紙の本
その向こう側へ。
2011/01/29 22:44
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私立の女子中学に通う赤羽明音はある日、
モデルをやらないかと女性から声をかけられるが断る。
女性は服のオリジナルブランドを立ち上げるのだと言い、
名刺を明音の手に残していった。
家にも学校にも明音の居場所はなかった。
単身赴任を繰り返し、マイホームにめったに帰らない父。
夫と娘との心の隙間を埋めるために、
必死で童話の読み聞かせのボランティア活動をする母。
入学して数か月が過ぎても、
明音にはまだクラスメイトの半数以上の顔と名前が一致しない。
教室は、不安定で流動的な多くのグループが点在しているが
彼女はそのどれにも属することができない。
そんな現実を対岸のようにクールに見つめる明音は
自分をまるで「赤いろうそくと人魚」の人魚みたいだと思っている。
異世界に連れてこられて人間たちを諦観している人魚みたいだ、と。
人魚が水を得るのは、一本の深夜アニメの世界。
ロシア革命時の貴族の少年たちが繰り広げる理想郷への夢だった。
彼らに近づきたい、いや、彼らになりたい明音は
オンラインのコスプレ写真サイトへの投稿を思いつく。
しかし、ピンポイントすぎるマニアックな衣装は
どこにも売っていないし、
不器用な明音にはつくることもできない。
そして、思い出したのは名刺をくれた女性。
デザインや縫製共にひとりでやっているという
あの女性にコスチュームの依頼はできないだろうか・・・・・・。
アニメのキャラクター以外のすべてに距離を置き、
徹底的に突き放した人魚の目線を持つ明音のクールさは
半端じゃないものがある。
幼い日に周りに失望してから彼女自身が編み出した、
自分は人魚だという悲しい設定。
アニメのコスチュームはまさしく固い鎧のようなものだろう。
しかし現実は明音をいつまでも傍観者にはしておかない。
誰かと関わらなければこのお話は始まらないのだし。
向こう側に行かなければ。
明音は、人と関わり傷つけられるリスクを厭うが、
ほんとうにこわいのは、安易なほうに流されて
悩んでいる自分を見失ってしまうことではないだろうか。
半分くらい読んだところでは
希望はいつ見えてくるのかと息が詰まりそうになった。が、
明音はつまづきながらも、他者とのつながりに目覚めていく。
彼女が人とつながることで得る痛みと感動がていねいに描かれている。
後半は、かなり早いペースで収束へと向かう。
目まぐるしくストーリーが動いていくが、
爽やかな読後感を残すギフトが用意されている。
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ヤングアダルトに新しい形態の小説が出た!という噂を耳にし、これは仕事上目を通しておかねばと、またまた義務感からページをめくりましたが・・・これは正解!
現代っぽい要素を多く取り入れて、現代のヤングアダルトの心情と思われるものをうまく表現しているイマドキな小説ですが、生きにくい現代の社会(それが学校という小さな社会であっても)を前向きに生き抜く、元気をくれる物語だと思いました。
著者がもと同業者ということもあり、おはなし会の状況が妙にリアルだったのが個人的には面白かったです。
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一風かわった設定がおもしろい。
主人公はロシアアニメのコスプレ好き少女。
思春期の女の子のあまずっぱいかんじ。デビュー作。
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「ねえねえ、あなた、モデルやらない?」-自分を変えたいと思いながらも、周囲に対して無関心な毎日を送る中学生の明音は、ある日怪しい女の人に声をかけられた。大好きな深夜アニメに登場するロシアの少年の衣裳・・・あんな服が着られるのなら、とモデルを引き受けた明音の日々が、動き始める。
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<内容>講談社児童文学新人賞受賞の鮮烈デビュー作〈br〉コスプレ衣装に憧れ、懸命に自分の居場所をみつけようとする中学生の明音。彼女の学校での友人、学外での出会いを通じて、心の揺らぎを活写したYA小説。
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第49回講談社児童文学新人賞受賞作
コスプレの話とか感情移入全くできずなんてつまんねーんだって思ったけど後半は綺麗にまとまってました
クラスのグループをフルーツバスケットと表したり、表現がとても綺麗だし、人物の描写もうまいのにメインがコスプレだったのがなんか残念でした
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クラスのグループ関係の事、アルバイトの事、洋服の事、芸能界を夢見る事、お酒に興味が出てくる事、自分の身体の変化の事など。誰もが一度はそう言う悩みにブチ当たった事があるであろう、中学生の揺れるココロをガッチリと捉えた感の作品。
ええと。マルセイバターサンド、あれは旨いよね。幅広い年齢から支持を受けてるもんね。
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現役図書館員の作品。主人公の母が図書館のボランティアとして読み聞かせしているのが、「めっきらもっきら」というところがやはり図書館員。
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バターサンドって、マルセイバターサンドのことだったのかぁ。
サンドイッチでバターのやつ……だとばかり思ってました。
悪くはないだろうけど、なんか挟んだほうがよくないかい? なんて勝手に思ったりして。
バターサンド、私も大好き。
北海道に行ったら必ず買って帰るし、北海道物産展でも必ず買います。
10個入り買って、10個全部自分で食べる!!!
すぐなくなる!!!
……って、全然本の感想ではないですね。
主人公の気持ち、わかるようなわからないような。
智美さんの服を作ってネットで売るっていうの、うらやましい。
私も縫ったりするだけじゃなくて
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自意識過剰で痛々しい時期。性を超越し、選ばれた存在になりたい。他人とは相容れない、理解するなど到底無理。
そんな青春を過ごした人には古いアルバムを無理にみせられる感じがするかも。それほど上手い。しかし、痛い気持ちは始めだけで、デザイナーとのであいからどんどん話に引き込まれていく。
自分を殺さず、しかし客観的に見つめ、成長していくことの難しさ。周りとの輪が縮まることの嬉しさ、煩わしさ。
常に矛盾しているこの時期の心の動きがテンポよく 書かれていて、とてもよかった。
トガッてるあの子にすすめてみようかな?
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他人との距離の取り方が良くわからない中学生の赤音。深夜のアニメでみたロシアの少年に自分を投影させ、「自分は、ちょっと違うのだ」とクラスメイトを少し上から見下ろしている。そんなつもりは無いし、上手く人付き合いできない自分の不器用さも認識しているのだけど、そんな自分の方が上等だと思っている。そういう、思春期独特の青さが可愛い。 ありがちな話ではあるけれど、面白かった。
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学校では本音で話せる友達がいないミメイ(仮名)こと明音。
深夜アニメの主人公に憧れ、胸にはさらしを巻き、コスプレに憧れていた。
そんな時、本屋でモデルにならないかと言われる。
怪しいから無視したけど、好きな服を作ってあげると言われ、コスプレの衣装を作ってもらう約束で引き受ける。
その人のブランドのお手伝いをするうちに、自分の環境が変わりはじめた。
念願だったコスプレもでき、新しい友達もできたけど、何かが違う…。
大人との関係、友達との関係、社会との関係。
中学生の悩みがギュッと詰まっている話だった。
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アニメのコスプレ、モデル、などいかにも今風の題材を盛り込み、感受性が鋭く不器用でうまく立ち回れない女の子の不安定な感じをうまく表現していると思います。が、このようなテーマはどうしても既視感があって新鮮味に欠けるような…。
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あっち系の人の話(ただし、モデルができるくらいきれいな)、というだけで、世界にあまり溶け込めない。それから、この子が何を大事にしているのかよくわからない(そのロシアの世界以外は)。なにを伝えたかったのだろうと思うとますますわからない。
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ひととの距離だったり、「自分」のあらわしかただったり、成長による変化だったりを悩む姿がよくわかって、だからなのか、最初はとっつきにくいなーとおもった。けれども、なんかいい進み方だった。そして、あとがきもよかった。読むことも書くこともたしかにひとりじゃないんだよねぇ。