紙の本
ここに日本の医療ドラマの源流があった、納得しました。それにしてもエライお医者さんがいるものです。もちろん、仁術といった山本周五郎の世界の人物とは違って医療技術の頂点を極めた人の迫真のドキュメントです。一言でいえば、カッコイイ!
2010/02/16 19:37
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読むの、どうしようかな? って迷ってました。海堂尊だから何も考えずに「買い!」っていうのが昔の私なんですが、最近は読みたい本がやたら増えてしまい、小説命の私としては、ノンフィクションはよほど面白そうなものでない限り後回しにしたいところです。でも、なんとなく「外科医須磨久善」っていうのが格好いい。
とはいえ、私はこの人のことを全く知りません。看護婦の世界から足を洗い、介護の仕事に就いてもう五年が経ちます。おまけに、我が家は地上波の受信ができません。ということは、この本に出てくるNHKのプロジェクトXを見ることも出来ません。BS放送で見ることができる『医龍』だけが、我が家と医療との接点?
ま、それ以外にも韓国ドラマで『白い巨塔』『外科医ポン・ダルヒ』新しいところで『カインとアベル』、それに台湾ドラマ『ホスピタル』を見るっちゃあ、見ている。本当はNHKのERもあるんですが、どうも白人の医学ドラマが好きではないので、それは名前のみ。要するに、世は医学ドラマブームなわけです。実際、私も看護婦免許は持っているわけだし・・・
というわけで、半信半疑で読み始めました。平均読速120頁/時くらいのペースで一気に読みました。いやはや、これが『医龍』の、いや『チーム・バチスタの栄光』の元なのね、って。それにしても凄い人がいるんだなあ、と感心してしまいました。天才の足を引っ張る日本の閉鎖社会、っていうドラマに海堂は殆ど目をくれません。
それは須磨の頭にそういう記憶が殆どない(実際はどうだか分かりませんが)ということの反映でもあります。ま、それは私にも分からないではない。周囲のことを気にしていたら、何も出来ないというのは天才だろうが凡人だろうが変わることはありません。振り返る時間があるなら、その時間を今、そして前を向くことに充てる。
ついでに言えば、普通の主婦をやっていたって一生のうち何度かは、選択を迫られる時があります。その時、ともかくリスクのある道を選ぶ。ま、私が出会ったそういうものは、小さな変化しか生みませんでしたが、須磨の場合はかなり大きく変わる。エスカレーター式の学校から学外の医学の道を選んだのもそうなら、系列の病院ではなく、あえてそうではない病院で研修する。
日本ではなく海外、非公開ではなく公開、ローマではなく日本、大きく切るのではなく切らないように。居場所や地位は大きく変化しますが、人を救うために、という一点は譲らない。そして、勝ち続ける。奥さんは、どうも夫の選択に疑問を抱きはするものの、ともかくついて行く。でも、2008年現在、須磨は58歳。もしかすれば、彼が執刀できるのはあと数年かもしれません。
だから、ではないでしょうが彼の視野には後進の育成というのも入り始める。後進、といっても須磨の視野にあるのは子供たちだというのが凄いです。医者になんかなりたいとも思わなかった子供たちが、彼の葉山ハートセンターを見学することで考えを変える。なにも、見学だけを通じて彼のやりたいことを理解するだけではありません。
須磨自身やったこともない最初のバチスタ手術を、彼の執刀で患者が選択する。第一号の患者が亡くなっても、第二の患者が須磨の執刀を選ぶ。もうここらへんになるとドラマの世界としか言いようがありません。無論、こんなに派手ではなくても、実は身の回りの医療現場には似たようなことは沢山あります。だから医学ドラマは面白い。
そして、その元になるノンフィクションも面白い。最後になりますが、私は映画『チーム・バチスタの栄光』の撮影エピソードにも激しく心動かされました。吉川晃司、必ずしも好きなタレントではありませんが、この本を読めば、彼の後姿を見てみたいなあ、って思います。早速、私はこの本を長女に回しました。
以下はデータ篇。
カバー写真 須磨久善
撮影 操上和美
装丁 安彦勝博
初出 「小説現代」2008年11月号~2009年3月号
目次
はじめに
第一部 心臓外科医 須磨久善の旅
1章 未来への扉を開く――公開手術
一九九二年 ベルギー・ブリュッセル 41歳
2章 学会の熱風――米国留学
一九八四年 ソルトレークシティ 33歳
3章 回り道か抜け道か――外科研修と胃大網動脈バイパス手術
一九八六年 36歳
4章 ニュー・ライフラインの発見――AHA(米国心臓協会)
一九八八年 38歳
5章 外科医になろう――少年時代から医学生時代
6章 ローマへの道――ローマ・ジェメリ総合病院
一九九四年 44歳
7章 バチスタ手術――湘南鎌倉総合病院
一九九六年 46歳
8章 スマ手術への進化――バチスタ手術の完成形
一九九七年 47歳
9章 医療の宝石を手に入れる――葉山ハートセンター
二〇〇〇年 50歳
10章 須磨久善はどこへ行くのか――心臓血管研究所へ
二〇〇八年 58歳
第ニ部 解題 バラードを歌うように
二〇〇八年7月
主要論文と解題
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海堂尊のゴキゲンなノンフィクション。
須磨先生カッコイイ。そして役者魂を見せつけるKIKKAWA…。
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実在の外科医である「須磨久善」について海堂が語ります。これこそ外科医って感じでかっこいいです。こんな医師がもっと大勢いれば、日本の医療も大きく変わるだろうと思います。
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外科医の須磨先生を海堂氏が見た本。
『このミス』のバチスタはこの人からインスピレーションをもらったらしい。
そして、須磨先生も『このミス』のバチスタを読んで、医療監修をした人。
海堂氏にしては珍しい『現存する人物』を題材にしている。
須磨先生の人となり、転機を書いてます。
医師が医師を題材にしている事自体稀有な事だと思うんですが。
また、須磨先生がカッコイイ発言をバンバンしている。
マジで医師ですか?
日本の心臓外科医に光を持ってきたくれた人。
こんなにカッコイイ生き方している人ばかりがいたら、どれだけ日本はステキだろうか?
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海堂尊さんの本だから…と、須磨久善という医師についても何も知らず、
おまけに海堂尊さんのことだって、最近数冊本を読んだことがあるだけという、
ほんとに何も知らずに読みました。
途中まで読んで初めて気がつきました。
日本でのバチスタ手術の第一人者の外科医について書かれたドキュメンタリーだったんですね。
外科医である須磨久善さんという方の生き方、
人のために前に進むことで、新しい方向に進んで行った、
その生き方にを読みやすく力強く書かれていて感動しました。
読んでる途中、何度もジーンと涙が…。
知らずに読んだけど、出会ってよかった。
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〈内容〉“海堂ワールドの新展開、外科医の謎に迫る。” 世界的権威の心臓外科医はいかにして誕生したのか。旧弊な学界から若くして認められるため、どんな奇策をとったのか。現役医師作家にしか書けない、医者の秘密。
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日本で初めてバチスタ手術を成功させた『神の手』を持つと言われた男、須磨久善。
彼の生き方はシンプルでぶれない。
それは彼が初心を忘れないから、ひとりでも多く幸せにしたいそれによって自分も幸せになりたいその原点を見失わずに生きていく姿はなんとも言えずかっこよい。
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“海堂ワールドの新展開、外科医の謎に迫る。” 世界的権威の心臓外科医はいかにして誕生したのか。旧弊な学界から若くして認められるため、どんな奇策をとったのか。現役医師作家にしか書けない、医者の秘密。
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小説かと思って読み始めたのだがそうではなかった。『チームバチスタの栄光』を著すきっかけになったとも言える、外科医中の外科医・須磨久善氏の人物伝とでもいう一冊だったのである。
越境者の中の破境者として、心臓外科とそれ以外の外科、そして内科との間に厳然と立ちはだかる壁を乗り越えると同時に壁を突き崩して、技術の交流を実現させ、外科医としてとるべき道を歩み続けてきた須磨医師の魅力が充分に伝わってくる。こんな神さまのような人がほんとうに存在するのだろうか、と疑いたくなるほど神々しく見える。こんな医師がいてくれるなら、心臓外科の未来は明るい、と文句なく思わせてくれる一冊である。
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おそらく、その過程においては、悩み苦しんだのだろう、大きな壁にぶち当たっただろう。
しかし、成功した者は、それらをうち破って、その先にある何かをつかみ、その体験談はシンプルな言葉に置き換わる。。。
対処療法ばかりで、初心を忘れてしまう自分に、喝を!!
少し前向きになる本でした。
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図:海堂さん本。小説ではなかったが意外と読み込んだ。須磨先生。こんな格好いい大人の姿を見れる子どもがいれば日本も安泰だ。
内容紹介
“海堂ワールドの新展開、外科医の謎に迫る。” 世界的権威の心臓外科医はいかにして誕生したのか。旧弊な学界から若くして認められるため、どんな奇策をとったのか。現役医師作家にしか書けない、医者の秘密。
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まだ購入出来てないのですが、すごく気になる1冊です。インターネットで須磨先生のインタビューをみて、この方の生き方に感動しました!近いうちに読みたいです!
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小説かと思い手にとって見たらノンフェクション。でも、読み始めたらぐいぃと引き込まれて。
いつも高みを目指す事、諦めないで、発想を変えてみる事、自分を甘やかさない事、感動しました。
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メディカル•エンターテインメントの旗手、海堂尊のノンフィクション小説「外科医 須磨久善」を読みました。この著作の主人公である須磨久義先生は日本で初めてバチスタ手術を成功させ、それをより完成度の高い術式へと進化させた「神の手」の異名を持つ天才外科医です。そして、海堂氏の出世作であるチームバチスタは、彼にインスパイアされたものなのです。
で、この本では、須磨久義先生の挑戦につぐ挑戦、フロンティアを切り開こうとするアグレッシブな歩みが力強く綴られています。はっきり言って、コンキチは須磨先生に本物をみました。そんな須磨先生の発した以下の言葉にコンキチは引きつけられたんですが、折角なのでメモしてみます↓
<引用開始>
自分の力を思う存分発揮できる最高の舞台がほしくなる。役者でも歌手でも、最高のパフォーマンスは、自分を引き立ててくれる素晴らしい環境でやりたいと考えるのは自然なことです。
<引用修了>
どうですか、皆さん。スーパー凡才級のコンキチでさえ上の言葉に猛烈なシンパシーを覚えました。
やっぱ、人って奮い立たなきゃなって思いますね。
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初めてこの人の名前を聞いたけど、
医龍のドラマとチーム・バチスタの栄光の医療監修
やってたみたいでびっくり。
確かにこの2つの医療監修務めるには最適の人物だと思いました。
新しいこと・出る杭を嫌うネガティブな日本の国民性をもどかしく思ったり、
どんどん新しいことを受け入れるポジティブな欧米の国民性を
羨ましく思ったり、
医療のの専門の細分化に疑問を持ったりしましたが、
一番印象に残ったのは”いつでも初心を忘れない”という
今まで何度も耳にした言葉でした。
最先端医療を開発・活用してもそれはなんのためなのか、
医療とは、ということを常に念頭に置いて進んでいる。
妥協せず、進取の精神に富んでいる。
この人は「病院とは人生を取り戻すための舞台だ。
単に壊れた部品の修理工場というだけではなく、
価値観を見直すためのステージでもある。」
と考え、だから自分の病院を作る時、
「黄泉の世界に旅立つ死人と、
治癒し社会復帰していく生者のために、
立派な舞台を作りあげたい。」
と願った。
そう考えると、私が看護師も、その一端を担う重要な役割なのだと
改めて感じました。
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破境の外科医、須磨久善。この人の伝記だ。
このように突き進める人の話を聞くのは今の自分にはまぶしすぎる。
枠のなかから抜け出せない自分はこの人のようにはなれないと思った。
5年ごとに神の啓示があるかのごとく、人生の岐路を決めていく。
この人と、自分の人生を比較すると自分の人生は選択ミスだらけに思えてしまう。
バイパス手術とバチスタ手術。
この手術を人を救いたい一心で苦難を乗り越えていく。そして自分で培ったノウハウを惜しげもなく伝えていく。
この人のように生きていけたらどんなに素晴らしいかと思ってしまう。
今からでもやり直せるのだろうか・・・