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オーウェル評論集 新装版 1 象を撃つ みんなのレビュー

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3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

不条理を見すえ、現実と格闘するヒューマニスト

2009/12/29 11:19

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 絞首刑のあと、死体の近くで酒を飲み笑いころげる。ロバの死骸が路傍で犬に食われるのを見て腹をたてるのに、薪を背負って運ぶ貧しい老婆には同情のかけらも感じない。白人である筆者を尊敬する黒人兵を見て「あといつまでこの人たちを欺いていられるのだろう」と考える。
 暴れ象を射殺したときは、貴重な財産である象を撃つ必要など感じないのに、「土民たち」の期待が高まり、支配者としての威信を保つため射殺する。後から苦力が象に殺されていたことを知って「これで象の射殺を正当化できる」とホッとする……。
 植民地で憲兵をつとめるオーウェルは植民地支配を不当だと思っている。でも彼の描くのは、死=厳粛、被支配者への共感、人種差別=悪……という「良心」の型におさまらない光景ばかりだ。非倫理的で不条理な光景や思考を正面から見すえることで、植民地では、支配者(白人)もまた「支配者」の役割を演じる滑稽な操り人形でしかないことが浮き彫りにされる。

 自らの主義や良心や立場によって、現実を見る目が曇ることをオーウェルは徹底的に戒める。だからファシストだけでなく、「味方」であるはずの左翼をも批判する。
 スペイン内戦を前にして左翼雑誌は当初、「戦争は地獄」と平和主義を説いたが、後に「戦争は栄光」とロマンチックな戦争を描きだした。主義や方針の転換によって「現実」の描き方は簡単に転換した。
 オーウェルは、悪臭と汚物とシラミにまみれた戦争の現実から説き起こし、「『正義』のためだろうとシラミはシラミだ」「反ファシスト派のほうが大筋では正しいが、いずれにせよ、党派的歴史であって細かい点は信用できない」と書く。
 書かれたものだけが「記憶」となる。だからこそ、政治的な抽象的な言葉ではなく、現場の不条理な現実を具体的に記録しようとしつづけた。

 地べたの現実を見つづける彼の立場から第二次大戦を見ると、ヒトラーに降伏するか戦うか二者択一の状況のなかで、「絶対的平和主義」などは茶番である。むしろ「進歩的になりすぎた左翼の腑抜けどもよりはましだ」と軍国主義者を評価する。軍国主義者は、忠誠を尽くす対象が社会主義に転換する可能性があるが、「革命のとき、ひるんで逃げ出すのは愛国心を感じなかった人間」だからだ。

 では、反ソ連の立場を明確にした社会主義者であるオーウェルにとっての「希望」はどこにあったのか?
 彼は「国際的プロレタリアート」という左翼のスローガンは「絵空事」と断じる。「大半の労働者は他国の虐殺よりサッカーのほうが関心がある」からだ。だが一方で、労働者だけが最後までファシズムとたたかいつづけるだろう、と期待を寄せる。植物は盲目で愚かだが、常に光の方に向かって伸びることだけは知っている。同様に労働者はひとえに人間らしい生活のためにたたかいつづける--と。
 彼は労働者の「物質主義」を「人間の運命や存在理由に悩むのは、苦役と搾取をなくした後である」と擁護する一方で、長いスパンで見たときは、「死後の生命に対する信仰=キリスト教」が消滅した後の穴を埋める「天国と地獄とは別の善悪の体系」をつくらなければ人間が文明を救うことはできないだろうとも書いている。
 格差や物質的貧困と同時に、「幸せ」の姿が見えなくなっている現代の日本を予見しているようだ。でもどんな混迷状態にあっても、「人間らしい生活」を求める意思は人類が生き残る限り存続するだろう。そこにこそ希望がある、とオーウェルが今生きていたならば語るのではないだろうか。

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2010/12/13 17:04

投稿元:ブクログ

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2019/11/04 17:52

投稿元:ブクログ

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