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思想と実在 みんなのレビュー
- マイケル・ダメット (著), 金子 洋之 (訳), 丹治 信春 (監修)
- 税込価格:2,970円(27pt)
- 出版社:春秋社
- 発行年月:2010.6
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紙の本
存在の困難について
2011/01/06 09:23
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは大変面白い本だった。1996年に行われた講義をもとにした著作で、おそらくそのためだろうわりと広範な議論がのびやかに展開して、非常に興味深い内容になっている。私のような哲学の門外漢にとってはこれでも十分難解だが、しかしいわゆる専門書に比べると非常に読みやすく、ハードな部分を乗り越えると一気に読める面白さがあった。目次を書き写しておく。
第一章 事実と命題
第二章 意味論と形而上学
第三章 真理と意味
第四章 真理条件的な意味論
第五章 正当化主義的な意味の理論
第六章 時制と時間
第七章 それ自体で在るものとしての実在
第八章 神と世界
まあこれだけでほぼ内容は一目瞭然なわけだが、事実と意味と命題と真理の複雑に絡まった関係をときほぐすように整理していく冒頭から三章までの分析哲学的な議論は煩雑でかなりハードで、ここを読むのが一番骨が折れたのだが、しかしここを飲み込むと後はわりとぐんぐん読める。ポイントとなっているのはヴィトゲンシュタインとフレーゲの批判で、前者については「語りえぬものについては沈黙せねばならない」というテーゼを、「私の世界」のものであって「われわれの世界」ではない、と批判しているのが印象に残った。後者については第四章で細かく検討される二値論理の否定と真理条件的な意味論がかならず落ち込む循環論について、フレーゲを越えた一般的な議論につなげ、そこから弱い実在論と真理概念の必然性へと展開するあたりはははあ成程と思わせられるものがあった。物理学者的なプラトン主義に対する批判などもあって、ちょうどこないだペンローズを読んだところだったので嬉しくなってしまった。第六章ではプライヤーの時制指示子の扱いについて検討し、時間と実在についての省察がのべられるのだが、ここのほとんどスコラ的な展開は凄い。最後の二章は、つまるところ人間が理解できるのは一種の人間原理的な、人間に把握できる限るかぎりでの世界の像であり、それ自体のものとして(固有の感覚なり知覚なりに依存しない)実在する「世界そのもの」とは絶対的な断絶がある、という認識が語られ、しかしなお純粋な「真理」概念が必要であるとするところから、神の存在が導かれる。さらに不可知なものとしての(というか、人間的認識を越えるものとしての)神という観念を認めるのならば、自然科学的な決定論が意味を為さないことについての論証があって、これが大変面白かった。ある意味でデカルト、スピノザ、カント、ヘーゲルをきちんと読み直したいという気分になる本かもしれない。
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