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141(2009上半期)芥川賞 受賞作品

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みんなのレビュー194件

みんなの評価2.6

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/08/08 17:00

家族の肖像

投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

最近、再びウイスキーが見直されているらしい。作者の書くものは、ちょっとクセのあるシングルモルトってとこだろうか。この作品も、震えたね。

30歳過ぎて結婚した男女。すでに大人なわけで甘い新婚生活なんて無縁。いきなりドライなわけ。男は、いわゆる薬品会社のプロパー。職場も劣悪だが、家庭も居ずらい。イラクサの家で。やがて子どもができ、マイホームを建てる。

このあたり、家を建てる描写は、小島信夫の小説を彷彿とさせる。男は、会社に長居し、外に次々と女をつくる。この女性遍歴をふくらませるとまた違った趣の小説になる。サラリーマン小説だと黒井千次の系譜なんだけど、底辺に漂っている苦いユーモアは後藤明生かなあ。源流はゴーゴリやカフカかも。

男の勤務する薬品会社は、外資の波をもろに受ける。不慣れなアメリカでのM&Aビジネス。万事不快調な『島耕作』ってのもある、ある。男と入れ替わりに娘がアメリカへ留学する。わが家で男は背後から妻の肩をつかむ。ハッピーエンド、めでたし、めでたし。

ぼくには到底そうは読めなかった。映画なら、何だろう。やっぱり、成瀬巳喜男だ。

何日か前の朝日新聞に作者のインタビューが掲載されていた。

「過去というのはどうしてこんなにも堅固で、悠然とそびえ立って、堂々としているのだろう。だが過去のこの遥かさ、侵しがたさこそが私にとっては大きな希望なのだ。私の書く小説もまた、その希望の上に成り立っている。」

時の流れは、過去-現在-未来と決して一本道ではない。1時間は60分と決められてはいるが、それ以上に長いと感じるときもあれば、逆に短いと感じるときもある。また、先のことは不可視だから「不安」でもあり、「楽しみ」でもある。裏腹の関係。

記録と記憶の違い。記憶は、自分の都合の良いようにある意味、捏造または虚構化、演出してくれる。そして細部はきれいさっぱり消去してくれる。昔のことゆえ、振り返ってもどうにもならない。どうにもならないことをアーカイブ(保存記録)で見せられても閉口するだけ。「昔は良かった」と多数の人が口にしたがるが、実際のところは、そうでもなかったりして。現前の状況からの気休め的一時避難の方法として言うのかもしれない。ただ不動の過去に対して寄りかかってしまうのは不変だからだろう。変わらない過去、それは屍だからなのか。否。

♪ 時はいつの日にも親切な友達 
過ぎてゆくきのうを物語に変える ♪

―『12月の雨』荒井由実より一部引用―

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低い評価の役に立ったレビュー

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/09/06 15:35

わけのわからない芥川賞受賞作は多いが本物のサラリーマンが書いたこの作品、定年後の生活を平凡に送っている私にはとても身近なものに感じられました。たまにはこういう芥川賞もいいものだ。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

現役のサラリーマンが描いたサラリーマン小説で純文学で芥川賞受賞作というのは珍しい。何らかの事情で会社をやめその経験から企業小説を書く作家はいても、たいがいの場合は企業と批判的に向きあっている。あるいは揶揄する姿勢が見えるものだ。この小説では製薬会社の営業を担当していた主人公の「彼」の記憶が語られ、会社での仕事ぶりについては、上司の指示通りに務めを果たそうとする「彼」はそこに溶け込んでいて会社に違和感を持つことはない。私を含めてサラリーマンの多くはそんなものだろう。身近な「彼」である。

雑誌「文芸春秋」には磯崎憲一郎氏のインタビューが掲載されている。44歳の三井物産人事部総務部次長。三井物産では物分りのよい上司に恵まれ「良い仕事」に打ち込むことができ、芥川賞受賞も歓迎されているとあっけらかんとして語っている。さすが組織になじんだ本物のサラリーマンだ。皮肉ではなく本当にそうなんだろうと思えるから人柄に親しみを覚えた。
よく会社と私生活を切り離して人生設計を考える向きがあるが、そうではなかった私にとって氏の
「(会社員と小説家の区切りについて)その二つの間で引き裂かれるのではなく、むしろ統合されて一つになっている感じがします」
をそのまま受け取ることができる。
そしてこの作品は氏のこうした安定した内心をそのままつづったものなのだろう。たまには現状満足型の芥川賞もいいものだ。

「彼」はたぶん50歳をこえたところのようだ。そして自分の過去を振り返っている。過去はちょっとした出来事と奇妙な心象風景とが交錯し、行きつ戻りつしながら語られる。出来事といってもどこかゆがみがある過去の現実だ。妻との出会い、一体感の生まれない夫婦生活、何人かの女性とのつきあい、苦労しながら大仕事を成し遂げる会社生活、娘の誕生や成長、マイホーム建築などである。小説的には別段ドラマチックな過去ではないものの、一般的には平凡なサラリーマンにとってはこれら過去の出来事はその時点ではもっともっとドラマチックな質感を持って迫ってきた現実であったはずだ。ところが、文体は簡素に平板に、悲しみや喜びや怒りという感情の起伏がなく語られる。コントラストの弱いセピア調で現実味の濃度は薄い。むしろ色彩ありや音、匂いはなど、感覚作用は「彼」が見る白日夢のほうがリアルである。またそのときどきの「彼」にはこれらの出来事の発端なり結果を予想できていた、という気配を感じさせる。それが「どこかゆがみがある過去」という印象を与える。

いろいろあったが50歳を超え自分の家をもてた。幸いにしてたいした波乱もない先がみえる。そんな平凡な日常に溶け込んで生きていける自信がある。50歳でこんな心境はちと老化が早いんじゃあないかと思うのだが、たとえば定年を迎え、食うに切羽詰ることはないだろうと、これからの短い先の人生を見通せる自分であれば似たような心境にもなれる。膨大な過去の事実の積み重ねの結果が今の自分なのだと気がつく。文学者的であったり哲学者的であったりしたいような気分になって、今ある自分は過去の現実の集積した存在である、今ある自分は無数の因果の組み合わせからたどりついた必然の結果なのだと認識すれば、過ぎ去った日々の出来事については原因も結果も予測可能であったかのように錯覚することはありえるだろう。思い出というものは、そのときの自分がそのときの自分の都合にあわせて手繰り寄せた過去の記憶の断片にすぎない。「彼」は今の「彼」が都合よく集めた記憶を語っている。だから平板であり彼の見る月は常に満月だったのだろう。「彼」の妻も似たもの同士であって結局現状肯定型の普通に折り合いをつけられる夫婦関係なのだ。

「(三十歳を過ぎて結婚を決めたときから)それから何十年もたって、もはや死が遠くはないことを知ったふたりが顔を見合わせ思い出したのもやはり同じ、疲れたような、あきらめたようなおたがいの表情だった。」
冒頭近くにあって未来から見た過去形だが、同様の趣旨が現在完了形でラストに繰り返される。

ちっちゃな幸せみつけた!

平凡な夫婦とはこういう折り合いのつけられる現実のことでいいんじゃあないだろう

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2009/08/28 00:19

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2009/09/11 21:54

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