着々と物語が積み上がっていく
2009/12/24 23:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回はカミラとダリアンのからみは無いけれど、代わりにジェシカという少女が準レギュラー候補として登場する。収録内容は以下の通り。
第一話「間隙の書」:寄宿女子学校に潜んだ殺人鬼の話。ジェシカが登場。
第二話「幻曲」:幻のヴァイオリン・ソナタの楽譜と、演奏者と楽器職人の物語。
第三話「連理の書」:理想の相手を見つけるという、雌雄一対の幻書。
断章一「催眠の書」:ヒューイらしき青年が登場。
第四話「調香師」:天才調香師と、彼女が作り出した香水に関する話。
断章二「屋敷要請の受難」:読姫や焚書官など幻書に関わる様々な人物が登場。
第五話「幻書泥棒」:城館に届けられた犯行予告と大量虐殺の関係。焚書官と銀の読姫が登場。
一話と三話は比較的テンションが高めの作品で、二話と四話はしっとりとした感じの作品。五話では読姫クラスに対抗できる幻書の使い手が登場する。全体のストーリー的な進展はあまり無いかも知れない。
物語の中核にあるのは、幻書という人に異能を授ける本だけれど、描き方としてはその本に振り回される人間の姿が中心となっている。だから、人間のドロッとした部分が重要なポイントになると思う。だが、短編の場合は分量に限りがあるから、ヒューイたちが関わるのは色々と紆余曲折を経た上での結果のみである場合が多く、少し物足りないなと感じる場合も時にはある。
この点と、ストーリー的な進展を促すために、このあたりで長編が刊行されれば良いなあ、と思う次第です。
投稿元:
レビューを見る
三雲さんの書く物語はとても引き込まれるので、大好き。
やっと出たよ~って待ち切れずに発売日に本屋直行しました。
投稿元:
レビューを見る
毎回いろいろな本が出てくるのが面白い。
あんまり好きじゃなかったけど、ハルとフランのコンビも面白くなってきた。
怪盗はこれからも活躍するのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
ヒューイ&ダリアンの4冊目。
今回は楽譜もあり!!幻の曲を弾けるのは彼女だけ。その曲には特殊な効果があって・・・
さらに香水の調合法を記した幻書も登場。
その他、本の中にモノを閉じ込められる幻書まで。なんでもあり。
最後は焚書官のお話もあり。
屋敷妖精のお話がなんともかわいかった。しかしそのワリにはヒューイの屋敷は散らかっているようだな・・・
投稿元:
レビューを見る
幻書泥棒を主人公として一冊お願いしたいですね。幻書を巡る群像劇になってきて最終的に上中下巻の長編で完結とかどうでしょう。
投稿元:
レビューを見る
屋敷妖精が住み着いてくれないかな。
屋敷じゃないからだめかな。
・・・まあ、その程度。
催眠の書ももう少し人畜無害であれば究極のニート
になれるのでいいのだが。
自宅警備員への道は険しいなぁ。。。
投稿元:
レビューを見る
「ザ・スニーカー」での連載6篇(断章2篇含む)と焚書官ハルが主人公の書き下ろしが1篇。
個人的には安心して読める一冊。この巻においては特に大きな動きは無いですが、ヒューイは自覚無くフラグを立ててますし、人在らざる身をわきまえつつも、やきもちを隠せないダリアンも可愛らしいです。身の危険と隣り合わせなのに、ある意味緊張感の無いヒューイとダリアンのやりとりも相変わらず。
大きく動くのか、このままのペースで進むのかは分かりませんが続刊も期待しています。
投稿元:
レビューを見る
第4巻を読破。
「間隙の書」は使い方次第では便利じゃないかな、と思った。
荷物かさ張らなくなるだろうし、布団の圧縮にも使えない? とか。
こんな風な幻書の有効活用できれば平和なのになあ。
そして、巻数を増すごとにヒューイの謎が増えていく――ような気が。
前回の巻でちょっと第三者的視点で語られたヒューイ像も、どっかとらえどころがなさそうな感じに見えたし。
はっ! 本の知識もかなりあるよね!!
合間に入っているショートストーリー2本もおもしろかった。
本編がアレな感じなので、屋敷妖精さんのお話はクスリとなりました。
あとヒューイの後輩、アルマンのお話も。
まったく懲りない男なのです(笑)
投稿元:
レビューを見る
読了。個人的には調香師が好きでした。調香師を扱った作品を読むのは2作目、1作目は内田康夫先生の「幻香」。香りというものを言葉にするのすごいと思う。
投稿元:
レビューを見る
“ダリアンは不愉快そうに顔をしかめて、
「この女は、生きたまま腹を裂かれて殺された、というのですか」
「ああ。彼女の死因に不自然なところは何もないよ。これは普通の人間の犯行だ」
ヒューイが素っ気なく説明する。それを聞いて憤慨の表情を浮かべたのはジェシカだった。
「普通の人間の犯行……!?これがまともな人間のやることだっていうの!?」
感情的になって詰め寄ってくるジェシカに、ヒューイは優しく微笑んで、どこか寂しげな口調でぼそりと告げた。
「犯人の精神状態がまともかどうかは僕には判断がつかないな。戦場では、これよりも悲惨な死体をいくつも見たよ」
ジェシカは一瞬、驚いたように動きを止め、
「……あなた、兵士なの?」
「まさか」
ヒューイは、軽く両腕を広げて微笑んだ。
ジェシカは無言で、彼の横顔を見つめた。いかにも育ちの良さそうな貴族風の青年が見せた思いがけない一面に、戸惑っている表情だった。
そんなジェシカの反応を、黒衣の少女が面白くなさそうに横目で睨み、
「普通ではないのは、死因以外のところなのです」
抑揚の乏しい声でそう言った。”[P.23]
「調香師」が一番良かった。挿絵の表情が素敵で泣きそう。
“「人を見た目で判断するから、そのような目に遭うのです」
アルマンは弱々しく肩を落とし、ひどく真剣な顔でぶつぶつと呟き始めた。
「ええ、ええ。そのとおりですよ。これからは慎ましやかで清楚な女性はやめにして、明るく活動的な女性を探すことにします。あと、そうだな、もう少し髪が長いほうが好みだな。ついでに胸も大きいほうが……」
そんなアルマンの様子を眺めて、ヒューイが呆れたように溜息をついた。
「あいつ、まったく懲りてないな」
ダリアンもやる気をなくしたように頷き、
「やつほどの大馬鹿は、どうやら死んでも治らないらしいのです」
「ああ、そうらしい」
ヒューイはそう言って愉快そうに笑った。そんな彼の横顔を見つめて、ダリアンは、不意に泣き出す寸前のような寂しげな微笑を浮かべた。
「死が二人を分つまで……ですか」
「え?」
「なんでもないのです」
ヒューイが振り返ったときには、ダリアンの儚げな微笑は幻のように消え去っていた。
彼女の艶やかな黒髪が、柔らかな月明かりに照らされてきらきらと輝いた。”[P.167]
投稿元:
レビューを見る
【収録作品】第一話 「間隙の書」/第二話 「幻曲」/第三話 「連理の書」/断章一 「催眠の書」/第四話 「調香師」/断章二 「屋敷妖精の受難」/第五話 「幻書泥棒」