紙の本
ドストエフスキーの小説よりはるかにすごい迫力、最後まで読み切らずにはいられない
2009/11/25 00:19
33人中、31人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
白熱のノンフィクション、これほどすごい内容のノンフィクションは滅多にない。これほど興奮しながら読んだ本もあまりない。
獄中の元ヤクザの死刑囚が告発した「上申書」、これがついに警察を動かし、警察の執念の捜査によって、のうのうと市民生活を送っていた"先生"とよばれる真の凶悪を追い詰め、逮捕起訴し、判決が下されるまでのストーリーが、この文庫版で完結した。単行本では未完に終わっていたストーリーが文庫版で完結したのだ。
そしてこの獄中の凶悪犯の告白を聴きとり、徹底的な裏付け取材を行った上で雑誌記事にし、警察を動かしたのは、「新潮45」という月刊誌の編集記者・宮本太一氏(現在編集長)であった。雑誌メディアの底力を天下に示した力作である。
「事実は小説より奇なり」、などというと陳腐に響くかもしれないが、このノンフィクションはドストエフスキーの小説よりはるかにすごい迫力をもっている。
それは事実のもつ重み、探り当てた真実の重みであろう。文庫版ではじめて読んだ私は、この事実のもつ迫力に圧倒され続けた。
自ら手を下さすに人を殺させ、人の死をカネに換えてきた錬金術師、"先生"。この存在には、何か得たいの知れない、人間悪の化身のようなものを感じる。
しかしそれはサイコキラーではない、快楽殺人でもない、なにかしら人間として底が抜けているというか、人間としてのタガの外れた知能犯としての姿を見いだすのである。この男はいったい何者なのだ、と。
しかし、事件はすべて解決されたわけではない・・・
とにかく、結末などいっさい知ることなく、最初のページから読んでみるべきだ。
間違いなく、最後まで読み切らずにはいられない本なのだ。
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丹念な調査報道の記録。実際に警察も動き、告発された不動産プローカーが無期懲役の判決を受けたことは数年前にニュースにもなった。
佐藤優氏による「解説」を読み購入した。
興味深い内容だった。
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拘置所にいる死刑囚から、他の死刑囚からまだ人に知られていない連続殺人事件がありその首謀者はまだ捕まっていないという情報がもたらされる。果たしてその話が本当なのか、自分の判決を引き延ばすためのガセなのか、疑問を抱きつつ記者は面会に行く。
少なくとも他に3件の殺人を行い、そのすべて警察は把握していない。死刑囚後藤からもたらされた驚愕の情報を元に取材を進める記者。徐々に明らかになってくる事実。やがてその情報を警察に上申するが、果たして警察はこれに答え真の悪を裁くことが出来るか。
小説とは異なりこれが現実だからなのか、圧倒的な迫力を持って迫ってくる。細かい情報を突き合わせ次の事実を探り当てる。この細かい作業の飽くなき繰り返しが真実に迫る。
この本の内容が驚きの内容であることもさることながら、取材を進める記者の後ろ姿に惹かれる本でもある。現在のマスコミの報道姿勢に疑問しか持てなかったが、今一度マスコミを見直してもいいかもしれない。
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死刑が確実視される元暴力団組長が、警察にも把握されていない余罪3件を告白。いずれの事件にも「先生」と呼ばれる不動産ブローカーが関わり、身寄りのない資産家や、多重債務者を殺し、土地、保険金をだまし取る。自らも犯行に荷担し、囚われの身となった元組長は、これらの犯行を主導しておきながら、のうのう暮らす「先生」を、復讐の一念から告発する。囚人の執念と、告発を信じ、綿密な取材を重ねた記者の渾身のノンフィクション。読み応え十分。
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記者の徹底的な取材から徐々に犯罪が自白の下にさらされる様子は、まるでサスペンス小説を読んでいるかのようでした。
この告発がなければどの犯罪も警察に認知されること無く、首謀者も恐ろしい素顔を隠したまま社会で生活していたわけで、そう考えると恐ろしいです。
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<>こんなにハラハラするノンフィクション読んだことがない。内容はかなり恐ろしい。まさに「凶悪」。ここまでやりとげたジャーナリストに心から拍手を。
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上申書を出して告白した死刑囚が、善人に思えてくるけど、最後の殺人の状況告白で、ああ、凶悪犯だったんだと思い出す。
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元ヤクザの死刑囚からの告発から始まる驚愕の未解決殺人事件の数々。
全ての事件にはある男が関わっていた・・・。
これが実話とは・・・。
小説よりも恐ろしい。
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積読状態だった本を昨日の夜に手に取った。1章だけ読んで寝ようかな、と思っていたがそのまま一気に読み進めてしまった。
とある死刑囚が語る更なる殺人、そしてそれに関わるキーポイントとなる人物『先生』。これは作り話ではない、紛れも無い実話である。だからこそ読み手を離さない。まさに「事実は小説より奇なり」。本当にこんなことがあるのかと身震いし、時にはその残酷さに涙が出るほどであった。日々ネットを利用してニュースを見れば「殺人事件」の項目は毎日のように連なっており、「あぁ、また殺人か。」ぐらいの客観的で、自分には関係の無い話であるという様な意識でしかない。しかしながらその一つ一つを丁寧に読み込めば、そこには当事者たちの物語がこんなにも隠れているのか、とまるで作り話の小説やドラマを見るかのように入り込んでしまった。しかしながらこれは作り話ではないのだ。日々飛び交っているニュースの中にあった一つの事件の全容なのである。
著者の綿密な取材が手に取る様に分かり、その足で3県を飛び交う姿が目に浮かぶ。彼の書き手としての編集者としての魂を感じた作品。一言では言い表すことの出来ないものが読了後に残った。
“先生”が裁かれることになる『カーテン屋保険金殺人事件』の全容には思わず涙が出た。人間とはこんなにも無情になれるものなのだろうか。「生きること」や「幸せ」…。本当にそんな言葉を考えざるを得なかった。人間の闇を食う鬼は現在も私たちと共に、隣にいるやもしれない。
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竹谷さん所有
→11/01/30 高橋(葉)さんレンタル
→11/08/21 返却(浦野預り)
→11/10/09 返却(本の会以外の場にて)
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このドキュメンタリーが、実際に起こった詐欺・殺人事件の真相を暴いたのみならず、真犯人の逮捕にまでつながったことを考えると、それだけでも高い評価をされるべきものかと思います。
読み物としてのおもしろさはあまりないですが、淡々と事実を積み重ねていくことで真相に迫っていく様子は、ドキュメンタリーならではの緊迫感があります。
こういう闇に葬られた事件は、ほかにもたくさんあるのではと思うと怖いものがあります。
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事実は小説より奇なり・・・・
元ヤクザの死刑囚からの警察も把握していない余罪3件を告白。
「先生」と呼ばれる不動産ブローカーが関わっているとの告発。
最後の方に元ヤクザの顔写真が載ってて背筋がゾクゾクっとした。
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2011年3月購入で積読だったが映画化ということで読む。
なぜ積読だったか今となっては不明。
気持ちのいい内容ではないが、信じてよいのか迷いながら始まり
調査・取材を経て、突き止めようと動く物語に引き込まれる。
裁判結果が一応でて、筆者の強い主観が働いている
という疑念が薄まっているから安心かも。
手を汚すことなく人の命を簡単に奪う(金にかえる)計画を
立てることができるできる人間、
手を汚して人の命を簡単に奪うことができる人間、
そして命を簡単に奪われてしまうような状況に陥った人間、
最悪なトライアングルができあがり"凶悪"ができあがったのだが
何が気持ち悪いかって経済、欲、孤立で醜悪最悪の形に
作り上げられる弱肉強食。
死刑囚を殺人事件で裁判、カーテン屋、死刑囚の顔
すべて記憶にあった(よみがえった)が、
ひとつに繋がっているとは知らなかった。
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「消された一家」,「でっちあげ」に続いて実際にあった事件の本としては三冊目である。
「消された一家」は人間はここまで非道になれるのか,「でっち上げ」は名誉を回復することの難しさなど,それぞれに衝撃的な事件であった。
そしてこの「凶悪」は,世の中にはたくさんの未発覚の凶悪事件が埋もれており,犯人は平然と私たちの隣で社会生活を送っているということを実感させ,そこはかとなく薄ら寒くなる読後感をもたらしてくれる。
獄内の死刑囚が告白した未発覚の事件――。その告白に基き,雑誌編集記者が三件の殺人事件を告白に基いて追跡調査し,警察への上申書にまでつなげ,その主犯格の不動産屋を追い込むまでが書かれている。
文章も全体のボリュームも雑誌記事調とでもいうのだろうか,少し重すぎるような印象はあるが,全体の内容・展開は相応の読み応えを与えてくれる。
北海道の食肉業者の偽装事件が度重なる内部告白があったにもかかわらず,マスコミも公的機関もこれを黙殺して何年も不正が継続された事件があった。この時に「社会正義」を求めずに事なかれに走るマスコミや公的機関に強い不信感を感じたが,この記者は少なくとも記者魂を持っていてくれた。
昨今のマスコミは自身が巨大な権力機構化し,自身の私利私欲や既得権益の保存マシーン化しているように感じられる。しかし,社会のアングラ部分を這いずり回りながらもどこかで社会正義を標榜している――そういう市井の記者たちの正義感により支えられているマスコミの姿を維持してほしいものだ。
さて,事件は引きずり出され,蒸し返された。しかしそれでも取り上げられたのは3件のうちの1件だけだ。
2件は被害者の特定や遺体がさいごどうなったのかもわからないままである。身寄りなく死んでいく人の命を巧みに金に変える錬金術――そうしたことが私たちが普通に生きているこの社会で,今,同時並行的に平然とおきているということは,頭ではわかっていても,実感すると薄ら寒くなるのである。
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とてつもなく、衝撃的な内容。
事件報道もされたので、記憶に残っている方もいるのでは?
監獄の内部から、新たな事件の告白をするとは、
普通の考えからしたら、ありえない。
でも、そこにはある確執があって……
それがなんなのかを知ろうとするだけで、
ぐいぐいページが進んでいくのは久しぶりの感覚だった。
また取材者の一人称語りで進んでいくが、
当初疑問を抱いていたのに、どんどん確信に至る、
その興奮ぶりに、こちらも興奮させられた。