紙の本
著者の学問領域の広さと深さと見識に驚嘆
2010/02/06 22:07
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞の書評では、随筆・エッセイとあったが、小論文集といった内容である。編纂者の解題には、「本書は、『井筒俊彦著作集』(中央公論社刊)未収の論文、エッセイ、書評、追悼文、推薦文など七十編を収録している。」とある。文量にして前半分にあたる、第1章がイスラム哲学・思想・文化についての、第2章が言語学の、第3章が哲学に関する、小論文集である。第4章から第7章と付録までの書評、追悼文、推薦文、回想なども内容はエッセイというより論文とあまり変わらないように思われる。
これらを読むと今さらながら「井筒俊彦は智の巨人である」と実感させられる。
以前から一般向けのその著作の二、三は読んではいる。が、昨今の世界情勢からイスラムについて大きな誤解をしないために、ある程度の知識を得ておく必要がある。そして日本人のイスラム学者の解説を読むのが、手ごろである。この本の著者である井筒俊彦は日本のイスラム哲学・思想・文化研究の第一人者である。ということで、この本も読んでみた。
著者の学問領域の広さと深さと見識に驚嘆した。イスラム哲学・思想・文化の研究だけではなく、哲学や思想については西洋哲学、仏教哲学、インド哲学、中国哲学、さらに中近東の古代言語を含む言語学や詩まで研究している。各分野ともその実績は相当なものであるようだ。素人でもこの本を読んでそのことが実感できる。井筒俊彦の著作は更に読むべきであると感じた。そうは言っても、以前読んだ「意識の形而上学東洋哲学覚書 『大乗起信論』の哲学」がほとんど解らなかったように、本格的な論考を読むのは難しいだろう。それで、この本のような小論文を読んでいきたいと思う。この本を読んだ感想から、それだけでもイスラム哲学・思想・文化について、かなりの知識と理解が得られる、と思う。
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いやぁ、面白かった。
初めて井筒俊彦の本を読んだのは、中学校卒業したばかりの頃、『意識と本質』で、さっぱりでしたね。以来、全く読んでいなかったんですけど、中世哲学をやるようになって、アラビア哲学を学ぶ必要から、井筒俊彦全集読みました。読解力って、伸びるもんだなぁ、って思いましたね。あんなにわかんなかったのに、どんどん読めるようになってる、って自分で驚いた事をよく覚えております。
しかし、語学、凄いですね。一体何ヶ国語出来るんだか。
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日本史上最高峰の天才はやはり違うなあ。メモ→ https://twitter.com/lumciningnbdurw/status/1345486455708110848?s=21
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著者、井筒俊彦さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
---引用開始
井筒 俊彦(いづつ としひこ、1914年(大正3年)5月4日 - 1993年(平成5年)1月7日)は、日本の言語学者、イスラーム学者、東洋思想研究者、神秘主義哲学者。慶應義塾大学名誉教授。文学博士、エラノス会議メンバー、日本学士院会員。語学の天才と称され、大部分の著作が英文で書かれていることもあり、日本国内でよりも、欧米において高く評価されている。
アラビア語、ペルシャ語、サンスクリット語、パーリ語、ロシア語、ギリシャ語等の30以上の言語を流暢に操り、日本で最初の『コーラン』の原典訳を刊行し、ギリシア哲学、ギリシャ神秘主義と言語学の研究に取り組み、イスラムスーフィズム、ヒンドゥー教の不二一元論、大乗仏教(特に禅)、および哲学道教の形而上学と哲学的知恵、後期には仏教思想・老荘思想・朱子学などを視野に収め、禅、密教、ヒンドゥー教、道教、儒教、ギリシア哲学、ユダヤ教、スコラ哲学などを横断する独自の東洋哲学の構築を試みた。
---引用終了
と、すごい方です。
亡くなられたのは、78歳の時です。
で、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
初期のイスラーム研究、世界の言語、生い立ちや豊かな交流関係について綴った1939〜1990年までの著作集未収録エッセイ70篇を収録。井筒俊彦入門に最適の一冊。
---引用終了
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井筒俊彦ってエッセイもあったのか~くらいの軽い気持ちで買ったけど、中身はほとんど学術的な話、特に付録の言語学部分は門外漢にはとてもついていけないような高度な話に終始しているのでかなりカロリーの高い本だった(しかも付録含めて700ページ以上ある)。中身は論文や講演、手紙、推薦文やちょっとした寄稿の寄せ集め。
エッセイと言えなくもない部分も最近の学会や研究報告といった感じで、エッセイ的な生活感はあまりない。というか、俗世間のことは興味ないんだろうな、という感じがありありで好感度が高い。戦争体験のことすらほぼ触れないのはこの年代の方の書き物にしてはかなり珍しいのではないか(ほかの著書で書いているのかもしれないけど)。たまにアジアを導く日本の責任みたいなことが書いてあって時代を感じるくらい。それすら、イスラムや東洋思想研究の意義として持ち出してくるだけの話なのだから。
高野山の講演の書き起こしらしい「言語哲学としての真言」が特に面白かった。ソシュール、荘子やイスラームの文字神秘主義など自在に渡り歩きながら、そこに通底する言葉の存在論を浮かび上がらせる鮮やかさには本当に脱帽する。このマクロからミクロへズームも自由自在、それでいて独自の焦点を失わない思考と見識の深さは到底常人のものではありえない。まさに天才だ。学生時代は井筒氏訳のクルアーンや著作を読んでいたから、なんだか懐かしく、そして改めてそのすさまじさを感じる読書になった。
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「みすず」読書アンケート(1980 - 1981)
「読む」と「書く」
井筒俊彦全集 第7巻
https://yasu-san.hatenadiary.org/entry/20110107/1295735469