紙の本
孤独にさいなまれていた青年の確かな成長の記録として読める痛快な一冊
2009/11/07 15:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年は1969年8月に開催された伝説の音楽祭ウッドストックからちょうど40年。先月(09年10月)NHK・BS2の番組「週刊ブックレビュー」で私の好きな翻訳家/エッセイストの青山南が本書を紹介していました。これを機会に名前くらいしか知らないウッドストックについて知ってみようという好奇心から頁を繰り始めました。
ですが、音楽祭についてはその準備の様子すらなかなか現れてきません。本書はあの音楽祭を地元ベセルに呼び込むことになったおんぼろモーテルの経営者エリオット・タイバーの、ユダヤ人でゲイという、60年代アメリカではなんともやるせない境遇にいたひとりの青年の半生記なのです。
訳者があとがきで心配していたように、ウッドストックに興味津々という音楽ファンには肩透かしをくらわせる内容であるかもしれません。あの時代の同性愛者の性への目覚めについて延々読まされる章もあります。その生々しい描写に、同性愛に知識も関心もない私は思わずたじろいでしまいました。
しかしどっこいこの本は、「仮面の告白」調のキワ物に終わることはありません。
周囲にも親にも理解されていないと途方に暮れる思いを抱えていた無名の青年が、あの巨大な音楽祭にかかわっていくことによって親子の絆、新しい人々との出会いと友情、自らの性愛に対する自信と誇りを少しずつ獲得していくという、ノンフィクションでありながら、素晴らしい一冊のビルディングス・ロマン(教養小説)として読むことができるのです。
やかまし屋で典型的なユダヤ教徒の母。恐妻家である身に諦念を抱いたかのような父。
最終章とエピローグで描かれるこの両親と著者との音楽祭後の変化を読むにしたがって、私の中に熱いものがこみあげてきました。
こんなに面白く心熱くなれる本だとは期待すらしていなかっただけに、読んで本当によかった、そう心から思えるなんとも素敵な一冊でした。
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内容(「BOOK」データベースより)
ユダヤ人でゲイでデブ…幼い頃から差別を受け、シニカルなユーモア精神だけを支えに生きてきた青年エリオット。ニューヨークでデザイナーとして成功し、セレブたちとゲイライフを楽しむも、稼いだ金は、さびれた町で破産寸前のモーテルを営む強欲な親に吸いとられるむなしい日々。そんな1969年の夏、「ウッドストック・フェスティバル」が開催地を探していることを知り、エリオットはモーテルの客寄せにちょうどいいと、コンサートをわが町に誘致する。プロデューサーのマイケル・ラングと共にやってきたのは、ありとあらゆる困難と、めくるめく奇跡の3日間だった。
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ウッドストックフェスティバルが開催されるまでの裏話。
うそ。こんなことがあったわけー?!爆笑。
昔見たドキュメンタリービデオをもう一回見なきゃ。
ラブ&ピース。
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ウィーク・デイはニューヨークで暮らし終末は田舎で両親の経営するつぶれかけのモーテルを手伝うひとりの男がウッドストック開催誘致を決意して……。
ウッドストックものとしてのドキュメンタリー的なおもしろさもさることながら、「ゲイ・デブ・ユダヤ人」である自分にコンプレックスを抱いていた作者があるがままの姿を受け入れ自然にそれを肯定できるようになるまでの成長物語として白眉。家族や友人の強烈にエキセントリックなキャラ造形も良い。
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タイチバーグ家は呪われているに違いない。
ニューヨークでのデザイナー生活はそれなりに順調だが
両親が思いつきで始めたホワイト・レイクのモーテル経営は最悪だし
ぼくはユダヤ人でしかもゲイだった。
ホワイト・レイクで商工会議所の会長に選ばれたぼくは
開催地を失ったウッドストック・フェスティバルを招くことに成功した。
それまで閑散としていた町には人が押しかけ
がらがらだったモーテルも軒並み満室状態、財政難は過ぎ去った。
やってきた大量のヒッピーや彼らがもたらすドラッグとセックスに対して
地元住民の反対の声は強く毎日のように脅されたが
ウッドストックの代表者であるラングが万事解決してくれた。
そして五十万人の観客と会場に来れなかった百万人を前に
ウッドストックの三日間が始まる!
装丁:永松大剛(BUFFALO.GYM) 装画:100%Orange
さびれた観光地をウッドストックで蘇らせた青年のノンフィクション。
当日の会場の熱気やアーティストの楽屋話が書いてあると思ってたけれど
内容は著者の生い立ちやウッドストック招致までの困難、
そしてウッドストックを通して自我の解放に成功する著者の経験談です。
フリーセックスとドラッグが中心なので
音楽話を読みたい人には期待はずれかも。
しかしすごいのはこれが全部実話ってことかな・・・
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ウッドストックの物語というより、エリオット・タイバーの青春期の話でした。ひょうたんからこま+たなからぼたもち的な物語でした。どん底の話から始まるので終わりには飛躍した感を受けます。あらゆる信条や嗜好が抑圧されずフリーになることがお金にもうけに変わるのか!?的な印象を受けました。
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呪われたタイチバーグ家の話でありウッドストックの裏話にもなっている。それにしても、お母さんの迫力は圧倒的。こんな人が親だというだけで人生半分終わっている。
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デブでゲイでユダヤ人のさえないエリオット両親の経営しているモーテはつぶれかけ。そんな彼が住民の反対で開催があやぶまれていたウッドストックを自分の町に誘致する。初めは1万から5万人の入場者を想定していたが50万のヒッピーたちの集まる一代ムーブメントとなる。それに伴う数々のドタバタ悲喜劇。ウッドストックは音楽の祭典としてだけでなく同性愛やドラッグの開放の場であったことが良くわかる。
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ひとりの男のウッドストックが開催されるまでの波乱万丈な人生の話なのでウッドストック本を期待すると肩透かしをくらう。しかし、物語として純粋に熱く、父親との絆は熱くなる
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2016.4.22
1969年ウッドストック舞台裏のゲイとかドラッグの面白エピソード満載。この時代のアメリカってとっても裕福だったんだろうなと思う。