紙の本
家族の変わらぬ時と変わりゆく時を描いて見事な「夜をゆく飛行機」。
2011/06/29 13:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年の作品で文庫化もされている小説だが良い評判を聞いたので
読んでみた。明るいトーンの家族小説というスタイルにまず惹かれる。
物語は受験を控えた高校生里々子の一人称で語られている。明るいと書
いたが、この小説、明るさと共に深さとせつなさも併せ持っている。
1999年の東京、谷島酒店は嫁いだ有子を含め、寿子、素子、里々子
の四姉妹と父母のにぎやかな一家。里々子にはさらに心の友として生ま
れて来なかった末の弟「ぴょん吉」がいる。そんな谷島家に次々と事件
が起こる。寿子が家族をモデルにした小説で新人賞を受賞する。それを
読んだ有子が激怒しなぜか家に戻って来る。父の妹ミハルが急死する。
父母は生活を脅かすスーパーの出現に戦々恐々とし、素子は店のエノテ
カ(おしゃれなワインショップ)化なんてことを画策する。変わらない
と思っていた暮らしが思いがけなく変わっていく。寿子の小説の中で一
家は「永遠のくり返し」のような、まるで「サザエさん」みたいな日常
を生きていた。姉妹がそれを読んだことが変化のきっかけになったのは
確かだが、そうでなくても家族というのは自然に変わっていくものなの
かもしれない。そんな変化にいらだち、取り残されたように感じていた
里々子自身もいつの間にか恋をして変わっていく。小説の中で語られた
その場所は、家族にとってほんのひと時の夢のような場所だったのだろ
うか。この小説は家族の「変わらぬ時」と「変わりゆく時」を描いて見
事な物語になった。
紙の本
角田光代氏が描く、変わらぬようで変わりゆく家族の姿を描いた長編小説です!
2020/10/03 15:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『幸福な遊戯』(海燕新人文学賞)、『まどろむ夜のUFO』(野間文芸新人賞)、『ぼくはきみのおにいさん』(坪田譲治文学賞)、『空中庭園』(婦人公論文芸賞)、『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)などの数々の名作を発表されてきた角田光代氏の作品です。同書は、谷島酒店の四女里々子には三人の姉がおり、長女の有子は嫁いで家を出たのですが、次女寿子と三女素子と両親の五人暮らしをしています。しかし、里々子には実はもう一人「ぴょん吉」と名付けた弟がいたのです。うとましいけれど憎めない、変わらぬようで変わりゆく家族の日々を温かに描いた、にぎやかで切ない長篇小説です。ぜひ、多くの方々に読んでいただきたい作品です。
紙の本
ぴょん吉はどこへ...?
2014/06/29 09:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BACO - この投稿者のレビュー一覧を見る
四姉妹の末っ子の視点から家族を写した物語。
どこにでもありそうな出来事をいっぺんに凝縮した感じではあったが、無理な詰め合わせという感じはなかった。
諸々のその後の結末までは書かれていない為、もしかしたらスッキリ感を感じない方もいるかもしれない。
ただ、しつこさを感じないのでそれで終わって方がスマートな気もした。
序盤は「ぴょん吉」という架空の弟と会話をしていたが、いつの間にかいなくなってしまったのはちょっと寂しかった。
投稿元:
レビューを見る
このひとっぽい感じでいい。
大磯のロングビーチに行った思い出のシーンがあって、地元民としてはうけた。んが、駅前にファミレスはありませんぜ。
投稿元:
レビューを見る
嫌いじゃないけど…うーん??
読みながら江國さんの『流しの下の骨』を思い出した。全然違うけど。
私はあっちの方がすきだなぁ・・・
投稿元:
レビューを見る
酒屋の四人姉妹の話。
恋をすると賢くも強くもなくなるのです。
たくさん人が死ぬ。
あ、たくさんではないか。
いやな死に方ではなかった。
あんまり悲しみを誘わなかった。
投稿元:
レビューを見る
実は角田光代はずっと前からやってることは同じだと思う。それでも、たぶんタイミングにもよるんだけど、胸の中に入ってくるものはある。この人はやっぱり、どこか壊れつつある家族を書くのがうまいです。それが修復していくのか、そのままなんとなく続いていくのか、壊れてしまうのかは作品によるのだけど。
誰よりも一番ひどいと思う有子に感情移入してしまった自分は、やっぱりひどい人間なのかもしれない。そしてファジー感覚を持ち合わせてる玲二さんかっこいい。いやほんとに。
投稿元:
レビューを見る
読んでいてなんだか心がうずうずしました。読み終えた後も、不思議な余韻が残りました。
10代の複雑な心境や考え方が、すごく丁寧に書かれています。なんでこんなに細かく心理描写できるんだろう。さすが角田さんです。
主人公の葛藤や悩みが、とても鮮やかに描かれた作品です。
投稿元:
レビューを見る
商店街の小さな酒店谷島一家のにぎやかで、切ない物語。
・・・と帯に書いてありました・・・
家族小説にありそうな特別大きな事件があったりするわけではないけど
4姉妹と祖母と両親の7人家族の物語を末っ子の『りりこ』が語っていくというもの。
兄弟がいない私にとっては
『兄弟ってこんなもんなのかな〜?』と想像させられるような
どこにでもいそうな家族。
なんだけど、なんか話しに引き込まれると言うか
とにかくおもしろかった
投稿元:
レビューを見る
有子さんが好きです。
いかにも姉妹の長女って感じがしたな、私には。
ちっちゃな盛り上がりをなんとか頼りに最後までなんとか読める系のほんわりした話。映画ノベライズ風の印象を受けた・・・
投稿元:
レビューを見る
おとつい?読み終わった。
なーんかついつい読んじゃって、一日で読んじゃいました。
でも、うーん?
あんまり好きな話では…ないかなあ。
ただただ、切なくなりました、読んでて。
不変なものなんてこの世にはないし、そんなこと分かっているのだけど、時々無性に時を止めてしまいたいと思った高校生の自分を思い出しました、読んでて。
それが他人の目にどう映ろうと、本人ほど深刻で楽天的なことはないのかも。
なるようになる!!という感じがすごく伝わってきた、ような気がする。
投稿元:
レビューを見る
イメージの描写が多すぎるのが難だが、徐々に面白く。
いいたいこともよく分かるし。
それと、バントライン!サボテンマークのレポート用紙。
投稿元:
レビューを見る
読むの少しじかんかかった
感情移入しにくい作品
江國香織の流しの下の骨や吉本ばななのアムリタとかもそうだけど
いろんなひとがいていろんな家族が居る
自分の家族の話をノンフィクションで描きそれを大きな賞に受賞されるということは家族を傷つけ、あるいは家族の秘密をさらけ出すことになる
わたしは小説はだいたいがノンフィクションに近いものがあると思う
自分自身体験しないと書けないことたくさんあると想うから
わたしの家族も変だし、どこの家族も変で当たり前のように秘密はあるんだなと思った
投稿元:
レビューを見る
谷島酒店の4姉妹のお話。姉妹っていないからどんなものなのだろうと思うけど、こんな感じなのかな。いなくなったり、家族のこと暴露して得意になったり、洋服や旅行やステータスみたいなものばかり気にしてたり、女って勝手なんだよな~って思いながら読んでた。唯一、救いだった長女と語り手の末っ子、リリ子もゆるやかに落ちていく感じがしてどこへ行くのだろうって感じで終わってしまう。
なんだか、幸田文のきものを思い出す。
投稿元:
レビューを見る
「飲み屋で誰かと飲んでいて、なんだか最後の方はお互いの身の上話とかになっちゃったりする。別に何を自慢するつもりはない。自分を知ってもらいたい一心で話してると、途中から自慢話をしないといけないんじゃないだろうかという強迫観念がすんごい勢いで追いかけてくる。そういうとき、自分って小っさいなーと思って、酔っ払ったふりで逃げちゃったりするんだよなー。」
そんな感じの家族群像劇。20代からの角田光代。