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日本の戦前戦後を架空の道のりを歩んで今とはちょっとちがうパラレルな世界でのお話。そういう説得力は相変わらず面白いというかうまい作家さんですね。
で。今回ここを一番言いたいんですが。
この前に紹介した「撹乱者」がテロリストの話だとしたら、今回はそれに対になる治安警察のお話。意図されているのかどうかはわかりませんが、なんかコインの裏と表のように二つを読むと非常におもしろい感じになるかと思います。個人的に。
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一党独裁の日本ライクな国での官憲とテロリストとの戦いが描かれた短編5編。肉弾戦あり頭脳戦ありで読者をあきさせないものの、この結末は好みじゃないなぁ。
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一党独裁の管理国家であるこの国では国家に対する反逆はもっとも罪が重く、人材育成をなにより重要視するこの国では小学校卒業時に児童の将来が決められ、非戦平和を掲げるこの国では士官学校はたんなる公務員養成所となり、経済の豊かなこの国では多くの女性が売春婦としておとずれ、文化を愛するこの国では「カワイイ」をテーマに博覧会が開かれる。そこで起こる「事件」の真の犯人は、やはりこの国自身なのかもしれない―(「BOOK」データベースより)
架空の国を舞台に、体制派とその反対勢力グループとの戦いがベースになっています。
Phase1.公開処刑/ハンギング・ゲーム
Phase2.教育/ドロッピング・ゲーム
Phase3.軍隊/ディフェンディング・ゲーム
Phase4.出稼ぎ/エミグレイティング・ゲーム
Phase5.表現の自由/エクスプレッシング・ゲーム
と、5つの物語から形作られているのですが、ハンギング・ゲームで確執がおこり、最後のエクスプレッシング・ゲームで決着がつく形になっています。
キーとなる番匠少佐がなかなか魅力的で、ぐいぐい読み進めていけたのですが、ラストが前作、『撹乱者』となんら変わりがなく、そこがやや残念。
それぞれ個別に読む分には面白いです。
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読了、82点。
今年の石持作品では『リスの窒息』(http://booklog.jp/asin/4022506369)、『見えない復讐』(http://booklog.jp/asin/4048740938)に続き3冊目、
ちなみにどこかのランキング本で著者自ら嘆いていた(?)ようにまだ他に2冊刊行というあり得ないスケジュール。
読者としては好きな作家の小説がたくさん読めるのは有難いんですが、さすがに追いつけてないです。
明治維新により突然現れたのは、既に技術力、国力、軍事力において圧倒的な差を持つ欧州列強、その国々と対等に渡り合う為に、
一党独裁政権、教育を基本に据えた富国政策、徹底的に不戦を掲げた平和外交
などなど現実の日本国とは大きく姿の違う、仮想日本である「この国。」を舞台に
治安警察、番匠中佐がある特殊な任務に、本格謎解きに、アクションに挑む連作短編集。
私が著者の小説を好きな理由は、簡潔に言えば、考えさせられるテーマを扱ったミステリーを書いているから。
『アイルランドの薔薇』『顔の見えない敵』など、読んでる最中はエンタメとして楽しませつつ、読み終わってからじわじわと思いを巡らせてじっくり考えたくさせてくれる小説で、本作も同様でした。
今年既に読んだ小説もそういうのがあるにはありましたが、インパクトに欠けてたので。
一番出来の良かった短編は2作目、この仮想日本の価値観を基盤に進められる謎解きはなるほどと思わせてくれるものでした。
最後の短編で完結していますが、こちらはちょっと残念というかネタが"カワイイ"という価値観で小物臭さと、話の筋そのものが、、、ただ単純にアクションものだとどうも好みから外れてしまうので。
それはそうと、表紙の折り返しの、「カワイイ」をテーマにした博覧会、という文字を見た時、女子高生などの発する"カワイイ"かと思ってたら、、、
萌えですか、コミケ、コスプレ、痛車って、作品の中ではマッチしてるんだけど、
でもなんだかなぁってついつい言いたくなってしまいました。
内容とは一切関係ないですが、何故かミステリーリーグのって本の背が割れて困る、三津田さんの『厭魅の如き憑くもの』でも割れちゃいました。何とかして。
追記
治安警察対反政府組織という構図が作中で取り上げられますが、
どちらも組織の意義などについては深く語らず個人対個人に傾斜し過ぎているのと
反政府組織側の人間の描写がもう少しあればな、と感じてしまいました。
短編の数がもう少しあってそこで書いてくれれば最高だったんだけど。
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一党独裁の管理国家"この国"を舞台にした連作短編ミステリ。歪んだ思考や論理を描くため、架空の国家を一から設定する手法が見事。それぞれの事件に見られる"この国"への思いや、ラストでの問い掛けが重く胸に残る。
お気に入りはは「ドロッピング・ゲーム」かな。
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一党独裁の管理国家であるこの国では国家に対する反逆はもっとも罪が重く、人材育成をなにより重要視するこの国では小学校卒業時に児童の将来が決められ、非戦平和を掲げるこの国では士官学校はたんなる公務員養成所となり、経済の豊かなこの国では多くの女性が売春婦としておとずれ、文化を愛するこの国では「カワイイ」をテーマに博覧会が開かれる。そこで起こる「事件」の真の犯人は、やはりこの国自身なのかもしれない。
1話
テロリストのリーダーの公開処刑。番匠少佐が立ち会う。策略プロ松浦が、人質作戦、蜜蜂、死刑反対、と手をうつ。すべてを排除。首をつり時間経過したがリーダーは死んでいなかった。処刑台の中に隠れていた仲間が支えていたの気づく。機関銃を台に撃ちまくる。松浦とその妹は復讐を誓う。
2話
小学校でエリートコースと普通コースに分けられる。仲良し4人組みがバラバラになる。エリートに進む子が普通科に進む子に自殺においやる。
普通科で満足しているのが許せず。番匠少佐は気づくが証拠なし。
やがてエリートは国家の中枢に最年少で。
3話
戦争をしない国の士官学校の卒業試験。番匠少佐が外国人による事件の捜査と偽り、夜のパトロールをさせる。突然襲われる。犯人は?
番匠少佐であることに気がつく。気がついたのは初めて。
4話
外国から3年間の約束で派遣される売春婦。自分が相手をした客が3人続けて殺される。犯人が友人であることがわかる。顎の下にキスマークをつけるのを知っている。番匠少佐が捜査にきて友人は捕まる。
彼をそそのかしたのはテロクループだと知っている。
5話
カワイイ博にテロ予告。番匠中佐が大使を警護。開幕前の準備の最中に奇襲攻撃。松浦の見事な策略。毒画鋲で襲ってくる敵を射殺。弾丸が不足。なんとか乗り切る。一緒についてきた記者が実は松浦。大使、番匠も画鋲に刺される。記憶が遠くなる前に松浦を撃つ。松浦が倒れる。
「松浦、この国はいい国だと思わないか?」
「ハンギング・ゲーム」
今日は反政府組織の菱田の絞首刑執行の日だ。治安警察に奉職している番匠少佐は、彼を見張っていた。きっと、仲間が菱田奪還を狙ってこの公開処刑の場に来ているはずだ。注意すべき人物は2人。松浦と菊池という人物だった。
「ドロッピング・ゲーム」
この国では小学校卒業後の進路で自分の人生が決まる。金崎啓介は、エリート候補が進学する海洋学校に決まった。ずっと、努力を続けていた宮村翔一は普通科だった。仲の良い旭奈津美は普通科、石田桃子は体育選抜だった。落ち込む宮村だったが、奈津美と同じ進学先と知り、元気を取り戻す。卒業作品として垂れ幕を制作し、屋上に飾っている時、宮村は屋上から転落した。
「ディフェンディング・ゲーム」
海軍士官学校に治安警察の番匠少佐が来た。女子高生が強盗未遂に遭い、事件が4件続いていると言う。そこで見回りをして欲しいということで、麻岡、池、印南は見回りを始める。千鳥足の男が前を歩いており、任務とは関係ないが、家まで送ろうとしたところ、突然男は走り出し、逃げてしまう。
「エミグレイティング・ゲーム」
異国からお金を稼ぐために日本へやってきたサタ。お店の近くで連続殺人が起こり、殺された人物は全てサタのお客だった。
「エクスプレッシング・ゲーム」
カワイイ博で、治安警察は懸念していた。反政府組織が何かを仕掛けてくると思ったからだ。狙われているのは表現庁の官僚、貝塚。組織は次々攻撃を仕掛けてくる。
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「なぜ小学生である彼が“自殺”しなくてはならなかったのか?」 その管理国家ならではの論理によって事件は起こり、解決が導かれる…。推協賞候補作「ドロッピング・ゲーム」を含む全5編を収録。
柳広司の「ジョーカー・ゲーム」に似ているとの評を聞いていたが、確かに全体の雰囲気には共通のものがあると感じた。時代設定が違うし、あの洒落たスタイリッシュな感じ、少し不気味な感じは抜けているけれど…。5篇とも惹きつける力は十分。
(B)
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架空の日本みたいな国でのテロリストと治安警察官との闘い。他の短編集に掲載された話も収録。「カワイイ」は「萌え」になってんのか…
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さすが石持先生。治安警察とテロリストの頭脳戦かっこいい! 番匠に痺れました。この特殊な(ある意味歪んだとも言える)理論・思考を正当化するために、架空の国家「この国」を創造し、見事に世界設定と作品の構造を一致させた、良作ですね。
あ、「エクスプレッシング・ゲーム」や「ハンギング・ゲーム」でのアクションシーンも格好良いです。攻殻機動隊みたいな、姿の見えない敵との頭脳戦が大好きな人には大好物な作品集かもしれません。
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日本のパラレル世界である独裁国家の話。三崎亜記にも似た雰囲気。この人の連作集はどれも、重要キャラの退場で続編への期待が折られてしまう。残念というか、潔いというか…。
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軍人とテロリストの頭脳戦。
というわりには重くない。彼らにとっては死を賭しての戦いが日常だから・・・なのかな。物語の舞台はテロを阻止できるか/敢行できるかの戦いなのに、重苦しくなく、さらりとしている。
小気味よい短編。
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(収録作品)ハンギング・ゲーム/ドロッピング・ゲーム/ディフェンディング・ゲーム/エミグレイティング・ゲーム/エクスプレッシング・ゲーム
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短編集の一連の主人公である警察官の番匠が激しくカッコイイのですよ〜。J.バンコラン(パタリロ!)と新城直衛(皇国の守護者)を足して2で割ったと脳が勝手に解釈しています。一党独裁で殺人者は公開絞殺処刑され、治安警察がその執行を取り仕切る。ある反政府活動家の処刑を任された番匠は、奪還を警戒して万全の態勢で臨む。この国。は不思議な国。以下、警察官である番匠が関わる事件簿が3編。この国では、子どもは小学校卒業の時点で社会階級が決定する。ある小学校で仲良し二人組が上流と中級に進路を分かつことになった。中級に決まった少年の、自殺と見える死の謎は。国自体は平和主義、二度の世界大戦において中立を貫いた。軍隊は存在すれども戦うことはなく、士官学校は気楽な公務員養成所と化している。その学生たちが番匠を通じてテロ組織警戒の任務に就いたが。少子高齢化を補うためアジア諸国から労働者を受け入れている。秘密だが売春宿はエイズの蔓延を防ぐため国営であり、アジア人の売春婦たちは3年の期限付きながら良い待遇で稼ぐことができる。娼館帰りの男の殺人事件が連続し、全員自分の客であったことに恐怖を覚えた少女は、一つの結論に到達する。担当刑事の番匠は、これを話すに足る人物だろうか。表現の自由は完全に守られ政府の悪口を言うことも書くこともできる。そして表現庁の主催で、「カワイイ博」が開かれることになる。番匠が公開処刑に失敗した反政府活動家の一派から、このオタクの祭典において表現庁官僚を襲う予告状が届く。番匠と組織との対決第二幕、そしてラストへなだれ込む!ミステリにしなくてもいいから、番匠の活躍をもっと読みたい。石持さんのSFやファンタジーも面白そう。
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独裁国家の「この国。」で繰り広げられる治安部隊とテロリストの闘い。
公開処刑から売春客殺害などの事件を繋いだ連作短編集。
最後はちょっと納得いかないところもあるけど、テーマの割には軽く読めて、面白い。
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テロリストと治安警察の戦い。やはり最後はこうなるかという感じ。日本の学歴競争社会や売春、表現の自由など問題にされる部分を書いているけど、まあどれも仕方ないよということで、ラストにつながるのかな。