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惚れたが悪いか
満願
「ああ、うれしそうね。」と小声でそっと囁いた。
ふと顔をあげると、すぐ眼のまえの小道を、簡単服を着た清潔な姿が、さっさっと飛ぶようにして歩いていった。白いパラソルをくるくるっとまわした。
「けさ、おゆるしが出たのよ。」奥さんは、また、囁く。
『井伏鱒二選集』後記
これらの作品はすべて、私自身にとっても思い出の深い作品ばかりであり、いまその目次を一つ一つ書き写していたら、世にめずらしい宝石を一つ一つ置き並べるような気持がした。
猿面冠者
ほんとうは怒っていないの。だってあなたはわるくないし、いいえ、理窟はないんだ。ふっと好きなの。あああ。あなた、仕合せは外から?さようなら、坊ちゃん。もっと悪人におなり。
女の決闘
「尊敬しているからこそ甘えて失礼するのだ。」
私は若くて美しい。いや美しくはないけれど、でも、ひとりで生き抜こうとしている若い女性は、あんな下らない芸術家に恋々とぶら下り、私に半狂乱の決闘状など突きつける女よりは、きっと美しいに相違ない。
薄情なのは、世間の涙もろい人たちの間にかえって多いのであります。
「女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。」
破産
「浮気は男の働きと言いますものねえ。」
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太宰治氏の作品から著者が厳選したものを著者のタッチで書き変えた傑作集。太宰氏の作品は内省的なイメージがあって読んだことがなく、本書で選出されている作品も、原作を知らないものばかりだった。そのイメージが覆るくらい、本書の作品は読みやすかった。独特の視点で偏屈的な考え方を持つ登場人物が多いのだが、決して暗い気持ちにはならない。これも森見マジックにかかったのだろう。「カチカチ山」「畜犬談」「貧の意地」など、決して明るい話ではなく、後味も良くない。でも、どこか気になる。個人的には、「服装に就いて」と「女の決闘」が好き。
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森見さんが選んだ太宰治の傑作の数々です。
春休みの家族旅行中にお供にしていたのですが、面白くて、わーっと読めてしまいました。
あっ こんな太宰もいたんだ!って発見があります。『斜陽』とか『人間失格』とかの暗い話よりも、私はこの傑作選に入ってる話のほうが親しみやすいので好みです。「初めての太宰」に良いかもしれないです(´^ω^`)
『失敗園』『カチカチ山』『貨幣』『ロマネスク』『満願』『畜犬談』『親友交歓』『黄村先生言行録』などなど、大好きな話がたくさんできました。
なにより、森見さんの編集後記が良いです。このひと太宰大好きなんだろうなあ、と。
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太宰治は難しそうで苦手・・・。
でも森見さんは大好き!な私。
この本のおかげで太宰治の世界にちょっとだけ入ることができました。
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森見登美彦氏による太宰治傑作集。正直「走れメロス」ぐらいしか以前に読んだことあるのはなかったがいろんな作品があって面白かった。太宰治がほかの人母作品を紹介したものをさらに森見登美彦が紹介するといった「紹介の紹介」があったり面白い。
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太宰のオマージュ作品。作者も編集後記で言及しているように、この小説は太宰の作品の中から「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選別されたもの。太宰というと暗いイメージが強いが、この小説では所謂太宰らしい作品は掲載されていない。リズミカルな文章に堅実な構成。特に、これまで太宰を苦手としていた読者に固定観念は捨てて素直に楽しんで欲しい。
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森見さんの太宰さんに対する愛情が伝わってくる一冊。そして、ひとつひとつが本当に面白い。本当に。笑ってしまう。そしてとてもお腹いっぱいになる。読んでよかったと心底思う。巻末の解説も好きだ。
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モリミーのチョイス。笑
太宰は重たいのばかり有名だけど、面白可笑しくポップでへんてこな作品が好き♡なのでこのモリミーの選んだ作品集はどんぴしゃり!"紙幣"すき。
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わりと読んだことあるやつばかりだったけど、改めて読むと面白かった。ヘンテコで愉快なものを集めたというだけあって、面白いチョイスだ。
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森見登美彦さんの編集ということで読んでみました。太宰治さんはほんとにとっつきにくくて困る。
面白い作品とあんまり興味をひかれない作品が極端に分かれるなあと思った。失敗炎、カチカチ山、貨幣、令嬢アユみたいな初心者向けのは私でも面白く読めました。
入口ひろくどんどん上級者向けになっていくあたりがなんかすごく森見さんらしい。
猿面冠者なんかは、森見さんのあの作品はこれからインスピレーションを得たのかな?と思ったり。黄村先生も面白かった。ロマネスクは三つ目が面白かった。犬が好きなので畜犬談は太宰先生のあざとさを感じました。
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太宰作品の素晴らしさはもちろんのこと、森見さんがそれぞれの作品をひとつひとつ、大事にしていることで読者としてより愛着が湧いた。
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2012.11.05 読了
太宰って素晴らしいなと素直に思った。
このリズム感は天才の成せる技というかなんというか。
真似できない。
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太宰治には正直あまり興味がなかったのだけど…森見登美彦が関わっている本として興味を持って読んでみました。
私は太宰は「人間失格」と「走れメロス」くらいしか知らなくて、特に「人間失格」のイメージが強すぎてものすごく暗い鬱な話を書くイメージしかなかったので敬遠していました。
でも、この本に集められた作品はどこか滑稽な、愉快な、そして不思議な雰囲気の話が多くて、太宰ってこんなのも書いてるんだー!と目からウロコが落ちました。
森見登美彦が選んだ作品か、うん、納得!(笑)って感じでした。
大トリに「走れメロス」をもってくるあたりはやはり森見!(笑)
全部太宰の作品なんですけど、森見の作品を読んでいる気分になることも度々ありましたねー、やっぱり影響を受けているのかなぁ、と思いました。
これはちょっと…というのも正直いくつかあったけれど、面白い作品がいっぱいでした。
文庫だけど、私にとってはボリュームがあって読みごたえ抜群でした。
まぁ、なんといっても編者・森見登美彦の編集後記がとてもよかったですよね(笑)
だいぶ読み進んでから図書館で太宰の本がずらりと並んでいるところを見つけたのですが、その中に『正義と微笑』というものがあって、タイトルはここからとっているんだ~!!と感心しました。
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太宰治は暗くてジメジメしたイメージがあったが、こんなに面白おかしい話があったのか。
全く外に開けていない、閉じた中にめいいっぱい広がる妄想と想像がとても良い。
ロマネスクのトンチンカンな壮大さときたら素晴らしい。
好きな作家が紹介する話はやはりそれも面白い。
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太宰のアンソロジー色んな観点からたっくさん出てるけど、はじめての人に何か一冊、と言われたらこの本をあげたいなあ。愉快だから。
解説も笑っちゃた、佐渡とか。いいなあ。