紙の本
迫りくる見えない恐怖
2015/09/12 04:06
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作品がクレイグ・ゾベル監督によって映画化されるという。はたして登場人物2人の会話で進む特殊な小説を映像化できるのか?やはり1ページずつ思いめぐらせながら読むほうがいいだろう。核戦争の恐怖を扱った児童書といえば、チェコの作家グードルン・パウゼヴァングが思い浮かぶ。本書は児童書というにはあまりにもショッキングだろう。だが3・11以後の日本だからこそ広い世代に読まれるべき本だ。
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内容紹介を、表紙裏から転載します。
『放射能汚染をまぬかれた谷間で、たった一人生き残ったアン。
そこにやってきた見知らぬ男の正体は?
少女の目を通して、核戦争後の恐怖を描く傑作ミステリー。
待望の改訳新版!』
これが最初にアメリカで出版されたのは1974年。著者は出版前、1973年に亡くなられたそうです。終わりの方の数章は残されたメモを元に、奥様と娘さんが書き上げて完成させました。日本では1985年に出版。そして2010年2月に「海外ミステリーBOX」の一冊として改訳出版されました。
私はミステリーというより、SFでしょう?と思いましたが・・・・。
そういえば1970年代位までは核戦争の恐怖がとても身近で、それに関した小説がたくさん書かれていたなあと思い出します。でもその頃にはこの本は日本で出版されてなかったのね。
25年前の出版だと、SFがすでに低調だった時かなあ。私、全然気がつかなかった・・・。
こうやって新版が出版されると、改めて話題になり手に取ることも出来るので良いことだわ!
たった一人生き残った少女アンの強さと注意深さは、とてもすごいと思います。
やってきた男ルーミスは、一応良識のある人間に見えました。
でもほんの少しずつアンは違和感を感じるようになります。
読んでいて、これは男と女の問題が究極の形で出てきたものではないか、と思いました。
自立していたはずの女が、男によって男のために行動するように仕向けられ、ふとそれに気がついてしまう。そんなのはおかしいと思う。
その女を支配下に置こうとする男。
ほとんどの人間が死に絶えたと思われる環境で、奇跡的に生き残った女と男が出会ったのに、昔ながらの男の愚かさのために二人の関係は崩壊していきます。
私は実はこういうラストは想像していませんでした。もっと違うラストになるだろうと思ったの。
アン、あなたはなんて素晴らしい人なの!
でも、未来はあるのだろうか・・・・。
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生まれる前に書かれた面白い作品に魂を揺さぶられる喜び。
核戦争後の世界を描いています。少女は強い。
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読んで良かった。科学者が偏屈に扱われるのは少し心苦しい。でも仕様が
ない。神経衰弱なのは仕様がないのだとは思うのだけど、どんなときでも、
礼節は大切にしないといけない。そう思いませんですかしらん。
衣食足りて礼節を知る。この慣用が破綻するからハラハラする。のだと思う。
未来に可能性を抱ける人に対する言葉なのかも知れない。
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世界の中に生きている人間が自分だけかもしれないという状況の中で、主人公の女の子は随分落ち着いていて、そこが気になった。家族と別れて数カ月たっているとはいえ、まだ15歳なのに、随分建設的な生き方をしていると感じた。
よく分からない男の人がやって来て、その人に対して家族のものだった様々な道具を提供してまで献身的に看病をしたり、体力を回復した男が挙動不審で、自分に対して攻撃的な行動をとることが多くなってきているのに、畑仕事を自分で全てやって家事も二人分こなすなど、私には考えられないほど献身的な主人公に、嘘臭さを感じた。
ストーリー全体に、放射能に汚染された世界と汚染されていない谷、乱暴な男と無垢な少女というような、対立する概念が表わされていて、それが筆者の作為を感じさせるようで、あまり楽しんで読めなかった。
描写されている谷はとても狭く、ストーリーが簡潔に展開するようになっているのではないかと思った。
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核戦争後、放射能汚染を逃れた谷間。主人公のアンはたった一人生き残った15歳の少女。畑を耕し、家畜の世話をして何とか冬を乗り越えたある日、遠くから見知らぬ男がやってくる。彼は敵か味方か…この本が震災の一年前に改訳されたこと、今手にとって読んだことに不思議な縁を感じます。(原書は1974年!)これは物語の世界だと思いながらも、防護服、ガイガーカウンター、ガンマ…など今や聞きなれた用語が出てきて、時々ふと現実と重なる部分がありました。アンのもとにやってきた男がどんな行動をとり、アンの生活、未来はどう変化していくのか。物語はアンが書いた日記によって明らかになっていきます。放射能も怖いけれど一番怖いのは極限状態に追いやられた人間の行動。ひたひたと迫る恐怖にドキドキしながらアンの行く末が気になり一息に読みました。若いのに我慢強く、逞しく、賢く、勇気ある少女アンを応援する気持ちでした。
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図書館で何回も借りて読んでたけど、買いました。とても、とても考えさせられる内容です。アンはナウシカみたい。ワタシにはそー思えます。
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読了。アマゾンプライムで見つけた映画の原作。映画は原作を見てから見ようと思ったので、まだ見終わっていない。でも映画と違うようだ。
感動がなかったので星は四つだが、とても面白いディストピアものだった。少年少女向けの本らしい。(高校生まで向けか。)それゆえに過激な性描写や人殺しの表現が皆無で良かった。ハンガーゲームもこのジャンルの本なので、少年少女向けは私にとって(今年50のおっさんにとって)実に良いジャンルかも。
話は世界最終戦争で人類が滅亡したあと。少女が住む谷は、気象の関係で放射能をまったく受けなかった。家族はほかの街を探索にいき、(おそらく)死亡し、かえってこなかった。そんななか、ある男性が放射能防護服を着てこの街にたどり着く。少女は世界に自分ひとりと思っていたところでこの男性の到着だったので、大いに喜び、内心乙女チックな想像もしたりする。しかし猜疑心の強いこの男性は、少女を支配しようとする。そして少女はこの狭い谷のなかで生き延びようとするが・・・。というお話。少女の日記のかたちで話は進む。
ほとんどこのふたりしか出て来なかったが、世界の終わりを回想したり、外の世界を想像したりするところが、ディストピア的でぞくぞくした。またこの少女の故郷の谷が、ほかとはまったく違った放射能フリーの世界、楽園のような世界なので、少女の空想もアダムとエバの世界のように思えて少女に感情移入できた。
タイトルは詩篇よりだが、原タイトルはZ for Zachariah。「ザカリアのZ」。訳者後書きにはバプテスマのヨハネの父のザカリアとしているが、預言者のザカリアであったろうと思う。バプテスマのヨハネの父はストーリーと絡まないのでそうおもったが、ザカリア書のザカリアはストーリー的に合うのかと言えば、そうでもない。
著者はアイリッシュでカトリックの背景がある。それゆえ聖書の知識も曖昧である可能性があり、それゆえのタイトルかも知れない。内容には聖書の辛みがほとんどない。少女は信仰があるようだが、著者の信仰以上には描けなかったのか、まったく信仰的には見えず、聖書も祈りも、ほとんど知らない。(きっと著者と同じなのだろう。)
その天はキリスト者的にはマイナスであるが、たいしたことではない。他の小説は大いにマイナスなので、むしろ信仰のある少女の生活が読めてGOOD。
最後のほうでは少女がどんどん追い詰められる。狭い谷のなかでの逃避行だが、ぐんぐん引きつけられて読むのがやめられなかった。
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世界の終末での日常と異常。
面白かった。
余談だけど装丁の「海外ミステリーBOX」のロゴマーク、場所を移動することはできなかったんだろうか。わざとなのかな