紙の本
第一次及び第二次大戦の戦間期における国民国家の成立とその緊張・紛争について克明に解説した興味深い一冊です!
2020/10/01 10:46
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、中公文庫として刊行されている全30巻から構成された「世界の歴史」シリーズの一冊です。同書は、その第26巻目で、約600頁という大著ながら、非常に読みやすく、分かりやすいのが大きな特徴です。第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、欧米では国民国家が確立し、国家間の緊張と紛争が引き起こされます。アメリカの資本主義、ソ連の社会主義、ドイツのワイマール民主主義とナチズムを軸にこうした激動の移行期を検証した内容となっています。同書は、ドイツ近現代史を専門に研究されている木村靖二氏、バルカン近現代史に造詣の深い柴宜弘氏、それに20世紀のアメリカ社会経済史を研究されてきた長沼秀世氏といった方々による執筆となっています。専門的な視点から記述されているにも関わらず、分かり易く、読みやすい内容になっているので、ぜひ、多くの方々に読んでいただきたいと思います。
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この本は、世界大戦とそののちのことが書かれている本です。もし、世界大戦がなかったら今の技術や科学はどうなっているのかなって思いますね。
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第一次世界大戦に至る道から終戦までの激動。それまでの世界のヘゲモニー(イギリスなど)に対する新興のドイツの嫉妬(ノーベル賞を何人も出しているのになぜわれわれを認めないのか[p45])?+バルカン半島の複雑な民族問題(ロシア内部ではこれがソヴィエト成立への革命の原動力?)、ドイツの妄想の戦争イメージ(シュリーフェン計画[p53])、短期決戦[p47](戦争は経済的停滞であったから[p68])を想定していたが、それに反して長期の国をあげた総力戦体制による消耗戦(ヴェルダンやソンムなど[p58-60])になり社会の構造そのもの揺り動かした(その意味では不毛であるばかりではなかった?)。戦争継続をめぐるロシア内部の混乱はロマノフ朝を解体したりしたし[p122]、オーストリアはチェコスロバキアなどの独立を許すなど[p145]したし、ドイツでも終戦間際に水兵から革命の火がついた[p161]。
世界がはじめて経験した世界大戦のアフターマス(余波)。戦勝国でも敗戦国でも傷跡は深かった[p194]。米でも大量の復員兵が「アカ狩り」などの社会不安につながった[p222]し、英や仏なども多くの犠牲や経済的打撃は大きく、また敗戦国への認識の差[p205]から戦後処理で齟齬があるなどした。オーストリアは解体され小国になり、ドイツも賠償金の支払いなどの負担に加え世代間断裂[p257]などで社会不安が増し、そもそも戦勝国側からこしらえられたようなワイマール共和国は民衆と乖離していた[p268]。戦後の復興から好景気を経て世界恐慌に見舞われ、再び世界がそれぞれ緊張し始めると、イタリアのファシスト党やドイツのナチなど強力な指導体制があらわれ、やがて第二次世界大戦につながっていく。また、不安定で相対的にも後進であった東欧においても上からの権威主義体制という違いはあったが、全体主義的な指導体制がうまれていた。
大恐慌(1929年ごろ)がはじまり、国際協力から各国が一国主義的になりはじめると(アメリカのニューディールなど)、ドイツやイタリアなどでは経済的な行き詰まりなどで不安が広がり、ファシズムの形成を促した[p525]。戦争を避けたいイギリスやフランスなどの宥和政策も、戦争がしたくてしょうがないヒトラーの欲求不満になっただけで[p512]、開戦までの心の準備程度であった。この後世界は第二次世界大戦へ突入し、多大な犠牲を払いながら国際協力を模索し学ぶことになるだろう。
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第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、欧米では国民国家が確立し、国家間の緊張と紛争を引き起こした。アメリカの資本主義、ソ連の社会主義、ドイツのワイマール民主主義とナチズムを軸に激動の移行期を検証する。
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NDC209
目次
第1部 第一次世界大戦―激動期の始まり(予想外の戦争;大戦下の西欧社会;アメリカと第一次世界大戦 ほか)
第2部 宙吊りの世界―1920年代の欧米社会(講和と新体制の模索;戦後経済と国際政治体制;繁栄と混乱の1920年代アメリカ ほか)
第3部 国家の重み―1930年代(世界恐慌;ナチズム体制;ニューディール体制 ほか)