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アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ みんなのレビュー
- ジョー・マーチャント (著), 木村 博江 (訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:文藝春秋
- 発売日:2009/05/15
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紙の本
とんでも本だと思ったら、真面目な本です。でも、こんな物体が実在していたなんて、それだけでも凄い。それに真面目に取り組む人間と、復元された模型の数・・・
2009/09/29 19:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
てっきり早川の本だと思っていたんですね、タイトルとブックデザイン。基本的に、文藝春秋っていう会社はトンデモ本を出す会社じゃあないわけです。だから、てっきりハヤカワだと。ちなみに、本文デザイン・日本語版オリジナルイラスト 増田寛、目次デザイン・装幀 関口聖司、本文図版 UK版イラスト ML Design,London となっています。
それとこのタイトル、本を読み終えた人は思うはずです、間違っているんじゃないか、って。だって「アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」ですよ。でも、何が「コンピュータ」ですか? ま、結論は読んでもらうにしても、これって違うでしょう。マーチャントの考えるコンピュータって何だ? です。
ちなみに原書名は DECODING THE HEAVENS:SOLVING THE MYSTERY OF THE WORLD’S FIRST COMPUTER となっていて、決して文藝春秋の勇み足ではありません。でもね、担当者に鞭打ち10回くらい刑にあたるくらいの罪ではあるとは思いますよ。これがコンピュータなら飛鳥の酒船石だっていいんじゃないか、って。これだから困るんです、西洋の人間の、自分たちが古代から世界を率いていたみたいな妄想狂的発想が。
実はこの話の中にもそういう男たちがたくさん出てきます。特に後半。自分の思い込みを、能力を過信し、他人の業績をけなし、手柄を奪われたと思い込み、周囲から浮き上がる男たちが。科学、ま、このトンデモ系の仕事を科学と呼ぶべきか否かはともかく、関係者たちの功を競う姿はまさに浅ましい。
それとは異なりますが、この本の中に、アンティキテラについて、かのデニケンが『未来の記憶』の中で触れた、それがアンティキラに対するプライスのまじめな論文の足を引っ張ったとあります。
*
おかげでアンティキラの機械はすっかり謎の下手物扱いになり、まともな歴史学者にまじめにとりあげられなくなった。プライスが論文を発表したあとも、機械は表に出すにはぐあいの悪い継子として、お座なりに名前が挙げられる程度だった。
*
たしかに、デニケンが触れたというのは大きなマイナスでしょう。この本だって宣伝文句に「デニケン」と入れたら、それだけで科学ノンフィクションから「ノン」を取らなければならなくなりますし、デニケンと書いてあったら、私は絶対に手を出さなかった。そういう評価なんです、デニケンくんは。
繰り返しますが、私は「コンピュータ」という言葉に期待しました。だから、結論を読んでズッコケたんです。それ以外の部分はそれなりに面白かった。特に機械を再現する部分。再現されたのは一つかと思っていたら、色々な人間が似ているけれど微妙に異なるものを作り上げています。
数学的なものと機械的なものとの証明の違いでしょう、数学のフェルマーの定理とは様子が異なり、こちらは誰もが参加できる雰囲気があります。逆に言えば、それだけ胡散臭い人間も登場します。ただし、誰が真理に真っ先に到達するか、という点で参加者が競うところは少しも変わるところがありません。その人間ドラマを楽しんだほうがいいかもしれません。
それにしても美術館、博物館はものを集めはしてもそれをきちんと評価し整理整頓するのは、本当に苦手なんだなあと思います。折角のお宝をそれと気づかず朽ちさせていく。構成要素がバラバラに保管されていても気にしない。そのおかげで真実の手がかりは失われ、埋没していく。まして、用途不明のものの扱われ方の酷さ。
そうやって歴史が変質していくんだなあ、と感慨深い読み物でした。
以下、データ的なこと。帯の言葉は、
発見された2000年前の沈没船
引き揚げられた奇妙な謎の機械
誰が何のために創ったのか?
カバー折り返しの言葉は、
その機械の内部には、複雑な歯車の構造があった。
歯車による入力と出力の自在な変換は、
中世の時計の発明を待たねばならぬはずだった。
それが蒸気機関と結びついた時、「産業革命」が興り、
数字と結びついた時、コンピュータは生まれた。
二〇〇〇年前のギリシア人がつくりあげた
その機械――アンティキテラ。
いったい誰が何のために創った機械だったのか?
大興奮必至の科学ノンフィクション。
です。目次は以下の通り。
はじめに
1 海底より現れしもの
一九〇一年、ギリシア。小さな島の沖合いから古代の難破船がみつかった。貴重な彫像や壺mその奥から奇怪な機械が姿を現す。
2 ありえない
古代の歯車の発見は空前であり、絶後であった。なにしろ既知のものより千年以上遡るのだ。研究者は興奮するも、戦争がはじまり忘れられた。
3 「戦利品」
栄耀を誇った古代ギリシアも、紀元前一世紀頃には新興ローマの略奪にさらされた。多くの至宝は各地で船に積みこまれローマの都へと運ばれた。
4 科学史は塗りかえられた
発見から半世紀。イギリスの若い野心的な学者が再び光を浴びせかける。この古代の破片には、現代テクノロジーに通じる鍵があるのだと――。
5 大胆な推理
七〇年代、内部を放射線で撮影する技術が生まれた。その技術によって八層もの未知の歯車が浮かび上がる。古代人はこの機械で何を計算しようとしていたのか?
6 十九世紀のコンピュータがふたりを結びつけた
破片に魅せられ、ひとり研究を続けていた博物館員。彼のもとにオーストラリアから研究者がやってくる。はじめは意気投合するふたりだったが・・・・・・。
7 すべては解読の名誉のために
二〇〇二年、オーストラリアの研究者は死に、アンティキラの研究はあらたな局面をむかえる。博物館員の前に、より強力なライバルが現れたのだ。
8 最強の布陣
映像プロデューサーは、腕の良い仲間を集めていた。研究者、最先端のCT撮影、そして最新のCG技術。タッグを組んで、アンティキラに挑みかかる。
9 みごとな設計
もはや肉眼では読めぬ文字を解読、歯車を復元すると、アンティキラの全貌が次第に浮かび上がってきた。これは古代地中海文明の天文学の結晶だった。
10 アルキメデスの影
紀元前三世紀、シラクサのアルキメデスが天体をあらわす道具を作ったとキケロは伝える。古代の賢人から現代へのミステリアスな道程。
エピローグ
謝辞
訳者あとがき