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今までの本、エッセイ、物語、どちらも好きだったけど、このエッセイはどちらかというとこれまでのエッセイよりも少し実際的な、自然科学に向けた興味が全開になっているような本。梨木さんの文章を味わうファンとして、これまでの本にも傾向がちらちら(というか大きく見え隠れ)していた梨木さんの具体性、植物や動物への自然科学的な興味や知識、調べて詳細に記すという、そっちの魅力をたくさん味わえる本。すごいなあ、梨木さんにしてみればきっと自分の興味をつい追ってしまうようなこと、だけどそのひとつひとつがこうして読者のわたしたちにもたらされる情報、角度、視線のアイディアって、すごい、これってなんてすばらしいことなんだろう、と感動してしまう。
文章の中に多用されるカッコの使い方が相変わらずで、久しぶりに梨木さんの本を読むと笑ってしまう。語り合っているような錯覚の中で読書を進められる不思議な書き方。
ぜんぜん内容についての感想じゃないけど。
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「水辺」以来のエッセイの新刊で、連載をまとめたものに一編を追加したもの。G.W.にほっと一息の一冊ですが、私にはどこか迷いが感じられました。
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正直、カヤックもバードウォッチングの知識も興味もないけれど、梨木さんの文章読みたさで手を出してしまう。エッセイはいろんな話に派生するからさらに良い。
面白いと思ったのは、章の最後の鳥の紹介。図鑑の引用だけでなく、梨木さんの情報/視点によって書かれているところ。
会ったこともないであろう鳥たちに愛着が湧くふしぎ。
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過度な擬人化や感情移入を戒めながら鳥たちに寄り添う視線が細やかで、作者は外界を受容する感覚が優れているのだろうなと思う。
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カヤックを漕ぎ、空を仰いだとき
はるかな大地へ向かって羽ばたく渡り鳥たち
目印とするにはあまりにも曖昧な情報しかない中で彼らは必死に羽を動かし、渡って行く。
ちょうど自分が川面に浮かぶ頼りない木の葉のようにカヤックの上でゆらゆら揺れているときに目に入った光景は、彼女を強く励ましたことだろう。
野鳥に対しての知識が乏しく、文章の中心となる鳥たちの姿が思い浮かばないので、文章の途中で思考が中断してしまうことがたびたびあってじっくり「味わう」ことはできなかったけれど、作家の思考を探るという意味では大事な一冊だと感じた。
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(2010.08.02読了)(2010.07.01拝借)
(「BOOK」データベースより)
渡り鳥の足跡を辿り、観察し、記録することから始まった、待望の最新エッセイ。
☆梨木香歩さんの本(既読)
「りかさん」梨木香歩著、新潮文庫、2003.07.01
「家守綺譚」梨木香歩著、新潮社、2004.01.30
「村田エフェンディ滞土録」梨木香歩著、角川書店、2004.04.30
「ぐるりのこと」梨木香歩著、新潮社、2004.12.25
「沼地のある森を抜けて」梨木香歩著、新潮社、2005.08.30
「水辺にて」梨木香歩著、筑摩書房、2006.11.20
「f植物園の巣穴」梨木香歩著、朝日新聞出版、2009.05.30
「『秘密の花園』ノート」梨木香歩著、岩波ブックレット、2010.01.08
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この本は飛行機に乗ったときに…と思って開かずにいた。「渡りは、一つ一つの個性が目の前に広がる景色と関わりながら自分の進路を切り拓いていく、旅の物語の集合体である。」今年は函館も暑い。
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雑誌「考える人」に2006年から2009年に掲載された~北海道で切れていた航路が開くのを待ってオジロワシ・オオワシは海を越えていく。ヒヨドリの中には渡るものと渡らないものがいる。新潟県の福島潟にオオヒシクイが飛来したと聞いて出掛けると今朝旅だったとアマチュアカメラマンが教えてくれる。無線による追跡ではコースを外れて死んでいるのが発見されたがそこには悲劇も喜劇もあるのだろう。ニセコに行くとベーリング海をシーカヤックで漕いで渡った人がいる。諏訪湖に来るハチクマを追跡すると避寒地であるジャワ島まで近畿・瀬戸内沿岸・福岡・五島列島・長江河口・ベトナム・ラオス・タイ・ミャンマー・マレーからスマトラ島にはいることがわかり,帰りは経路を西に大回りして朝鮮半島付け根まで到達後,半島を南下し九州福岡から90度転針して安曇野を目指すことが分かった。なぜという想いがひろがる。関空行きの列車で戦中抑留された日系2世アメリカ人と知り合い,祖国に反抗的な態度から市民権を抹消され日本国籍が造られて戻ってきた人々の個々の人生を見る。語ることはできても,個々に事情は異なり,ある者は市民権復活にやっきになり,ある者は日本に来て自殺する。人の渡りにも悲劇は付きまとう。諏訪湖で保護されたオオワシも道行きが怪しくても何とか生きて行かなくてはならない。ウラジオストックでトランジットをし,デルスー・ウザラーに想いを馳せ,カムチャッカに辿り着くとウミガラスを確認し,エトピリカ・ツノメドリ・ヒメウも確認,奇岩の上にオオワシも発見し,渡りに備えて練習している風景を見る。知床で渡ってくるオオワシを見る。知床に開拓に乗り出した人々も渡りかも知れない。定期的に渡りを繰り返す生き物にとって,毎年ある時期が来ると「帰りたい」という衝動が生まれるのか~「渡り鳥」は毎年同じコースを辿り往復するが,無事に行って帰ってこられるものばかりではない。オオワシはどこから来るのか? カムチャッカから? 余り興味のない話なので,引き込まれることもなく,漫然と読んでしまった。彼女は,何が書きたかったのだろう。読者に向けて語りたい部分は何なのか。日本に来る(帰ってくる)渡り鳥を知って欲しかったのか,人にもその姿を見ているのか。書き下ろしの最終章「もっと違う場所・帰りたい場所」でまとめているのだろう。よく分からない
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「なにげなく生きている中に、たくさんの示唆や物語が漂っているんだな」と梨木香歩の本を読むたびにいつも思う。ちょっと難しい本だったけれど、夢中で読めた。
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鳥を追う梨木さんの高揚感につられます。
独特な、作家らしい描写で描かれるオオワシやエトピリカに笑ったり、ゴジュウカラってどんな鳥だっけ…と思わず図鑑をめくりたくなったり。
鳥を追いながらも、人と自然と歴史に世界観が広がっていくのは、やはり梨木さんのエッセイ、という感じ。
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風景の描写が、本当に素晴らしいと思う。浮かぶ。
鳥はそこまで興味なかったのですが、詳しくなりたいな、と思いました。
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「渡り」をする鳥がメインテーマのエッセイ。
梨木香歩さんの作品を読むと、この人は常に「境界」と「nature」について考えているのではないかと感じられます。
まず「境界」について。
これは「つながり」「関係」「間柄」と言い換えることも出来るかもしれません。草木染め(からくりからくさ)や水の循環(ピスタチオ)などは人と自然の関係にピントが合わせられています。親子・祖父母と孫(西の魔女が死んだ)や国を越えた友情(村田エフェンディ滞土録)などは人と人とのつながりの例です。さらに死者と生者との交流(家守綺譚)が描かれている作品もありました。(一つの作品に人、血縁、友情、自然、生死、国家など複数の関係が盛り込まれている場合が殆どですが、此処では簡単に書かせていただきます。)
『渡りの足跡』では、まずメインテーマである鳥の渡りそのものが国境や山海を越える越境です。そして、それに絡めて人の移動(開拓、冒険)や自然の境界線の移動(エチゼンクラゲの北上など)にも触れています。
次に“nature”について。
natureは普通「自然」と訳されますが、梨木さんが扱うnatureの中には人も含まれています。自然の中に人が含まれているのだから、人が手を加えて破壊された現代の地球環境もnatureの一形態です。鳥もnature、人もnature、植物もnature、動物もnature、ロシア人も日本人も案内する人もされる人も、皆natureに含まれます。
この本では各章の後ろにその章で登場した鳥を梨木さんが説明しています。生物学的な分類(○科△目)、体長、生息地といったデータのほかに、梨木さんが調べた或いは感じたその鳥の性質についても書かれていました。群れる、孤独に渡る、都会で生きる、警戒心が薄い、人相が悪い、太りすぎ…など、梨木さんの鳥に向ける視線は温もりに満ちています。natureはまた、性質とも訳されます。
人は或る時、移動を止めて定住しました。農耕牧畜によって自然と人間を分け、自分の属する共同体(民族、国家)に別れ、使うもの・使われるものの別ができました。振り返ってみると、人が生きやすいように暮らしやすいように進んできた道は、自分のnatureを色々な境界線で区切っていく作業だったのではないでしょうか。カテゴライズとも言えるかもしれません。人は先人の築いたカテゴリの上に住みつつ、新たなカテゴリを作って生きているような気がします。
梨木さんの作品は自分が何に属しているのか、どんな境界線に区切られているのか、自分のnatureとは何かを一回ちゃんと考えてみようよと問いかけているのかもしれません。
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渡り鳥を主題に 変化し、移動するものたちについてのエッセイ 「春になったら苺を摘みに」の時も感じたことだけれど 本当に堅実だと思った 何気なく読んでいると 突然鼻がつんとするような言葉が出てきて いい本だな とその度に感じた 生き物には帰る場所があって たとえそこが生前に訪れた場所でなくても 帰ろうと思う というのは 流浪の民が想い描く 故郷 と同じことなのかな 吹きすさぶ北風の中で一匹飛んでいくオオワシを見た
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そういえば、「西の魔女が死んだ」の後半の短編でバードウオッチングをしに行こうとする話だったなとふと思い出しました。植物だけでなく、鳥類にも詳しいんですね。渡り鳥を中心に環境や社会の変化を描いた話。
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とてもよかった。
私はつくづく、梨木さんのものごととの接し方や、
そこから広がっていく考えや、繋がりが、好きなんだなと思った。
鳥の話が主軸になっていて、
そこから意外な方向に広がっていく章もあった。
むくむくと、鳥に興味が湧いてしまい、鳥の図鑑など買ってしまいました。