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みんなのレビュー88件

みんなの評価4.1

評価内訳

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紙の本

ニューヨークのブロンクスは現在でも治安の悪さが言われるところだが、この物語の1950年代から70年代は差別と貧困と犯罪が無限に循環するごみためのような町だった。この物語はブロンクスを舞台にした少女・イヴの誕生から社会人として自立するまでの戦いと成長の記録である。

2010/12/13 00:09

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

本著はふんだんに使われる比喩やアイロニーなどが抽象的で難解な言い回しであり、また直訳的硬さが気になる。そんな文体であるのだが、ゆっくりと進む物語によくあるいらだたしさこらえながら、じっくり読んでいくと著者のメッセージの深い意味あいが見えてくる。

多彩な登場人物の個性が際立つ。

生まれながら耳が聞こえない主人公の少女・イヴ。
イタリア系移民の父・ロメインは盗みと麻薬の売人という町のチンピラ程度の悪であるが、家では暴力で妻・クラリッサを支配する残忍な男である。
クラリッサは夫の凄まじい虐待を受け入れるだけの女である。ただ忍耐することにより、この苦悩がいつか神の恩寵で報われることをぼんやりと期待しているのであるが、その日が来るとも思われない。
やがてロメインは少女イヴを麻薬取引の手先に使い始める。

もう一人の凶暴がヒスパニック系、薬物中毒のロペス。この男もまた町のチンピラ程度である。
服役中、彼の妻は薬物中毒により狂人となり、挙句の果てに刺され、野垂れ死にする。
二人の間の子、やがて耳が聞こえなくなる幼女ミミは善意の黒人・ドーア夫妻の里子として庇護されている。
釈放されたロペスはミミの周辺へその暴力の矛先を向ける。

イヴの恋人であり、ミミとおなじドーア夫妻の里子であるチャーリー。プエルトリコとジャマイカ人の混血、彼はロメインとロペスの暴力を排除する献身者として登場する。

しかし、なんといってもこの物語で異彩を放っている個性はドイツ移民の女性、フランである。両親が残したキャンディストアの店主。だが彼女の過去もまた過酷なものである。ナチス政権下で実施された断種法により強制的に施術をされ、心と肉体に死ぬまで消えない傷を抱えている女性だ。アル中でもある。

彼女はロメインやロペスを社会的弱者であると指摘し、その弱いものがさらにひ弱いものを敵として暴力を振るう、この世界の仕組みを憎悪している。弱いものが生きていくための制度などありえないと透徹している。弱いものに恩寵があると信じられているキリスト教を否定する。むしろ宗教こそこの不条理を助長していると指摘する。そして善意の人々はこの問題の解決には無力なのだと。教会で祈るクラリッサに対しては、現実にある敵は夫のクラリッサであり、敵と戦う勇気を持てと諭す。

しかし、ロメインとロペスの狂気による犠牲者が周囲に相次ぎ、読者は主人公たちの救いの見えない境遇にいたたまれなくなってくる。

大人になったイヴ、繰り返される暴力との戦いに疲れ果てたイブにフランの血のにじむ人生哲学はなにをもたらすのか。

「世の中には測り知れない苦悩を抱えている人たちがいる。そんなことはあなたにもわかっていることは私にもわかっている。でも言わせて。人生というものは悲しみに耐えることよ。勇気とはその悲しみを克服することよ」
「人生は不毛ではないなんて、そんなことはたわごとよ。わたしたちはなんのために悪戦苦闘しているのか。それがあなたの質問なら、わたしの答は………次の一日のためよ。無味乾燥で血も涙もない(答だとあなたは思うかもしれない)?(でも)あなたは壊れたりしない。わたしがそれを許さない。さあ、目を覚ましてしゃんとして………。」

人生に意味はない。ただ明日を生きるために生きるのだ。その勇気を持て………と。
彼女はまさに孤高のニヒリストだと私には思われる。その悲愴と哀切がここに凝縮されている。彼女の言は、究極の絶望に落ち込んだ人がその崖っぷちでなお生き抜くための数少ない道標であるかもしれない。しかも、特定の地域、特定の時代の話としてではなく、その説得性には今も通用するようなリアルさで迫り来るものがある。

やりきれないストーリーに読者までが鬱屈をつのらせるが、そのストレスは大きな盛り上がりの中で解消されることになる。最近読んできた外国物ミステリーではお目にかからなかった気分のいいラストであった。

一方で神の不在を告発しながら、実はここで虐げられた女たちこそ真実の神なのではなかったか………との余韻を残して。


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2010/09/29 22:41

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