第四の書 ガルガンチュアとパンタグリュエル4 みんなのレビュー
- フランソワ・ラブレー, 宮下志朗
- 税込価格:1,815円(16pt)
- 出版社:筑摩書房
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飲もうじゃないの!
2012/03/04 20:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
「第三の書」でパニュルジェの結婚を占うために、聖なる酒びんのお告げを求めて航海に出ることになったパンタグリュエル御一行様。大西洋を北へ回り込んで北インドを目指すとはどういう航路なのか。コロンブスの航路を辿ろうとしたのかもしれないが、この時分にその正確な意味はどれほど伝わっていたろう。とはいえ最新の知見をどかすか詰め込む意欲は面白い。とにかく一行はインドにもアメリカ大陸にも着かず、行き当たりばったりにさまざまな諸島で奇妙な人種に出会う。
それってガリバー旅行記な話かというと、風刺というよりは罵倒で、スラップスティックで、そして下品だ。船団が大嵐に襲われると、当然とはいえ船上では難破を防ぐために総員必死となるが、ここでもパニュルジェが情けない狂言回しを演じて、泣くは叫ぶは御託は並べるはでちっとも働かないのはむしろいさぎよいというか天晴れなほど。命が助かるために足掻くことより屁理屈を並べる方を優先するわけだ。論理的なようで合理的ではない。論理のようでいて実はエモーションが優っているということなのか。それは実は中世的ということなのか、ルネサンスの息吹きなのか僕の教養では判じ難いが、いずれにしろ徹底して笑いのめされてしまう。
またある島で出会う種族が、原始共産制の究極のような家族制度を持つのは文化人類学の萌芽だろうか。訳注に示唆されているように、それもアメリカ大陸発見の衝撃かもしれない。鯨を仕留めたり、大巨人のいる島に訪れたり、巨大な飛行ブタなど、世界の驚異は次々と登場。技能師範の島では、人民を守るためという口実での兵器開発競争によって、最後には世界を破滅させる最終兵器が生まれることを示唆している。
ラブレーという人の作品としてはこの「第四の書」までの4冊でおしまい。序文で以後78作まであるとうそぶいていて、どこまで本気かは分からないが晩年にして続きを書く気満々ではあったろう。このスチャラカ騒ぎもまだまだ続けるつもりでいて、パニュルジェどころかパンタグリュエル自身の結婚問題も残っていたというのに、それもいずれ解決するはずだったのだろう。哲学的な疑問の数多くを棚ざらしにしたまま飲んだり食べたりを繰り返し、また飲んだり食べたりの蘊蓄を滔々と語り、恐ろしげな種族を目の前にして、「飲もうじゃないの」と叫ぶパニュルジェ。え、これで
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