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五つの作中作が作品全体を支えており、長編としても短編としても楽しめる。シンプルそうに見えて、実は綿密に練られたその構造に舌を巻く。これがある種の実験的な試みならば、作者の予想を上回る大成功ということになるのだろう。
リドルストーリーの性質は、『儚き羊たちの祝宴』の発展形なのかなとも思う。同じパターンの繰り返しだが、“おまけ”がついてるので飽きることはない。むしろ、意識が先へ先へと進んで行くので、中断するのに苦労した。
ベースとなる「アントワープの銃声」にはあまり興味を感じなかった。結果は二者択一だし、どっちに転んでもあり得る曖昧な事件と捉えていたからだ。しかし、本作品の行き着く先が全く読めないため、後半になってからこの地味な事件が大きな意味を持ってきた。キャラも薄く筆致も雰囲気も淡々としてるのに、ページ数が少なくなればなるほど、なぜかじりじりと追い詰められる微妙な緊張感は、なかなか体験できるものではない。
ラストで線が繋がるかどうかは読者次第。個人的には、白黒はっきりつけなくても別段構わないと思っている。その一歩前で露になる二重底部分のインパクトが強すぎるので…。読後、作者の仕掛けがじわじわ効いてくる秀作。
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伯父の経営する古書店のアルバイト兼居候の主人公、菅生芳光は報酬に惹かれて、依頼人である北里可南子の亡き父が書いたという5つの小説を探すことになる。その5つの小説は結末の伏せられたリドルストーリーで、可南子はその結末部分だけを持っていた。やがて芳光は、可南子の両親に関する「アントワープの銃声」という事件の存在を知るが…。
リドルストーリーを追ううちに明らかになる真実、という物語の構成も、ラストの締め方も興味深く読めたんだけど(米澤穂信はやっぱり巧い)、いまいちすっきりしないのはなぜだろう。
登場人物たちやストーリー全体に漂う閉塞感、重い空気が息苦しかったのかもしれない。
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待ちに待った米澤穂信さんの新刊です。興奮を抑えきれずに読み始めたのですが…あれ?何となく違和感というか私の大好きなtasteとのズレが禁じえないような。ミステリィとしては◎なんだけどあの突き放したベタつかないクゥルネス感は何処へか。「米澤穂信」の前提ナシで読むのなら素晴らしい作品だとは思うんですけど。
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内容(「BOOK」データベースより)
古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
米澤 穂信
1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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体調が悪い中、読んだので、文章が頭に入らなかったせいか、期待した割には、印象が薄い。
おぼろげには分かるのだが、一つ突き抜けたものがないというか、心に訴えるものがないというか。
また、別の機会に読みたい。
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過去に起こった事件の真相も気になるところですが。作中作のリドルストーリーもまた素敵です。リドルストーリーって本来は結末がない物語だけれど、これには結末があって。そしてまた、そこにこんな仕掛けがあっただなんて!
ラストも印象深いものでした。
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未発表の小説4本を探してほしいと古本屋を訪ねてきた女がいた。父が残した小説だという。古本屋で働く大学生が探し始めると、作者は歴史的な事件の当事者が作者=女の父だと判る。5本揃ったところで、父が書いた意味と真実がわかるが、あまり心地よい終わり方ではない。
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薄暗くて、重くて、そして静寂さ感じる一冊。主人公自体暗いし、主人公を取り巻く環境も暗い。依頼人の可南子も暗い。もうとにかく暗い。でもこの陰鬱さがすごく面白い。リドルストーリー5つ、その結末が5つ。組み合わせによって真相が明らかになっていくなんて、本好きにはたまらない小説だった!!古本屋に持ち込まれる相談っていう時点で個人的にツボなのに!しかもタイトルでもある5つのストーリー、つまり5つの作中作も幻想的で魅力的。ラスト陰鬱の中にかすかに感じる暖かさに素直に感動した。
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悲愴とか、悲劇とか、そういったものではなく、運命なのだろうと思った。
結末まで謎を含めるミステリーは面白かった。
また、小説に小説を含める所が米澤さんらしいと思った。
そして、五断章だけあって五つのストーリがあって繋がるのですが、その五つの小出し攻撃が結構効くのです。
この本を手にとって感動したのは中表紙。
表と裏は微妙にちがうのです。
製本もがっちりしていて、外も中も完成度高いところが、ハードとして買った喜びもありました。
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紺屋シリーズに近しいのかと思いきや、またそれともちょっと違う別物の雰囲気を感じる。 「犬は・・」の様な毒々しさがない。陰鬱な方だけ。
嫌いではなくまた別の米澤作品を見た気がした。
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大学を休学して戻る見込みもないまま、伯父の古本屋でレジと力仕事を担当している青年・芳光。
そんなところへ、ある同人誌に発表された作品を追って、若い娘・可南子が訪れます。
父親が若い頃に書いていた小説を見つけ出してくれたら、一作につき10万円出すと。
大学へ戻る足がかりになるかもと引き受け、しだいに興味を抱いてはまっていくのですが…
叶黒白という妙なペンネーム。過去に起きたらしい事件の真相は…
アントワープの銃弾とは?
作品には、「奇跡の娘」はルーマニア、「転生の血」はインド、というようにかって旅行した先で奇妙な話を聞いたという共通点があった。
この短編がなかなか鋭くて~民族的な暗鬱さや激情をほのめかせてユニーク。
過去に描かれた短編と、その中に含まれた謎。
ひとひねりしたミステリですね。
リドルストーリーというのは最後の一行がない、謎が解けていない形式だそう。その短編を読みつないで謎を解くのです。
年月の重みを越えて、痛切な叫びが、短編の中から響いてくるのが味わい深い。
かなり力作です。
五つ星まで行かないのはまあ微妙な読後感…
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後味悪いなぁ〜
話がつまらなかったとかぢゃなくてね
気味が悪かったです
叶黒白という作家の5つの断章がキーになんだけど
その小説が気味が悪かったよ
ホラーとかの気味悪さぢゃあなぃんだけどねー
最後にはってさせられたょ
さすがこのミスの作家別1位ですね
けどやっぱり全体的に気味が悪かったでまとめ。
登場人物とかもみんな気味が悪かったでまとめ。
好きな人は好きだよ多分。
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内容(「BOOK」データベースより)
古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。
依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。
調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。
二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?
リドルストーリーの結末を入れ替えることによって
真相がはっきりしてすっきりしたたけれど
五つの小説共に暗く後味の悪いもので、読んでいてこっちまで暗くなるくらい。
主人公の性格も生い立ちも暗いし、物語全体がとにかく暗い。
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4.3てん
いつもより一般向けに書いた作品。
作中の5作品が雰囲気があり、よかったです。
しかし結末が、ファンなら想定内かなと思った。
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話の設定といい雰囲気といい、一風変わってるかなぁと思ったのだけど、最後の結末に関しては案外凡庸。五つの断章を追うというストーリーは不思議な感じで良かったんだけど、予想の範囲内でまとまってしまった感じ。もっと意外性が欲しかった。
ただ、主人公の感じている閉塞感が、今の世相と同じですごく息苦しくて胸に迫った。ただ苦しかったという芳光のどうしようもない気持ちとすごくシンクロしてしまった。