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40代半ば、3人の子(末っ子はまだ7歳)を持つ父である呼吸器内科医が癌(印環細胞癌)を宣告され、永眠するまでの2年7ヶ月におよぶ手記。再発後、板橋氏は自らの日記を振り返り、思いや感想を書き加えた。さらに彼の没後、支えつづけた医師たちが、闘病記を読み解き、思いや苦悩を追記した本。
進行癌で予後が悪い、子どもが小さいとなると癌と闘わざるを得ない。闘って己の命数を延ばす、なんてことではなく、闘って少しでも存命し、その間に収入を得て家族にそれを遺す、それだけの目的のために闘う。それが一家の大黒柱としての責任感か・・・。
遺書を書き、保険や遺せるもの、家族に思いを馳せ・・・癌と闘う決意を固めた板橋氏。高校サッカー部の先輩が執刀医となっての胃亜全摘手術。化学療法。体重の減少。そして再発。。
病を得、副作用に苦しみながらも診療を続け、講演を数多くこなし、サッカーを楽しみ、変わらぬ日常を続けようとする彼を癌が追い詰めていく。。
食べ物を受け付けず痩せ細る彼を心配し、仕事量を減らし身体を休めるよう進言し、酒席の誘いなども遠慮する周囲と、それらを取り上げられることに寂しさや疎外感を感じる板橋氏。
再発後も、子どもとキャッチボールも出来ないような、入院生活が長引くだけの延命治療に金銭を使うことには意味を見出せないと抵抗し、最後まで痛みと闘い続けた人。
医療従事者自身が癌患者となってしまった葛藤、苦しみ、そして生き様。壮絶な命のメッセージ。