紙の本
高橋源一郎の新しい世界が見えた気がする
2018/09/08 23:48
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
シュールな世界である。また、高橋源一郎の新しい世界が見えた気がする。「悪と戦う」ってなんと凡庸なタイトルでしょう。でも、中身はそんな単純なものではない。最後の方に*や☆がデザインのように使われている。小説の約束事からも自由だ。
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生まれて初めて読んだ高橋源一郎の小説は「さようならギャングたち」の講談社文庫版。手元にある黄ばんだその本の奥付を見ると、昭和60年の第一刷だ。たぶん私は14歳の中学生。それから四半世紀が過ぎて、高橋さんが「いまのぼくには、これ以上の小説はかけません。そして、これ以上の小説を書くことが、ぼくの、次の目標になりました。」と書いた「今ベスト作品」を、手にとって読む。至福の時間でした。
正直、「ゴーストバスターズ」以降(室井さんと結婚してた頃か?)の作品には、落胆することが多かった。これは、自分がひたすら見たいと思ってきたギャングたちやレノンVS火星人やペンギン村の向こう側じゃない、と。ブンガク入門的な本ばっかり出している高橋さんにどこかイライラして、もう終わっちゃったんじゃないか、と思ったこともある。そして、2010年、高橋さん自身が「ギャングたち」の忘れ物を回収にいった、というこの作品は、その言葉に対する嘘偽りのまったくない未来への贈り物でした。待っててよかった。そして、この先の高橋さんの作品が、このもっと向こう側に行くこともまた、楽しみでならないのです。
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良かった。すごく良かった。前作(「いつかソウル・トレインに乗る日まで」2008)よりも、あたしは断然良かった。
札幌行きの飛行機の中で一気に読んでしまった。
ココロがぷるぷるした。
何故だかいろんな人のことを思い出した。
「さようなら、ギャングたち」はもちろん最高傑作だ。
あのとき(自分は10数年前の高校生のとき)は、自分の中を見ることになった。
でもこの作品は何故だか、いろんな人のことが思い浮かんだ。
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いま、世界に生まれなきゃならなかった小説で、
小説って形式でなきゃならなかった考え方の本。
かんがえかた?
それは
生きかたのことかも。
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高橋源一郎の新著。
発売までの2週間ほど毎日深夜にTwitter上で著者自身がツイートした「メイキングオブ『「悪」と戦う』」は新しい試みとして面白いし、またその内容も小説そのものよりも興味深い。小説を読む前でも後でもいいので読むと小説の世界が広がるだろう。もちろん同時体験できたことは読者側としても新しいものに立ち会っているという感覚があった。
http://togetter.com/li/18161
読後何か物足りなさを感じたのは、このツイートのおかげで期待を高められていたおかげだろう。
さて小説は、「世界」と「悪」について、今われわれが見ているものとは違うものであった可能性について書かれている(と思う)。メイキング~によると「弱さ」や「無力さ」について書かれたものらしいが、「障害」を持った子供らはそれらの象徴なのだろう。ただ、その文は軽い。軽さは狙いでもあるが、どうもしっくりこなかった。
高橋さんの小説論や切れのあるエッセイなんかを読んでない人には、なんじゃこりゃなんだろうな。
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小説というよりもすでに詩に近いのかもしれない。
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小説の中で字の大きさが変えられたり、"*"や"☆"を使って間を使っていた。Twitterの使い方を見ていると意外に電子書籍上の「小説」で高橋源一郎は実験を試みるのかもしれない。そこは実のところ随分と期待している。
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高橋源一郎の他の作品同様、評価がまっぷたつに分かれるだろう作品。その基準はどこにあるのか、それは明確過ぎるほどに明確だ。あなたにもし、子どもが、しかも小さな子どもで、しかも少し親として心配したり苦労したりしている(した)子どもや赤ちゃんがいる(いた)ならば、この作品に書かれている親としての高橋源一郎が物語化を通じて描きたかった「愛」の形を、理解とは言わぬまでも共感は出来るだろう。もしあなたに子どもがいなければ、あるいは、子どもを持とうとしたことがなければ、この作品に共感するのは難しいかもしれない。そして私は前者だった。とてもパーソナルに、誰とも共有出来ない形で、前者以外の何物でもなかったのだ。
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最高傑作。とは言い難い。
面白いが、先生の持ち味が全面に出ているとは思えなかった。
次の作品に期待します。
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「悪」の設定は悪くはないけど、まぁ、よくあるパターン。
世界には「悪」があってそれに主人公だけが気付いて立ち向かうという構造は村上春樹の小説と似ているかも。まぁ、「悪」が絶対悪でない分村上春樹よりはましか。
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Twitterで高橋源一郎さんご本人による「メイキングオブ『「悪」と戦う』」を読んだ後に購入しました。
物語そのものは、抽象的に思える部分が多く、捉え方によって見えるものも様々だと思います。
でも、抽象的だからこそ、何かがぐっと胸に染み込んで来ました。
登場人物の一人であるランちゃんは悪と戦っている。
でも、その悪は絶対的な悪ではない。
絶対的な悪ではない故に、やり場のない痛みや切なさを見ている(読んでいる)事しか出来ない自分にもどかしささえ感じました。
ランちゃんは優しく、弱く、それでいてとても強い子です。
誰もが、世界と繋がるために、「悪と戦っている」のかも知れません。
対峙する悪は人それでしょう。
しかし、誰の中にも「ランちゃん」がいて、必要な時には勇気をふりしぼって悪と戦っている。
物語を読み終えた時、私はそんな風に感じていました。
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余談ですが、一度、舞城王太郎の正体が高橋源一郎だった、という夢を見たことがあるのを思い出しました。マイケル・サンデルの本ように正義についてロジカルな相から接近していくのもいいですが、悪については小説によるアプローチはやはりしっくりきます。悪との戦いの第一歩が、ごみ捨て場の清掃(ごみの分別でしたっけ?)というのが何とも好きです。
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何だか不思議な世界でした。しかし面白かった!
源一郎さんは余り読んでいないので、もっと読みたいです。
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世界を肯定する物語。とても好きだけど、短い。読み終わること、ページがどんどん減って終わりに近づくことが残念に思える1冊だった。読むときのリズムや感じ方はエンデの小説につながるものがある気がする。『果てしない物語』に。「ああ、この物語をずっと私は読んでいたいのにな」、という意味において。読書会の課題以外で、久しぶりに自ら小説を読んだ。素晴らしいファンタジーだと思う。
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カギカッコつきの悪は、私たちの近くにあるもので、カギカッコをつけてないと気づかない、時に正しい悪であったりして、はっきり悪が何かとか分からなくて、みんな半信半疑で「」をつけているんだろうなぁ。
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一気読みした後、しばらく放心してしまった。
なんというスケールの小説。
内田樹が「疾走する文体」と評していた通り、冒頭から繰り出される言葉のリズムに引き込まれ、ものがたりの世界に連れて行かれる。ランちゃんとキイちゃん兄弟の無垢な感性。親と子が紡ぐものがたり。パラレルワールド。
高橋源一郎が「小説」にこだわる理由がわかりました。
小説でなければ出来ないこと。小説でなければ、ぼくはいまこのように放心することもなかったでしょう。高橋さんは、自身が小説を読む理由をこう述べています。
高橋源一郎twitterより
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小説の、というか、芸術の「論理」は、「地上の論理」ではないはずだ、ということです。仮に、それが商品として流通していようと小説を読む。そこに「わからない」なにかがある。そこには、ゴルゴダの丘に登ったクレージーな男がやったことと同じなにかがあります。地上に生き、そこで死んでゆくはずのにぼくたちにとって理解できないなにかが。だからこそ、ぼくたちは、懲りずに明日もまた小説を読むのです。
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本書には、とてもたくさんの「わからない」なにかがありました。そして、それは抱きしめたくなるほど大切ななにか、のような気がするのです。そういう小説には滅多に出会えません。
『さようならギャングたち』以降の作品はあまり興味を持って読めなかった(前衛小説家というイメージだった)のが、ここ最近の高橋さん、ツイッターでのつぶやきでもそうなんだけど、なんというか、溢れている。まるで馬鹿なほど、溢れている。そしてぼくは、まさにそこに共鳴するんです。まさに、いま、同じような経験をし、(たぶん)同じような気持ちを体験しているから。子どもの可愛さを、可能性を、肌で感じるから。この人の発することばに、共鳴するんです。
マホちゃんが最後に言った台詞にガーンとなりました。
ぼくたち夫婦にとって、それはとても大事なことでしたから。
ああ、これはたましいのものがたりだったんですね。
隣でくーくー寝ている息子を抱きしめたい気持ちになりました。
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あっという間に読み終えていた。
作者が明言している通り、スタイルは全く違うけれど、処女作「さよなら、ギャングたち」と同じような雰囲気やテーマが盛り込まれているように感じた。
途中の設定や文章の感じが舞城王太郎っぽく感じたのは、そこが日本の文学の最前線だと作者が意識しているからだろうか。