紙の本
どっちが変なのか
2009/08/28 08:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の芥川賞は劇作家や外国人といった「異文化」からの書き手の登場で随分話題をよんだ。
結果、商社マンの磯崎憲一郎氏の『終の住処』が受賞したが、案外「異文化」という点ではもっとも「異文化」からの誕生だったといえるかもしれない。
選考委員の山田詠美氏は「芥川賞は一定レベルの文学作品を選ぶ賞」であり、「異ジャンルの書き手ということは評価する上で話題にもならなかった」としている。
昔よくいわれたような、作家になろうと苦節何十年ということ自体が、むしろ現代の感覚でいえば、「異文化」そのものではないだろうか。そのあたりの感覚から抜け出さないと出版社として、新しい書き手をすくいだせないような気がする。
女性二人の奇妙な同居生活を描いた本作は、劇作家本谷有希子氏の芥川賞候補作である。
二人の位置関係をスピード感のある会話で描いた導入部分はあざやかというしかない。
中学生時代からの同級生だった日田と巡谷。同じ上京組としてたまに連絡を取り合う程度の仲であったが、いつの間にか高井戸の清掃工場のでかい煙突が見える巡谷のアパートに転がりこんだ日田は、煙突から吐き出されるダイオキシンを吸い込んで棲息しているかのようであり、巡谷にいわせると「絶対素手では触りたくない、ちり紙みたい」な女性である。
この日田の、破天荒な人物像がこの物語に不思議な魅力を与えていて、まさに「あの子の考えることは変」なのだが、あの子のいる世界そのものが変ともいえるような感覚を読む側に与える。
そんな日田にひきづられるようにして、巡谷もまた、セックスフレンドの襲撃という奇妙な行動にはまっていく。
この二人を追い込んでいくのは、こちら側のぬべっとした世界だ。
「私、孤独じゃないってのがどんな感じなのか一瞬でいいから知りたいだけなんだ・・・!」と叫ぶ日田こそ、まっとうな世界の住人であり、日田や巡谷のような人間を取り除こうとするこちら側の世界こそ「変」なのかもしれないと、いつの間にか立場が逆転している。
それは、本谷有希子の、確信犯的な問題提起である。
クライマックの清掃工場のでかい煙突を二人で駆けあがる場面はいささか安っぽい映画ような仕掛けなのがいささか惜しまれるが、新しい書き手の魅力を堪能できる作品である。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でご覧いただけます。
投稿元:
レビューを見る
同居している女2人の話。
うん確かにどっちも変。
ページ数は少ないんだけど
長編を読んだような疲れが。
【図書館・初読・8/11読了】
投稿元:
レビューを見る
おっぱいだけがアイデンティティの巡谷と、変な日田の2人暮らし。
2人ともあまりにめちゃくちゃでぶっ飛びすぎていて、ぽかーんって感じ。
外れた考えを持ったひとの、誰とも通じ合えない孤独をほんの少しだけ考えてみた。
投稿元:
レビューを見る
あの子の考えることは変。
確かに変だ。電車でも思わず笑ってしまって気持ち悪い
自分になった、どうしてくれる。
けど、あんたも十分に変だよ。
ダイオキシンに犯され(!)ると思い込み、
強い性欲に悩む日田と、
おっぱいと同化したい、いやおっぱいになりたいと思い、
セフレ関係で恋愛にのめり込む巡谷。
変すぎるコンビの同棲生活。
結局は、やっぱ人類愛でしょ、という感じ。
本谷っぽい。いい。
投稿元:
レビューを見る
書籍化すんの、早ッ!
芥川賞候補故でしょうか?
装丁がピンクで可愛いけど、内容はエグい。
臭いが鼻をつきます。最高。
投稿元:
レビューを見る
23歳女子の巡谷と日田は高校時代のクラスメイトで、東京で同居している。胸が大きいことが自慢の巡谷は意中の人に彼女がいて付き合うことができない。自分の匂いにコンプレックスをもつ日田は挙動不審になりがちで、住んでいるアパートの近くの工場のダイオキシンが原因で有り余る性欲が増大していると訴える。ユーモアいっぱいの二人のやりとりと展開によって、あっという間に読み終えられます。迷走しながらも前に進んでいく二人を応援したくなります(2009.9.8)
投稿元:
レビューを見る
高校時代からの友達(?)で共同生活を送る、
日田と巡谷の物語。
「あの子」はおそらく日田、なんだけど、
日田から見ると巡谷も変なんじゃないかと・・
結構ブっとんだ会話が続くんだけど、
根っこは純粋な物語です。
特にラストの日田の台詞切ない!!
横ちんと歯ブラシのシーンが一番引き込まれます。
投稿元:
レビューを見る
相変わらずエキセントリックな内容だが、読んでいくとその世界にどっぷりはまって「変」なことがさほど「変」には思えなくなってくるから不思議だ。
強烈な本谷世界。
投稿元:
レビューを見る
本谷節全快。
おっぱいだけがアイデンティティで同居人を見下す巡谷と、周りとの浮きっぷりを抑制することができない日田。
日田に共感しつつ、巡谷の痛さにも涙しつつ、それでもやっぱり一番は、力強く世間から浮いている日田に仲間意識を覚えずにはいられない。どうやったらそんなに屹立できるんだろう。自分も隠すことのできない世間とのズレっぷりに苦しんでますよ。万歳、日田。
投稿元:
レビューを見る
私のグルーヴはあとちょっとで消える。残念だったけど、しょうがない。きれいな時間だけが続いたら、わたしの中のきれいの価値が下がってしまうだろうしな。きれいはレアなほうがいいんだ、きっと。
(P.136)
投稿元:
レビューを見る
終始にやにやにやにやしてた
有害物質をきにしすぎる有害な同居人。
日田の尋常じゃない一心不乱さがすきだ。
じっさいまわりにいたらいらいらするだろうことは確実なのだけど
ブッ飛んでる人ってブッ飛んでる思考の枠のなかで正しいことを追求しようとしてるからにくめない
モンスター化計画とか日田スメルとか高井戸エックスデーとかフェラチオのメタファーとか愉快なことばたちがぎゅうぎゅうにつまっていてもうやすむひまがない
本谷さんのあたまのなかがみたい
投稿元:
レビューを見る
本谷さん自体が変な人そうです。以前読んだのは、つまんなかったけど、これは作者と主人公の距離が取れてて良かった。
投稿元:
レビューを見る
▼「お前の考えることのがよっぽど変だ!」以上。
▼という話です。
▼いや……そのほかの説明のしかたがないというか……。頭のおかしい女子同士が殴りあいながら慰めあう話で、「臨死!江古田ちゃん」を彷彿とさせる、ダメでハートウォーミングな臭気を醸し出している。読み始めるとノンストップで行くところまで行けてしまう、癖になるにおいがする。面白がって軽く共感してしまった自分に若干「引く」、そういうところが楽しい。(10/1/21 読了)
投稿元:
レビューを見る
自分も暴走女なので痛くて痛くて、でもそれが気持ち良かったりしました。おっぱいで空き缶潰すのは私もTVで見て「おっぱいの破壊力ってすんごい!!」と思いました。偉大です、おっぱい。
投稿元:
レビューを見る
んー。へんてこだった。会話での表現が多すぎると思うんだけど、どうだろう。その分スピード感は出てるけど。