紙の本
どこか、でない現実世界の物語
2011/01/29 13:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Azuma - この投稿者のレビュー一覧を見る
これ、全然「おまけ」なんかじゃない!
と、本書を読み始めてすぐ思いました。
と、いうのも自分にとって本書は『図書館内乱』とリンクした作品であるという認識しかなかったのです。
『図書館内乱』を読んでから時が経ち、たまたま書店で見かけて購入した本書を読み進めると、その認識が変わりました。
これは、二人の男女の恋物語です。
物語の始まりはネットで、出会いのきっかけは一冊のライトノベル。
メールによって繋がった二人が、互いに惹かれあっていく様が書かれています。
ここでミソとなるのが、この物語のヒロインが聴覚障害者である、ということです。
そしてこのヒロインが、決して「キレイな」面ばかりを持っているのではない、現実味のあるリアルな人物であったことが個人的には良いな、と思えました。
障害のことで卑屈になったりすることもある、リアルな、等身大のヒロインなのです。
主人公とヒロインは障害のことでも多くぶつかりあいます。
これが普通だと思うんですよね。
互いに、互いの状況を真に理解し合えることはないのですから。
この小説には、こういった「普通」がきちんと書かれていました。
それでいて、そのぶつかりあいを乗り越えて、近づきあう二人がとても愛おしく思えます。
読みやすいテンポの、主人公とヒロインの(メールやチャットも含めた)会話。
聴覚に障害を持つからこその、ヒロインの丁寧な言葉の選び方には、主人公でなくとも惹き付けられるものがあるでしょう。
少なくとも自分は惹き付けられてしまいました。
軽快に読み進めることができ、そしてそっと微笑みながら読み終わることのできる、そんな本です。
紙の本
実際の世界とネットの世界と難しい恋愛の最高の結果を味わえました
2009/09/23 12:33
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山茶 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁぁよかった。
メール交換から始まるという文句に、
むむむ、チープな感じがする。
と思っていたのですが、
じぇんじぇんそんなこともなかった。
主人公である伸のメールを通して伝わってくる気持ちに、
共感したり、それは違うやろと思ったり、
それは思ってても言ったらいけないでしょと感じたり。
女性側の主人公であるひとみの行動に、
腹が立ったり、素直でないところにむかついたり、
でもステキだと感じたり。
二人のメールのやり取りのステキさ、
二人の実際に会ったときのステキさ、
その二人のやり取りのうまくかみ合わない所、
かみ合いたいけどかみ合わないところ、
その辺が読んでいて伝わりました。
「忘れられない本」に対して
二人が読んでから10年たっているのに語れるところ
気持ちを共有できるところ、
うらやましいと思った。
確かに、高校時代読んだ本を今読むと
理解できる本ってあると思う。
僕は毎年のように、夏目漱石「こころ」を読んでます。
毎年感じることが少し変わっていきます。
そんな本に対する意見、気持ちのメール交換は
やっぱりうらやましいな。
で、相手に対して勝手な妄想が膨らんで、
実際会ってみると妄想と違っていて、
それが理解できずに伸はイライラする。
僕も読んでいてイライラしてました。
メールの性格と現実の性格は違うとは思うけど、
そこまで違うとなんか裏切られた感が強くなり
イライラするよ。
って読んでいたら。。。。
あぁ騙された。有川浩に騙された。
そういうことなのね。
思い返すと納得できます。
そりゃあ髪の毛ロングだよな。
静かなところがいいわな。
声のトーン聞くわな。
字幕映画しかみたくないわな。
エレベータのブザー聞こえないわな。
そして僕も伸と同じく全てを理解した後に
後悔しました。へこみました。
イライラした事に後悔しました。
僕ならそこで終了してしまうんだろうな。
でも伸はそこから一歩進んでメールする。
そして糸を繋げる。
仲直りのためにケンカする。
なかなか意表ついた発言に、
僕もひとみと同様感心しました。
二人がかみ合わず、
でも意見をぶつけることで、
上手くいくことになる。
ステキな強固なカップルになったので、
嬉しかったです。
まんまと有川浩マジックにはまりました。
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「聞く」と「聴く」の違いって分からないでしょう?
「聞く」っていうのは、耳から入ってきた音や言葉漠然と聞いている状態で、健聴者はみんなこれができるんです。意識しないでも何となく会話が出来るんです。
「聴く」っていうのは、全身全霊傾けて、しっかりと相手の話を聴くことで、私にはこれしかできないんです。
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物凄くココロに響いた内容です。
若手の教育に使おうかなとおもっちゃいました。
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本の帯に「会ったこともないキミに恋をした。メールから始まる二人の物語。」と書いてありました。
気になって、手に取り少し立ち読みしていたはずなのに、そのまま購入していました。
とても読みやすくて作品の世界にぐっと入りやすかったというのが感想です。
私の想像していたラブストーリーとは異なっていましたが、こんな展開も好きです。
むしろ好きかもしれません(笑)
余裕がないと結局自分の都合を優先してしまうことって私自身もよくあります。
この本に出会えたことを契機に自分の考え方や言動にもう一度目を向けようと感じました。
本の内容について、ここで書くと完全にネタばれになってしまうのでここで書けないことが残念。
私もこの本に出てくるひとみと伸のように感想をぶつけ合ってみたいもんです(^ω^)
そういえば一点だけ気になることが。
最後の一文「…だった。」で終わるんだけど、過去形なのは何でなんですか?
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きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。共通の趣味を持つ二人が接近するのに、それほど時間はかからなかった。まして、ネット内時間は流れが速い。僕は、あっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、彼女はどうしても会えないと言う。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった――――。
(裏表紙紹介文より)
***
有川作品が文庫化したというだけで内容を知らずに買ったので、目次見てこれはどんな話なんだ…?と思いましたが、良かったです。
理想がつまっているような、ご都合主義ともいわれてしまうかもしれない感じで話は進んでいきますが、考えさせられることがたくさん書いてありました。
他人は自分ではないのだから、相手にどんな事情があって、どんな生き方をしてきたのか想像して、お互いに気遣いをして付き合っていかなきゃいけないんですよね。
当たり前のことだけど、結構難しかったりするんだなぁ。
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中途難聴の女性と健聴者の男性の恋愛物語。お互いぶつかって、傷ついて、前に進んでいく二人に感情移入して読んでしまいました。
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サクサク読めた。
ネットから始まる恋(笑)とか好きじゃないけれど小牧とまりえちゃんの為に読んだよ。
2009.7.1 初版/2009.6.29 購入/読了
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自衛隊も謎の生き物も未来設定も何もない、超直球ど真ん中青春恋愛小説。但しネット恋愛かつ某事情のため、メールのやりとりが殆ど主な内容。誠実に下心を持って接する男の方も、相手の気持ちを逆手にとって振り回そうとする女の方もやけにリアルでいたたまれないくらい甘酸っぱいヨー…まあ一生に一度くらい、若いときにはこういうことがあっても良いネ☆的恋愛。そして某事情の方はシビアな現実として懇切丁寧に描かれてます。
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会ったこともない君に恋をした。
メールから始まる二人の物語。
以前単行本で読んだのですが、文庫本になったので改めて読み直しました。
聴覚障害者には種類があること、コミュニケーションにも障害が出てくること。
誤解をされやすいこと。など初めて知ることが多く勉強になりました。
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ほうほう、これは「図書館」シリーズから生まれた本なのですな。
私はあれ、「図書館戦争」しか読んでないから、知らなかったです。
この2人が知り合うきっかけは、いいなあと思いました。
今だったらあるでしょうね、ネットで知り合って…っていうの。
しかもこの2人は、思い入れのある本が一緒で、その感想メールを送りあって…なんていう、(ワタシ的には)理想の出会い方。
いいなぁ、私も、本好きな人と知り合ってみたかった。
ただ、伸の性格がどうもよく理解できず。
本も読むけどスポーツも出来て(だっけ?)、でもそこそこ女の子にもモテて……。
不幸にも、私の周りにそういう男子がいなかったから「こんな子、いるかしら?」とリアリティがわかなかった。
青春菌だからしょうがないけど、やっぱりくさいし。
だけど、難しい問題ではあるけど、障害のある人とない人との考え方の違いというかすれ違いは、すごくよくわかるものだった。
確かに、「あなたは障害がないから、私の気持ちなんてわからない」と言われてしまうと、ハイ、それまでよなんだよなぁ。
「そんなことないよ、わかるよ」って絶対言えないもの、経験してないから。
難しいんだよなぁ……。
なんて思いながら読んでました。
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メールから始まる恋愛小説。
が、ただの恋愛小説じゃない。
聴覚障害の女性との健聴者の男性との恋愛小説。
聴覚障害にも色々種類があることを知りました。
さらにコミュニケーション問題もあるということも・・・
なんだか考えさせられる小説でした。
でも、やっぱり有川さんの作品です。
有川さんの小説の恋愛良いです!
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「空の中」や「海の底」を読んで「図書館戦争」が早く文庫にならないかなぁと思っているのだけれど、筆者あとがきによるとこのシリーズの文庫化の目処はまだのようで、「図書館内乱」の表紙に載っていたこの本だけが先に文庫になって登場ってことみたい。
「図書館内乱」の中で小牧が毬江に薦めるのがこの本で、その物語の中でも結構重要な役回りを引き受けているのだけれど、健常者と聴覚障害者の恋という難しいシチュエーションを扱って、ど真ん中の直球一本やりの恋愛小説でしたね。
冒頭の“青春菌”撒き散らしのメールのやり取りなどこちらが気恥ずかしくなる程の率直さで、まあ、若いっていいねぇ〜、ってところなんだけど、もうこの歳になるとそんな思いさえ通り過ぎるところもあったりして…。
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私はまだ読んだことがないが、この本は「図書館戦争」シリーズのスピンオフなのだそうだ。扱っているテーマが「聴覚障害」であり、恋愛モノにしては非常に現実感のある本だ。インターネットの世界がバリアフリーであること、手話を使える、使えない、ということで違いがあること、自分を守るための物言い、など、きれいごとではない、事実が登場人物をよりリアルな存在にさせている。なにより、ふたりが相手の気持ちを勘ぐりながら、自己主張し、一生懸命に相手のことを考えていることに、第三者として妙に心が動かされた。ああ、これこそ恋なのかも。(それに、「若さ」も感じた。←これは、カッコでくくりたい。苦笑。)作者のことばの使い方がいい。ふたりのメール、会話が心地よい。
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文庫化を待ち望んでいました。
メールのやり取りの箇所は実際に光景が目に浮かぶようで、あっという間に読み終わりました。
忘れられない本を通じてのやり取りが、とても羨ましくなりました。
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あー、いい恋愛小説だ。
かわいいけど中身の薄っぺらい女の子より、面倒くさいけど中身のある子の方がいいや。
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『レインツリーの国』(有川浩、2009年、新潮文庫)
ネットから始まった恋。自分の殻に閉じこもったままで、彼を含めた「普通の人」に心を開けない彼女。彼女に惹かれつつも、彼女とうまく噛み合わない彼。
誰でも他人には言えないつらいことがあるものです。本作はそんな背景を持った二人の恋の物語。
(2009年7月16日)