紙の本
なにか特別になりたい。
2009/10/14 23:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じゃい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ボイススタジオの講師で元シンガーソングライターの吉本を中心に、ボイススタジオに通う生徒のそれぞれの日常が書かれている。
ボイススタジオに通う東京で暮らす普通の人々。
ここでいう普通とは=特別ではない人をさしている。
歌手を目指す自傷癖のあるキャバ嬢、スキャンダルを起こした元アイドル、友人との付き合いに悩む主婦、やる気をなくしたヤクザなど。
全く違う環境なのに、『なにか』になりたいともがいている。
華やかな世界に憧れる。
ただ、そうなりたかったのかと言われると
そうでもない。
自信にあふれているところに嫉妬している。
目指すものは歌手という明確なものであったり、または何になりたいかもわからないが。
『なにか』になりたい。
そんな、普通の人のもがきを、歌を介して表現したい。
みたいなかんじだろうか。
私自身は音痴だし歌の良し悪しなどわからないので、気持ちひとつでそんなに違うのかと感心するばかりだが。
なかなか歌で世界は救えないし、普通である現実も変らないのに
でも本の最後は全部、きれいに昇華された気がする。
面倒で雑多な日常は続いていくはずなのに。
吉本の真剣に教えるけど、ちょっと熱のこもらない感じが、暑苦しくなくて好きだ。
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以前読んだ『角』が面白かったので東京生まれ東京育ちとして気になって買ってみました。内容は、無防備で読んだらけっこうエロシーンが多くてちょっととまどいました。表紙がちょっとイヤだなと思いながら買って読んだら内容も少しイヤだった、みたいな感じ。表紙から受けた印象(線はシンプルなのになんかヤだ)とちょうど同じような読後感。途中で短編集なのかな仕舞った、、、と思いましたがちゃんと連作になっていて最後には冒頭に出てきた不吉な夢の原点がなんだったのかも解き明かされてスッキリ。
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鮮烈なカバーイラストで手に取った作品。でも読み終わって心に残ったのは、やや掠れ気味のボーカルだった。読み終わった小説で音声が響いたのは、初めての経験だ。
東京の片隅でプライドどころか自分の才能の残滓を切り売りする、元シンガーのボイストレーナー吉本のところに集う彼らはそのまま、東京の縮図。大麻使用で堕ちた元アイドル。うらなりのボーカリスト。嘘をつきつづける風俗嬢。仲間外れの主婦。さびしいヤクザ。常に醒めた目で彼らに向き合い、でも不器用に歌を通じて彼らを変えてゆく吉本にも、辛い過去があった。
ヒキタクニオの小説にはいつだって毒がある。主人公は落伍者だったりコロシヤだったり角を生やした女性だったり。読者はその紛々たる毒によろめきながらも、いつしかその冷たい甘さにやられてゆく。かさかさした文体にたっぷりふくまれた皮肉な愛情。今回もまったく同様で、良い子に膝に手を置いたまま、ヒキタクニオ劇場の観客でいつづけたはずの自分があれよあれよというまに熱に巻き込まれ、膜を破ってどどうと流れてくる熱気に当てられてサヨウナラ。ところがそれが、気持ちよい。ぎゅうぎゅうに絞られてかえって爽やかに身が軽い。
ペーパーテストで100点を取っているのに実技で歌を歌わされると3しかとれなくなるほどの私なのになぜこの小説に惹かれたのだろう?と思ったがこれは多分、ボーカルに代表される欲望の合法的な大排出への願望なのだと思う。膿みだろうが欲望だろうが不満だろうがなんだろうが、とにかく全部出し切ることへの快楽。
揺さぶる才能(声)なんてなくてもいい、ただ、叫べ。
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ボイス・トレーナーの吉本の元へ訪れる7人を主人公にしながら、
繰り広げられる物語。
どちらかというと、明るい太陽の元を元気に歩く人たちではなく
いろいろ背負った危うい人たちばかり…。
トレーナーの吉本自身も、過去を背負って生きています。
東京で七転八倒しながらも、生きる強さ、
その力を感じました。
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官能小説っぽくって初めはちょっと引いたが、ストーリー構成、心理描写がすばらしい作品だった。
作者は、ロジックよりは感性を重視しているようで、小説家というより芸術家的な思考回路に思えた。
他の作品も読んでみよう。
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元売れない歌手でゲイの男性が教えるボイストレーニングの生徒達は、それぞれ人には言えない悩みを抱えている。トレーニングを通して少しは悩みが軽減されるものの、決して完全解決には至らないところがミソ。この中途半端加減が「無理しなくてもいいよ」と言われているようで、なんとなく暖かい。
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普通って何だろうね。
東京って、地方にいる奴らの寄せ集めだよな。
なんだか、単純に生きとけって言いたかったのかね。
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かつては売れないシンガーで今はボイストレーニングの講師、吉本。彼の生徒たちと吉本自身の、何者かになりたいという「喘ぎ」を綴った物語。
連作短編に近いつくりなのでそこそこ読ませるが、そこそこにしか楽しめない。「凶気の桜」の方が良かったなぁ。
暴力シーンは上手いんだから、もっとバイオレンス色を前に持ってきてもよかったはず。セックスシーンも描写は上手いが、主人公をゲイに設定しておきながら、ゲイ同士のセックス描写がないのは逃げに見えてしまう。
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直前に読んだ本が読後感満腹(^^)だったので軽く読めるのを、ということで読み出したのですが。軽く読めるのですが、イマイチだった。☆2.5の感じ。
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ボイストレーナーの吉本を中心にした連作短編集。それぞれ濃い登場人物が出てきます。この作者の作品は、裏社会というかアンダーグラウンドなのか業界の話がとても面白い。全然知らない世界だけど、、、。声に対する描写も面白い。読んでよかったです。
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「普通」なのか? できることなら、このような人たちは普通であってほしくないな。ただ、自分のことが好きで可愛くてしかたがないという、東京人の一面が喘ぎ声として聞こえる気がする。