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投稿者:S.I. - この投稿者のレビュー一覧を見る
他のネット書評では低い評価もある問題作。読み応えは十分で大東亜戦争へ突入する背景がそれなりに描かれている。事件当事者の遺族など遺された者たちへの取材もあり一読の価値あり。
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1979年に放送されたNHK-TVのドキュメンタリー「戒厳指令… 「交信ヲ傍受セヨ」 二・二六事件秘録」これを書籍化したものに、その後判明した更なる驚愕の事実を加えたニ・二六事件秘録。当時の盗聴が録音されていたことも驚きだったが、実は録音されないまでも電話の盗聴は事変前から行われていた。そもそも、事変そのものが「予測されていた」!生々しく事件の真相に近づく驚愕のノンフィクション。オンエアで衝撃を受けた事は今も記憶にある。しかし当時は二・二六事件のなんたるかもよく判ってなかった。カバーの226の刻印されたバックルが哀しい。
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深い…様々な人達の思惑があって、複雑かつドラマチック!とんでもない事件です!!幕末の次は昭和初期ブームと勝手に思う私。
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古びた二十枚の録音盤には昭和史最大の謎が隠されていた。
本書は二・二六事件を盗聴という視点から見直した本である。決起部隊の青年将校たちや、陸軍高官たちの電話は盗聴され、録音されていたのである。
久しぶりの重い本であるが読んでいてグイグイ引き込まれた。
この本はNHKの番組を基にしているが、番組が世に出る経過を読むと、いろいろな事を考えさせられた。
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2.26事件は皇道派と呼ばれる青年将校たちが、疲弊する農村、日本の状況に憤り、天皇親政、昭和維新を標榜して蹶起したクーデター。
しかしながら、鎮圧後の軍事法廷は外部から全く遮断された中で行われ、青年将校やそれを先導したとされる北一輝、西田税らは弁護人もつけられないまま結審、数日後に銃殺刑となったため、真相の細部は闇の中に葬られていた。
しかし、2.26の発生から鎮圧に至るまでに青年将校や軍関係者たちの電話のやり取りが密かに盗聴され、それを記録した録音盤20枚がNHKの倉庫の中に眠っていた。
一体誰がどういう目的で盗聴をしたのか、そしてその録音盤の中には、誰のどんな会話が残されているのか。
その後、太平洋戦争に至る日本の運命を決定づけたと言われる2.26事件。今も2月末になるとドラマや映画、ドキュメンタリーなどがテレビて放映されるし、これをテーマに取り上げた小説やノンフィクションも、多数出版され続けている。
本書は80年代にNHK特集で放送された内容をベースに、その後判明した新事実や、関係者への追加取材などをまとめ直したもの。
機会があれば番組自体も一度見てみたい。
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「私が最も頼みとする大臣達を悉く倒すとは、真綿で我が首を
締めるに等しい行為だ」
「陸軍が躊躇するなら、私自身が直接近衛師団を率いて叛乱
部隊の鎮圧に当たる」
昭和天皇を激怒させた、陸軍皇道派の青年将校らによる二・二六
事件が発生したのは1936年の2月26日である。
事件発生に大きな影響を与えたと言われる北一輝、事件の首謀者の
ひとりと目される安藤輝三、陸軍幹部らの電話交信を記録した録音
盤の内容を元に、事件の推移や背景を追ったのが本書である。
著者は発見された録音盤をきっかけとしてNHK特集「戒厳指令
『交信ヲ傍受セヨ』二・二六事件秘録」、その後の取材過程で
入手した裁判資料から「二・二六事件 消された真実―陸軍軍
法会議秘録」などの映像ドキュメンタリーを手がている。
明治帝国憲法下でも通信の傍受は違法である。しかし、二・二六事件
発生以前から陸軍内部になんらかの動きがあると危惧していた憲兵隊
は密かに電話内容を盗聴し、事件発生後は戒厳司令部に引き継がれた。
著者の取材が始められたのは昭和50年年代。辛うじて事件関係者の
数人が存命していたタイミングだ。録音技術の提供者、戒厳司令部
で実際に盗聴作業に当たった元軍人等の証言が取れているのは貴重
なのではないかと思う。
通信傍受の録音盤20枚はNHKから、軍法会議資料については主席判事
だった人の自宅から発見されているのを考えると、まだどこかに日の目
を見ずに眠っている資料があるのではないかと感じる。
本書の中で特に興味を惹かれたのは、事件後に処刑された北一輝に
ついてである。皇道派幹部たちの関与を薄める為の人身御供なので
はないか。だって、皇道派のシンボルであった荒木貞夫などは天寿を
まっとうしているのだから。
本書の大本となった盗聴記録の録音盤は20枚だが、実際には40枚が
あるらしい。残りの20枚が今後、どこからから出てくる可能性は
あるのだろうか。
発見されたら、事件にまた新たな一面が出て来るのではないかと
思う。
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NHKに保管されていた2・26事件の電話盗聴レコードを基に番組制作されたことを切っ掛けに、著者がライフワークとして追いかけた記録である。戦後30数年を経て、関係者が辛うじて存命中に、しかも個人情報が21世紀の現在のように厳しく保護されない時代に取材できたことは幸いだったと思う。足で稼いだ取材、極秘情報の開示とは裏腹に、真相を知る人々は次々に鬼籍に入ってしまうというジレンマも辛い。皇道派のクーデターを、統制派は奇貨として軍部が政権を握り、太平洋戦争へと突き進んだ事実は重い。
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戦前、日本を震撼させた二・二六事件は、陸軍の二つの派閥、すなわち統制派と皇道派の衝突がきっかけに生じたクーデターである。(ちなみに、本書によると、これらの派閥の名称は、戦後日本になって名付けられ、当時は特にそのような区分けはしなかったらしい)この事件では、皇道派が、昭和維新と称して行動に出るが、昭和天皇は、最初から反乱軍と見なした。その際、戒厳令によって反乱軍を鎮圧したが、警視庁を含めて反対意見があった。その為、慎重に検討したうえで発動した。さて、この事件は、皇道派が決起する直前、電話でのやり取りが盗聴されており、その中には、北一輝の会話も盗聴されていた。と思われていたが、北一輝は既に憲兵隊が身柄を拘束しており、偽物であることが判明した。では、北と名乗る男は何者であるのか。著者は、これまでの事実を照らし合わせていくと、憲兵隊の誰が、北を装って電話で会話していたのではないかと推測する。このように、これまで事実だと思い込んでいたものが、ある証拠をきっかけに、それらが嘘だと判明し、真相は異なる、このような例が今回起きたのである。
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通信を傍受するという、いわゆる軍事の影の部分を中心に、二・二六事件を究明する苦労話(あえてこう書いておくが、全般的には冷静な記述がなされていると思う)。軍事における情報(諜報)の重要さは承知しつつも、辱職の悔恨を背負って盗聴した人達に同情を禁じえない。一方で「政治的判断」の不条理さは今も昔も変わらないものだと嘆息してしまった。