紙の本
著者の代表作になろう
2010/01/11 16:04
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の代表作である「利己的な遺伝子」を、私は読んではいない。しかし、本書はそれにとって代わるものとなるのではなかろうか。すばらしい本である。
著者は巧みな比喩や類推等を駆使して、科学的真理を素人に理解し易く明快に解説している。地質学、分子遺伝学、進化発生学、分岐系統学、育種学、生物地理学をはじめとする物理学や宇宙論までも含む、あらゆる学問分野の知見を使って、進化が事実であるという状況証拠を積み上げていく。まさしく網羅的、全体的、総合的、系統的に生物進化の事実が解き明かされている。化石などは今や些細な証拠の一つにしかすぎない。グッピーや大腸菌における進化実験には驚いた。進化論も量子論や相対性理論のように、人間の感覚器官では直接確認できなくとも、観察や実験によって証明できる理論までに到達しているのである。
それでも、ドーキンスに言わせれば、新科学者は犯罪現場に遅れてやって来た探偵のようなものであり、進化という過去の犯罪現場を直接に視ることができなくとも、状況証拠から何が起こったかは確信を持って推定できる、という言い方になる。謙虚なことだ。
なにしろ、これだけの状況証拠というより事実を提示されても、一神教の創世記を信じている人達は、進化論は生物学者による妄想、捏造であるとして、ホントの証拠を提示しろと、ドーキンスに迫るのだという。先入観があると見ても視えないものである。
紙の本
「サルからヒトへ」は、真か偽か。
2010/05/12 21:59
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
確か今でもアメリカの公立学校ではダーウィンの進化論は禁忌になっているところが多いはず。要するにサルからヒトへ進化したのではなく、神(創造主)がヒトを創造したというキリスト教が土台のインテリジェントデザインが強固に支持されているからなのだそうだ。
「コウモリの飛ぶことができる翼と、ヒトのものをつかむ手は「相同」なのである。共通祖先の手-および骨格の残りの部分-が取り上げられて、異なった子孫の系譜に沿って、部分ごとに、異なった方向に異なった程度だけ、引っ張るかあるいは押し縮められてできたものだ」
肩甲骨は翼の名残。は文学的な表現かも。尾てい骨はシッポの名残。は、そうだと思うが。インテリジェントデザイン派から見たら「相同」なんて、とんでも理論なのだろう。
「生物学者は、「島(island)」という単語を、水に囲まれた小さな陸塊に限らず、それ以外のものを指すのに使うことがよくある。淡水魚の視点からすれば、湖は一つの島である。生息不能な陸地に取り囲まれた生息可能な水の島なのだ」
ヨーロッパへ行って世界地図を見ると、日本は文字通りFarEast(極東)であることを実感する。にしても、なぜ、大陸じゃなくて「島(island)」に惹かれるのだろう。
「進化は一つの生体の形を取り上げ、別の形になるように誘導することでは、けっして起こらない。あらゆる生体は胚として成長することを思い出してほしい。自然淘汰によって選ばれた突然変異は、体のある部分の成長速度を他の部分と相対的に変えることによって、発生中の胚にはたらきかける」
ううむ。100パーわかるわけではないが、いいものだけが残るとか単純な自然淘汰説ではないってことなのだろうか。
「遺伝子データベースは、過去の環境、祖先が生き残り、そうすることを助けた遺伝子を伝えていった環境についての情報の貯蔵庫となる。-略-この情報の貯蔵庫は、いついかなる瞬間にも、個々の生物の体内に収まっているのだが、長期的にみれば、有性生殖がおこなわれ、DNAが体から体に移るときにシャッフルされるところでは、生き残りのための指示に関するデータベースは、種の遺伝子プールということになるだろう」
「種の遺伝子プール」―作者のこういう修辞にめちゃくちゃ弱い。
「私たちが存在するという事実そのものが、ほとんど耐えがたいほど驚くべきことである。私たちが自分に多少ともよく似た動物の豊かな生態系に取り囲まれ、私たちが究極的に栄養を依存している自分たちにあまり似ていない植物に取り囲まれ、さらに、私たちの遠い祖先に似た、そして私たちが終わりの時を迎えたときに朽ち果てて還るべき細菌に取り囲まれているという事実もまたそうである」
生物学と哲学と宗教(縁起とか)に、跨る深淵な言説。なのに、なぜか『もやしもん』と『風の谷のナウシカ』に出てくる腐海と南方曼荼羅を同時に思い浮かべる。
あ、そうか、そうかの連続。柔らかな発想には、毎度毎度頭が下がる。そのひねくれ具合は音楽にたとえるならXTCか。
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今年はダーウィン生誕200年,「種の起源」発表から150年らしい。
地球の歴史の中で生物が「進化」を理解してから150年しか経っていない。
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もはや古典といってもいい『利己的な遺伝子』の著者が、地球上で生物の進化が起きたことをいくつもの証拠を挙げて論証しています。冒頭のカラーの口絵が美しく、この部分を見るだけでも手に取る価値があるかもしれません。
『神は妄想である』でもそうでしたが、本書も著者のライフワークとなりつつある宗教批判の書になっています。日本ではピンと来ませんが、本書によるとアメリカでは40%の人が進化によって人類を含む地球上の生物が生まれたということを信じておらず、進化論を教室で教えられることにもかたくなに反対するグループが少なからず存在しているらしいです(この辺りの数字は付録に詳しい)。
もちろん、進化(著者によるともう"論"ではなく"事実"らしい)を信じない輩はこんな本は絶対に読まないわけですが、そういう人たちに対してこの本を読むような人には理論武装をしてほしいというメッセージなのでしょう。
原題は"The Greatest Show On Earth - The Evidence for Evolution"。主タイトルは最後を締めくくる言葉でもあります。内容的にはサブタイトルでもある日本語タイトルの方がよく体を表しているかとは思います。
この原タイトルにも採用された締めの言葉を含む最後の章は、ダーウィンの『種の起源』を締めくくる一文に丸ごと捧げられています。力が入った印象深いよい章です。
「かくして、自然の戦いから、飢餓と死から、われわれの思い浮かべることができるもっとも崇高な事柄、すなわち高等動物の誕生が、直接に導かれるのである。生命が、最初はわずかな数の、あるいはたった一つの種類(フォーム)に、そのいくつもの力とともに、吹き込まれたのだという見方、そして、地球が不変の重力法則に従って周回しつづけるあいだに、かくも単純な発端から、はてしない、きわめて美しくきわめて驚くべき種類(フォーム)が進化してきたのであり、いまも進化しつつあるという、この生命観には壮大なものがある。」(『種の起源』)
このダーウィンの一文が意味するところはじっくりとドーキンスの解説を読んでもらいたい。手にすることができた科学的証拠が今よりも格段に少なかった時代において、ダーウィンの洞察の深さにきっと畏敬の念さえ覚えます。
日本にいて「創造説」を信じているなどというと変わり者扱いされかねない環境にいると、著者と同じ問題意識を共有してはおらず頻繁に見せる過度のファイティングポーズに違和感を感じますが、「進化」について改めて概観するによい書です。
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「神は妄想である」に比べて感情的な記述は見られず、冷静に進化の証拠を記述している。難解は点はあるが、よくまとめられている。
進化の証拠は化石だけでなく、生物の構造や比較生物学でも明らかであるという点は、化石ばかり取り上げる創造論者には無い視点だ。
またエントロピーの法則が進化を否定していると言われるが、太陽のエネルギーが供給されている点を見逃しており、水が蒸気となって山の上に上る例は納得させられる。
ノアの箱舟からすべての生物が出てきたということの問題点も納得。
しかし植物の受粉システムなどの驚くべき生物の構造やDNAについては、自然淘汰だけで本当に起こりえるのか今だ疑問だ。
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理論でしかない?
イヌ・ウシ・キャベツ
大進化にいたる歓楽の道
沈黙と悠久の時
私たちのすぐ目の前で
失われた環だって?「失われた」とはどういう意味なのか?
失われた人だって?もはや失われてなどいない
あなたはそれを九カ月でやりとげたのです
大陸という箱舟
類縁の系統樹
私たちのいたるところに記された歴史
軍拡競争と『進化的神義論』
この生命観には壮大なものがある
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「利己的な遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンスの本。進化論者でこれまでに多くの進化に関する著作を持つ彼だが、まだまだ世間からの理解を得られないらしい。(特に進化論の考えを発表した欧米での理解が進まない)
この本では「進化は論では無く、事実である」ということを様々な事例を挙げて、考察している。面白かったのは、人間は神が設計したものであって、進化してそうなったのではないと主張する創造論者に対し、生まれてから現在の大人になったあなた自身が進化の産物であると答えるくだり。創造論者は、それも神が設計したものと反論する。そして両者の議論は平行線を辿る。
日本人は進化論に寛容で、学校ではそれが当たり前のように教育されており、ドーキンスがこの本でクドいくらいに進化の証拠を主張するのか判りにくい。でも彼にとっては、創造論者へ理解してもらうことはライフワークに近いものがあるのだろう。
進化論は事実であると考えている人には、進化論と生物学のトリビアが満載のこの本はとても面白く読めると思う。
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畑違いの本も面白かった。 進化について色々初めて知った事が多くて勉強になった。 DNA的にみると、、、や、宗教に染まりこの現代でも進化論を信じない人が多く存在する、なんてすごくアイオープニングだった。
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リチャード・ドーキンスは読んでおきたい。長いからまだ全部読んでいない。利己的な遺伝子の方を先に読もうか。
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アメリカでは40%もの人が進化論を否定している、という驚きの事実。進化論は事実であるという証明をするために、様々な事例を挙げて論じられた本。たとえばキリンの声に関わる神経は、脳を出発して長い首をグーッと下り、折り返して口元に至る、という事実は確かに知性ある存在の仕事だとしたら、なんでそんなんにしちゃったの?と言いたくなり、少しづつ伸びる方に進化したと考える方が自然だと思う。などなど、難しいところは流しながら、ほほう!と思う点もたくさんありおもしろかった。
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「創造論」はとっていなくても、「インテリジェンスデザイン」、すなわち生物の機能、目や手足の機能などは効率的に最適化されるようデザインされているといった考えは漠然と支持していました。
例えば昆虫の擬態などは生存上有利なので戦略的に採用されているといった考えです。しかし、「進化論」をつきつめればそのような擬態もあくまで自然淘汰の観点から説明できるのだと改めて気づかされるきっかけとなった本で、人間とはなんなのかを考える一助となりました。
人はどこから来てどこへ行くのかを考える上では、哲学も面白いですが、本書や「銃・病原菌・鉄」などの本のほうが科学的で参考になります。
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ドーキンス、の名で読むと少々拍子抜けだが、創造論をいちいち潰していく文章がまたドーキンスらしく溌剌(笑)どうしても進化論をわかってもらいたいというあっつーい熱意が伝わるし、一般向けなのでややこしくもない。学校で教わった通りに進化論を受け入れている日本人は読んでおくべきだと思う。教科書に書いてあるからね、ハイハイ、じゃなくて、自分の頭で考えるべき。
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宗教に対する追撃はまだ手を緩めてなく、この本でも再三語られていますが、本業にしっかり内容の重心を移していて、進化論の現在到達地点を知るに格好の書です
科学者の仕事としてはもちろん素晴らしいし、またそれを抜きにしても何十億もの人を敵にまわしてまでも、誠実であろうとする氏の姿勢には激しい共感を覚えます
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凄い。進化論がいかに正しいか証明するための本。これを書かなければならないほど創造論がいかに根を張っているかということの証明でもあるな。
進化論が正しいという話だけでなく、なぜダーウィンの種の起源の初版に触れていたり、イヌみたいになったキツネの話とか、とにかく最初から最後まで飽きずに読める大著。
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とても良い。進化に関してしっかりとした認識を作ることができる。非常にこまかく、非常にくどく、そして非常に創造論者をこき下ろしていたとしても…