紙の本
「結婚」って大事なもの、そして恐ろしもの
2011/02/21 20:28
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なかはらとまと - この投稿者のレビュー一覧を見る
すみません、私はこの作品を「好き」にはなれませんでした。私には非常に印象が薄く感じられ、時代錯誤の感じが否めないのです。だけど、そこが純文学の良いところでもあります。哲学的思考は唸るものがあり、考えさせられた部分も大きかったです。おススメしないという訳ではありません。
結婚生活がいかに恐ろしいものか、深く悩みました。11年間、夫が妻と一切話をしないとはどういうことなのか?!私は主婦ですが、考えあぐねてしまいます。男性が社会的地位を得るのも「結婚」って大事なんだよと、離婚した友人が言っていました。離婚したとたんに仕事を回してもらえなくなったそうです。本書にもその様なことが書かれています。
何故、好きになれないか考えてみても徒労に終わるだけかもしれませんが、考えてみます。地味なのかなと。もう少し派手にやって欲しい、単純に私の「好み」と合わなかった、それだけの様な気がします。芥川賞受賞作にもの申してるみたいで気がひけますが、私はそう思いました。
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「終の住処」 磯崎憲一郎
第141回芥川賞受賞作。
1人の男が、結婚し、浮気し、子をもうけ、浮気し、遊園地をきっかけに妻との会話を11年間失い、それを取り戻し、家を建て、アメリカに行き、帰ってくる、青年期の終わりから老人の入り口までを描く。現実の時間や空間に上手く馴染む事ができずに、運命論的な人生観や、出来事に対しフツウでない解釈を付与する夫、理解不能な存在としての妻。
丁寧な故に長い、観察的かつ説明的な描写と文体。しっかり描かれるば描かれるほど、かえってリアリティをなくしていく世界。異常でもなくまっとうでもなく、具体的でも観念的でもない。イメージとしては、音楽CDのスキットのような質感を持つ小説。
日常、私生活、半径五メートル以内の世界、そんなものたちを描こうとする小説、映画群の中ではあまりお目にかかった事がない肌理を持っていて、その意味で珍種だと思うし面白いが、同時収録の「ペナント」のように、それを繰り返すだけだは、早晩に飽きてしまいそう。
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◎第141回(2009年度・上半期)芥川賞受賞作品。
2009年9月12日(土)読了。
2009−90。
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第141回芥川賞受賞作。
なんでもない過去の積み重ねによって今がある。
そして過去のどんな積み重ねも「今」より重いということはない。
みたいなことを言いたい話、なのかしら?
風景描写や心境を暗示させる描写が多いんだけど、頭に入ってきにくい。
話自体も…あまりにも淡々と進み過ぎて、何が言いたいのかわからない。
純文学はわからんです。
(芥川で肌に合ったの読んだことないなぁ)
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いいねぇ 文学ですよ。
今回を含め、過去2回の受賞作は
非常によいです。
まだまだ、日本の文筆は大丈夫だと思う。
本が売れない時代、小手先のことで対応しようと
する出版界に言いたいね。
作家を育てろよ!って言いたいね。
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芥川賞というだけで読んだ本です。いつもなら直木賞は読むけど、芥川賞は全く読むことはありません(過去に「赤頭巾ちゃん気をつけて」「僕って何」くらい)。ということで私には似合わない作品でした(^^;
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今年の芥川賞受賞作。筆者の三井物産勤務のサラリーマンという経歴に興味を持った。文学するのは久しぶり、という期待感もあった。
まず眼を引くのが、この物語のテーマが愛であること。主人公の男は極めて身勝手な想いに振り回されながら、時に身勝手な行為に身を窶しながら、長い時間を押し進めていく。不倫するかどうか、それをこの妻のように許すのかどうかはともかく、結婚生活ってこんなもので違和感や不機嫌さや悩みを抱えながらも毎日を過ごしていくものだと思う。不協和音を織り交ぜつつも永い時間を共有し、紡いでいくのが、普通の人たちにとっての愛の形なんだと妙に納得した。
次に、筆者の技法ともいえる時間の扱い方。「固くごつごつした物体を積み上げる」などと評されているが、段落の区切りがほとんどない文体のまま、長い時間の物語が連続して語られていく。選評でこの手法に対する評価がまちまちなところを見ても、決して洗練されているとは言えないが、ある時点から過去を走馬灯のように振り返ればこのような語り口になるのだろうし、自分にとっては違和感なく読めた。
最後に、言葉を多少過剰なくらいに連ねていく贅沢さ。冒頭の夏の公園で不思議な光景を見る場面とか、単純にはよくスケッチしてるなぁと感心するのだが、文学らしい贅沢さがあって良かった。その後はスピード感を上げるために表現を控えているが。
物語は主人公が50歳くらいのところで、20年を振り返り終わったというように唐突に終わっている。でなんなの、という読者の声が聞こえてきそうだが、これから老後を二人きりで過ごしていくんだ、という余韻は、そこまで行ってない世代にとっては、響いてこずよくわからなかった。
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「離婚しない夫婦を書こうと思った」との作者の言葉に惹かれて読んでみた。
リアルな夫婦の軌跡ではなく象徴的な実験的小説だった。
夫婦の関係は相互に影響し合うのではなく閉じている。
高度経済成長の恩恵を受けた世代の労働観が反映されていた。
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今年の芥川賞受賞作。
実家に『文芸春秋』があり、
母に「この人、なんか面白みがない」と言われ
作者磯崎氏の受賞インタビューを読む。
ふむふむ。
確かに面白みのなさそうな人。
面白くなさすぎて、最後まで読めなかった。(インタビューは。)
早稲田を出て一流商社に勤め、
それなりに見た目がよく、
それなりに仕事もでき、
それなりに女性にもモテそうな。。。
なーんて言ったら失礼か。
同誌に掲載されていた太田光と向田和子との対談の方が
数倍おもしろかった。
というのは、さておき。
小説はなかなか面白かった。
30過ぎてなんとなく結婚した夫婦の話。
なんとなく娘が生まれ、
なんとなく浮気を繰り返して、
なんとなく11年間口を聞かず、
なんとなく家を建て、
単身赴任から帰って来たら、
家に残ったのは夫婦だった。
その20年間が、どこか客観的で
冷徹に描かれている。
離婚に至る原因はたくさんあるけれど、
離婚しないで続ける夫婦の縁なのかな。
話自体は好きではないけれど、
描写や世界観がいいなと思った。
男が女を不可解に思う描写とか。
20年一緒にいたって、
その先はあと20年はあるだろうし。
会話がない夫婦なんてやだなぁ、
とか、文学的でないことを考えていた。
これがまあ つひの栖か 雪五尺(小林一茶)
やっぱり、「終の住処」といえばこっち。
とりわけ「これがまあ」がすき。
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文藝春秋にて、表題作のみ読了
思想ホビー宗教ナショナリズム大企業の看板などにぶら下がることもなく
ただフワフワと「ありきたり」を生き抜いてきた男の一代記
「アイデンティティー不在」の問題を否定肯定の両側面から描いているが
そのどちらもが正当なものである故、非常にモヤモヤした読後感が残る
一人称でよさそうな内容を、あえて三人称小説に仕立て上げているところが、ミソといえばミソ
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文藝春秋に載っていたものを15分で速読。
その前に見た審査員の評に引っ張られたのもありますが、
視点が定まらないバラツキ感は否めず
都合の良い男目線であるという点と、設定に無理がある点と、必要な部分を説明してくれない点で
放ったらかされる感じがあります。
これから頑張ってください、と上から目線で失礼します。
他の候補者で「まずいスープ」が良いそうです。
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夫婦が長年一緒に過ごす時間とはいったい何なのか、その間にくっついたり離れたりする2つの感情も、まるで関係なく、ほとんど描写されることもなく、ゲームのコマはゴール目指していとも簡単に進められてゆく。
最後に見た妻の顔が、どこか懐かしく、やはりあきらめたような疲れた表情だったのは、20年前に結婚を決めた時を思い出させ、いつもの不機嫌の謎を解くカギにもなる。
結婚して添い遂げることの意味を、それぞれが抽象的なイメージをもって何かを感じることができればいいのではないだろうか。
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141回芥川賞受賞
主人公はサラリーマンで、
物語の土台は家族。
なんか基本設定は普通なんだが文章から、
著者の視野はものすごく広く深いと思われる。
同じサラリーマンなのにこの感性の差はなんだ。
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芥川賞受賞作品。
作者の文体、手法に慣れていないせいだろうか。読み始めに感じた落ち着かなさを伴う一定の距離感は、最後まで消えなかった。
ある日を境に11年も口をきかない妻、浮気を重ねる夫…たとえば、それらへのはっきりとした理由や心の機微が描かれるわけでもなく、加えてそこに流れる時間の経過は、あるときは重く停滞しあるときは突如ワープしたかのようで、雲の上を歩いているような不安定さが付きまとう。
進めども進めども不可思議な世界がループのように続いてゆく。
人生とは、夫婦とは、幸せとは…底知れぬテーマに、ぬるりと舐められたような不気味さと、一方である意味の真実を垣間見た気もする。
全体を通して感じられる“時間”に対する不思議な感覚は初めての体験であり、加えて確かな表現力で構築され、その点においては魅力的な作品といえる。
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この作品は、主人公の「感覚」そのものを言語化したところに
意味があるんだと思う。
だから、ストーリーとか、登場人物の台詞とか、
そういったものは、この作品の価値としては、重要な要素ではないと感じた。
この作品として重要な点は、活字の世界の微妙なバランス感覚を、
磯崎さんならではの感性で世界を構築した点にあると思う。
というわけで、
作品を読んだのち、インターネットで磯崎さんのインタビュー、
芥川賞選考委員のインタビューを読んだ。
やはり、磯崎さん自身人間が感じている「時間」というものを
文字として表現したかった、とおっしゃっていし、
選考委員の山田さんも、「小説でしか書けない言葉で構築されている」
「文学というものを確信している」と評していたが、同感。
何だかよくわからない、歪んだ時間軸や、
小説でしかありえない世界観が好きな私にとってはなかなか良い作品だった。
ストーリーは結構よくあるストーリーにすぎないのだけど。
ガルシア・マルケスとか、今まで手を出したことがなかったけど、
これから読んでみようかと思う。