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投稿者:れん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルから素敵で、即購入してしまいました。
すごく読みやすかったです。
おすすめです!
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受動的な「生」の中で翻弄され、鬱屈とした感情を持て余し、それでも素敵な恋人がいる。そんな生活と壁に打ち付けられたまま身動きのとれない、それでも生かされ続ける蜥蜴の「キン」との対比が、主人公・井領哲之の苦悩を通して描かれている。
「人生についての本」と言うと安っぽいが、ふとした場面で眼前に突きつけられる生きることの不安、疑問、諦念、喜び。それらと向き合うちょっとした勇気をくれる本かもしれない。
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最初は読み進めるのがなかなかきつかった。
しかし、10ページも読めば、淡々と、沸々と、低い音で、青い炎がみえるよな、恐ろしく抽象的だが、なんかそんな感じの魅力にやられる。
くらい、つらい、だけどなんだか強くて、単純にいえば、かっこいい。
蜥蜴のキンに対する気持ちも何だか、わかってくる。
やっぱり宮本輝ってうまいよなー。
小説家だよなー。
と思う。
単純じゃない、奇妙な状況が、よりうまく心情を伝える。
良い道具になる。
あー小説家ってすげぇ。
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蜥蜴「キン」は何の象徴なのだろう。もやもやとした不安、身動きの取れない自分..。やはりどこか陰があって全体的に暗い印象を受けるけれど、物語にすっと入っていけて興味深く読めた。
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「待つ」という時間が、若者たちの心を鍛えていた時代を、私はなにかしらとてもありがたいものとして思い出している」 (あとがきより)
なんだか色々と衝撃的な本でした。タイトルと表紙的に、もっと穏やかなものを想像していたんですが、こんなに人間の内からエネルギーが溢れている小説は久し振り。「幸せになったる」という、憂鬱をエネルギーとした野心・・・暑苦しいという領域を通りこしてしまって、燦然と輝いている。
これは「生きて」いるのではない、「棲息」しているに過ぎないのだ-親の残した借金を抱え、鬱屈とした生活を送る主人公。どんなときも彼を傍らで支えてくれる完璧な恋人の存在に束の間の幸福を感じ、きっと共に幸せになってやると思いつつも、常に不安はつきまとう。
あやまって部屋の壁に釘で打ち付けてしまった蜥蜴の「キン」が内臓を貫かれてなお長々と生き続ける姿に、自分の状況を投影しながら日々戦い生きる。絶望してしまいそうだ、けれど幸せになりたい。抜け出せるのか、抜け出さなければいけないのだ。
闇から光を目指す若者の物語。
耐えること、勇気を持つこと、希望を持つこと-苦痛を伴う日々でも、これら三つを続けることの壮絶さよ。汗臭く、泥臭く、憂鬱だけれど、輝かしい。
護りたいもの、が、絶望の淵にいる男をなお闘わせるんだなぁ。生かすんだなぁ。
ヒロインの陽子は、女の私から見るとずるいぐらい可愛い。ずるいぐらい。三回ぐらい言おうか、これは浅倉南とは違った方向のずるいほどのかわいさ。
男の理想、やろなぁ。
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宮本輝の作品の登場人物には、当たり前のように、弱い部分や影の部分がある。それが生身の人間。そういうものを抱えて真摯に生きている姿にとても感動する。
親の残した借金、恋人への疑念、煩わしい人間関係、背中を釘で貫かれた蜥蜴。泥臭く、心強く生きるエネルギーをもらえる小説です。
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卒業前後が背景。
哲之ー陽子
借金を抱えて、それを克服する
大学卒業前後のストーリー。
「死」というものに対して、
鮮明化してきている。
千代乃のストーリーがよくかけている。
行きつもどりつの振幅が、
豊かなスケールで書かれている。
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亡き父の借財を抱えた大学生「井領哲之」。大阪にあるホテルのアルバイトに勤しむ彼の部屋には、間違って釘で柱に打ちつけたまま生きている蜥蜴「キンちゃん」がいる。可憐な恋人とともに人生を真摯に生きようとする哲之の憂鬱や苦悩を描く。蜥蜴の「キンちゃん」が生と死、束縛され身動きがとれないまま生きる姿として観念的に描かれている。
「勇気と希望と忍耐」昭和には普通に使われていた言葉が今の時代には気恥ずかしい言葉になりつつある。小説家も今の時代ならば時代物で描かざるを得ないのかも。
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借りて読み。著者が34歳の頃書いたものを手直しせずにそのまま文庫化したものとのこと。本当にタイトルのまま、この時期にふと下りてくる「死」についての、荒々しい怖さと不可思議さをそのままパレットにぶつけた印象の作品。
次から次へと間髪入れず寄せてくる「生と死のエピソード」。ときにすっ飛びすぎだろ、と思わせつつ、とにかく読者をテーマから逃がさない。固く固く腕をつかんで、直視しろと凝視してくる。
著者も文庫化後書きで書かれていたが、携帯電話なき時代の青春小説として読んでも充分重く、面白い。それにしても、主人公がやたら強く見えてしまったのは何故だろう? あんなにもがいているのに。宮本先生は、彼に最後まで感情移入できていたのかな?
キンちゃんのラストも素晴らしい。私は大好きでした。
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2014/01/26
釘にうたれてしまった蜥蜴と、借金で身動きが取れない主人公。
それ以外にも、事あるごとに蜥蜴が象徴として出てくるのだけど、この発想はすごいよなぁ。
そして爽やかなラストもとても良かった。
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トカゲのきんちゃん、
想像しただけで、かなりえぐい。
でも、きんちゃんに
かなり愛情が湧いてくるのが不思議。
台湾の帰りの飛行機から
夢中になって読んだ一冊です。
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先生が30代に書いた作品。一匹の蜥蜴を通して人間の生き死にを徹底して考えた物語ですね。先生の若さが感じられます。
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若くして読んだ時には、登場人物や話の筋は大好きだけど
どうしてもトカゲに違和感を感じてました
今あらためて読み直すと、素直にトカゲのエピソードも読めて、そこからのメッセージも受け取れます
生きる姿、滑稽に見えてもつらくてもやっぱり素晴らしいと思わせてくれる作品です
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私と主人公の哲之を重ね合わせながら読みました。30年以上前に、父の事業が行き詰まり、夜逃げ。一家離散しました。当時、私は26歳、とりあえず友人のアパートに転がり込み、武庫之荘の4畳半一間、共同トイレ共同風呂のアパートに住んでました。日々、債権者が来ることに怯えながら過ごしていました。小説の中に出てくる、梅田、住道、もちろん武庫之荘全てに馴染みがあり、のめり込んで読みました。ただし、当時の私には陽子はいませんでしたが。
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「青春の光と影」という大きなテーマは『青が散る』に通じるものがあるが、『青が散る』では、恋愛や一つのものに打ち込み挫折していく中での心の成長といった内面の動きを軸に描かれていたのに対して、本作は「生と死」という要素が強い。蜥蜴のキンや歎異抄、磯貝の病気、ラング夫妻の心中騒動、利休と茶道、沢村千代乃にいたるまで、全編を通して中心を貫くテーマになっている。
同時に、人間の、何とも言えない「生々しさ」が描かれている。もちろん、母や磯貝など、哲之の近くにいて信頼に足る人間もいるが、多くは悪人とは言えないかもしれないが、決して善い人間であるとは言えない人間ばかりだ。この点が『青が散る』とは最も違う部分ではないかと個人的に思う。
『青が散る』では、穏やかで透明感のある空気の中にある、圧倒的な質量のようなものが絶妙に心に響いたせいか、本作はあまり好きにはなれなかった。
それでも、表現という点においてはやはり凄いと何度も感じた。
『青が散る』でも感じたことだが、著者は労働者の(特に低所得者層の)生活を描くのが本当に上手い。舞台が大阪であり、著者も関西の生まれであることも、作品にリアリティを生んでいるのだろうか。
ところで、本作の重要な登場動物?である、蜥蜴のキン。このキンの結末は…!読み終わった後に、うーん!と唸ってしまった。
が、読み終わってしばらく経って考えてみると、まさにこの結末しかないのだろう。
哲之と、私たち読者がキンに親近感を抱き、それがピークになったところで、すっと突き放す。それは、決して相容れない人間と動物の生の間の壁であるようにも思えるし、キンにとっても哲之にとっても自立の時が来た象徴であるようにも思える。
この結末だからこそ、物語に何とも言えない余韻が残るし、タイトルの「春の夢」がピッタリなのだろう。
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