の女性運転手ベッキーさんこと別宮みつ子さんコンビが活躍するシリーズ3部作の完結編だそうですが、「直木賞」受賞作品ということで、この作品を手にとってしまった私は、この完結編を先に読んでしまいました…Σ( ̄ロ ̄lll)
しかし、短編で成り立っているので、最初の2作品を読んでいなくとも十分楽しむことができました♪
ただの、謎解き本ではなく、その背景に昭和初期の日本を盛り込みながら、それぞれの登場人物が上手くその時代背景に溶け込んで生きているので、「さすがだなぁ〜」って感嘆しちゃいました。
1部と2部の作品も、是非手にとって読んでみたいって思います!!お勧めです(≧▽≦)
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直木賞受賞作品。北村薫はいつか読もうと思って機会がなかった。
たぶんこれが目の前になかったら、いつかは訪れなかったんじゃないかと思う。
シリーズのうちの1つということで、先に他のものを読んでおけばよかったといささか後悔した。
昭和初期、最後は2/26で終わる。日常に潜む謎解きを解く――と言っていいのだろうか、そんなストーリーを追っていくと、偶然を嫌いそうな物語なのに、最後にとてつもない「偶然」が訪れる。そして最後はあの2・26をほのめかす、という。
直前に読んだのが「ノルウェイの森」だったので、どうしても上流階級の人間描写に馴染みづらかった。
けれども村上と似たような空気がある。彼が好んで洋書のタイトルを出すように、北村はどちらかというと邦書を出す。そこが面白い。
一人称、だけれども女性の視点で進む。しかもお嬢様、という。昭和の異色な雰囲気だが、わたしたちをすっと引きこむ文体がとてもうまい、と思った。
というか、読めば読むほど自分の無知さを思い知らされる。直木賞と思って手軽に読むには、もしかしたらすこし重いかもしれない。
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ベッキーさんシリーズ3作品。
2.26事件で幕を閉じる。
ベッキーさんの話はあまり多くはないけれど、最後がとても切ない。
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花村英子さんとベッキーさんシリーズ。第三作。完結。
「不在の父」「獅子と地下鉄」「鷺と雪」収録。
直木賞受賞作品。
まさか若月さんが。
最後の2ページで あんなに泣かされるとは思ってもみませんでした。
私も若月さんの人柄が大好きだったので、
彼がどのように巻き込まれていったのか、
その後の英子さんの気持ちを思うと、暗澹とした気分になります。
「願えば必ず叶う」「この世ではなんでもおこ何でも起こるるものだ」
でも世の中は、一人ひとりの思いではどうにもならず、動いて行く。
今回も北村さんならではの
たくさんの いい言葉 が詰まった作品でした。
全体の雰囲気はほっこりとしたものなのに、
その中に、切なさとか、やりきれない悲しさみたいな
ピリッと刺のようなものが入るのが、北村さんの魅力だと思うんですが、
最近の作品は、その刺がより ぐさっ と刺さります。
それにしても、歴史や文学の知識に圧倒されます。
私ももう少し勉強しよう、と改めて思いました。
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これ第三作目だったんですね。知りませんでした。
最後のシーンは「ああ……!」とうなりそう。
前シリーズ読んでた方が最後のシーンは納得行くんですかね、これだけ単品で読めなくも無いけど「え!?」と若干驚く。
やっぱり北村薫好きだなあ。ゆっくり染み込む感じの優しい文体が。
あとベッキーさん格好よいです
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これまでのシリーズの様々な要素が収束した巻。ベッキーさんと英子の関係がメインと思いきや、やっぱり主役は英子だったと思わされた。
一巻から少しずつ描かれていた、上流階級と下層階級の差・段々と戦争に向かっていく世界が色々とキツい。
「不在の父」が好きだけど、「鷺と雪」の最後の一行の衝撃はかなり大きかったなあ。
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埼玉県春日部高校の国語の先生・・・ミステリ作家・・・短編かと思って受賞作を読んだらシリーズ物だった~滝沢家で子爵を7歳の子が襲爵したが浅草で父子爵を見たという。室町の和菓子屋の小学生が夜9時に上野で補導され,日記には浅草・上野・ライオンとメモがあった。書店で顔を合わす軍人に詩集を貰い,服部時計店に電話をした積もりで,出た相手は偶然にもその軍人で,掛けた先は総理大臣官舎~これはシリーズらしくて,昭和初期の両家のお嬢さんがあちらこちらに興味を感じて,それを運転手のベッキーさん(別宮)が謎解きをするというもので,最後は226事件。最近この人の本を読んだが何だったろう。芥川賞か直木賞かを貰ったのだけど,どちらだか判断できず,インターネットで調べたら直木賞だった。まあ推理モノだからね
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鷺と雪は、北村 薫さんの直木賞受賞作です。主人公『英子』と女性運転手「別宮みつ子」こと、ベッキーさんとともに、様々な事件や、身近な謎を、解き明かすシリーズ第3作目です。
名門の子爵がルンペンになった。その噂を聞いた、『英子』は、ベッキ―さんを連れて真相を探す、彼は本当にルンペンになったのか?本当になったのなら何故?という話と、知り合いの子供が、真夜中美術館の近くで補導された!なぜ?その子はそんな時間に外に行ったのか?その謎を解く話や、友達の婚約者が、日本にいるはずがないのに写真に写っていた、それは、ドッペルゲンガーなのかその真実は?こんな話が三作入っています。
この作品は、最後がとても切ないです。昭和十一年二月こんなにも悲しい終わり方は初めてでした。
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3部作の3作目。思わず1作目から読み直してしまった。通して読んでみると、主人公の成長具合がしみじみと。ラストがため息しかでない。
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三部作と言わずにぜひ続編を書いて欲しい。
そう思わせる終わり方だった。
二・二六事件のことを思わず調べたりもした。
ともかく、取材料の多い作品だと言うことに感服。
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帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー…。良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ―。
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これ3部作だったんですね。知らずに読み始めました。前の作品を呼んでからもう一度読み始めようと思います。
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透明な哀しさがひたひたと心に染み入る物語。
思えば第一作から心浮き立つような楽しい場面と重なり合わすように重苦しい現実が押し寄せていた。
きっとこうなるしかないという予感はあったけれど、
どうしようもないとも思うけれども、
ラストシーンは美しくて切なくて心が震えました。
ベッキーさんの搾り出すような祈りの声が
見えすぎる現実にそれでも進まなければならなかった桐原中将の苦々しい声が
若月さんの優しい声が真っ白な雪に吸い込まれて幕が下りていったんですね。
英子さんはきっと戦後も『虚栄の市』の女主人公のようにたくましく、まっすぐに前を見据えて生きていったいと信じたい。
そう――I will be good.の言葉が似合う女性として。
今も残る銀座のパーラーや書店に思いがけない歴史が刻まれていることに圧倒され、三越前、室町、上野、麹町、普段ご縁のある土地土地にいとおしさを覚えつつ本を閉じました。