紙の本
小さな人が大きく造る
2010/10/14 23:21
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももんじゃ05号 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1 本書は、土木学会誌という堅そうな雑誌に載っていたやわらかそうな話をまとめた本である。本書の絵等を担当しているのは、ワールドタンクミュージアムとかで戦車の絵を描かれていたモリナガ・ヨウ氏、専門的な解説をされているのは、元はゼネコンの鹿島で働いてて、現在は研究者の溝渕利明氏である。
2 本書で、著者たちはいろいろなところに行っておられる。北は北海道から、南は沖縄まで全国津々浦々である。
工事現場は、道路やダムのような公共事業もあるが、セメント工場やコンクリート製品工場、天然ガスタンクなど民間の施設もある。
場所は、地方が多いかと思ったら、結構首都圏、東京近辺の現場が多い。羽田空港、大橋ジャンクション、東京外環道路、中央線三鷹・立川間とかである。東京は、もはや土地を広げるには、地下に潜るか中空の空間を使うかしないとだめなのかもしらん。いっそ、地下駐車場みたいなものをもっと造れたら、交通事情よくなるかもなあ。まあ、用地の確保に死ぬほど金がかかっちゃうけど。
3 土木や建設というのは、古い産業と言われているが、いやいや技術革新もすごい。石神井川の拡幅工事している話があるが、住宅地のど真ん中で川の整備である。くい打ちとかやったらうるさそうだが、さにあらず。今は、ねじ込み式でくいをうつんだそうな。うるさい音が出ない。
また、数年前に柏崎刈谷原発の付近で地震があったが、直下型地震何するものぞ、原発は普通に制御できた。当時、日本のマスコミは火事が起きたとかで騒いでいたが、それはもう設計で織り込み済みなんだそうな。元から、重要な場所を保護し、あんまり重要じゃない場所はすこしくらいなんかあってもしょうがないという設計なんだそうな、そうしないと、無駄に金がかかってしまうし、復旧も早めにできる。世界的には、日本の技術すげえという話だったって。
さらに、こぼれ話も面白い。法面に、植物を植えて土が崩れるのを防ぐそうだが、イッペン、ニンジンを植えたところがあったそうである(多年草なので、一年中草が生えてる)。しかし、こういうおいしい野菜は、たちまち動物がたべちゃって失敗とか。隅田川の橋の形が全部違うが、これは、設計者が趣味で作ってよかったからだとか。なんて牧歌的なんだ。
4 何を隠そう私は、現在の商売をしていなければ、多分、ゼネコンか物流をやっていた。現に、学生時代には、就職活動で、ゼネコンや海運陸運の会社にいっていたのである。結局、何を血迷ったか現在は別の商売をしているが、土木建設はいまでもやってみたい。法律って、最初から最後まで紙の上の話なので、ゼネコンとか物流のように、自分がやったことが目に見える商売ってすごくうらやましいのである。
まあ、いまやりたいといっても、法務部とかで契約書チェックとか、株主総会の対策とか、公正取引委員会と闘ったりとかして、やることがあんまりかわらんかもなあ。
投稿元:
レビューを見る
以前に『図解 東京の地下技術』(ISBN:4761259787)を読んで、シールド工法の仕組みや、埋め立て地への基礎の打ち方など、土木の概要は知った気になってたんですが、では、実際に土木工事をするにあたって、工事の種類によってどんな現場になるのか?どんな重機や機材が必要なのか?どんな所に気を遣っているのか?という観点が多すぎず少なすぎず伝わってきました。
最初はモリナガ・ヨウさんのイラストを漫然と眺めて雰囲気だけを楽しんでいたのですが、各記事1ページ目の「どんな工事」「工事のポイント」に目を通した上で溝渕教授の補足説明を読んだ途端、それぞれの工事はどんな感じのプロジェクトだったんだろうという方向に意識が変わっていったのが、自分でも面白かったです。
第2部の「土木の基礎知識」も分かり易く面白いし、GD高速道路ゴシックがオシャレだし、これで1,500円は非常にお得だと思います。
投稿元:
レビューを見る
イラストが細かくて楽しい。普段見れない作業シートの奥側や、絶対関係者以外入れない場所が興味深くてワクワクする。
投稿元:
レビューを見る
図書館で新刊棚から。
こういう知らない分野の本をぼけーっと読めるのが図書館のメリット。
巨大ジャンクションとか、行ってみたくなる。
投稿元:
レビューを見る
土木学会誌に2007年1月~2009年3月まで掲載されていた「モリナガ・ヨウのぶらっとぉ土木現場」を集めたもの。
土木とは、一言でいえば皆の生活を支えているもの。街作りの基本は土木。
しかし、土木と建築が分かれているのは日本だけ。海外では「Civil Engineering」という一つの分野である。なお、「Architecture」は建築のアートな部分になる。
川崎市はごみの分別が緩い。なぜなら、高炉セメントに特化した川崎市のセメント工場で全て燃やしてしまうからだ。しかし、プラスチックのみはNG。プラスチックにはたくさんの塩素が含まれており、鉄筋を錆させてしまうからだ。
投稿元:
レビューを見る
近年、政治によって不当に貶められてきた土木業界が、その誇りを取り戻すべく放った一冊・・・と言っても言い過ぎじゃない。土木技術の凄みと自然環境・住環境にも配慮するレベルの高さが精緻なイラストとともにビンビン伝わってくる。『あの橋(道・トンネル・ダム)はお父さんが作ったんだ』と言われたことのある人は是非読んで欲しい。
投稿元:
レビューを見る
(2011.04.28読了)(2011.04.20借入)
「週刊ブックレビュー」で紹介された本です。図書館の本を検索してみたら、あったので借りてみました。紹介されなければ、出会うことのなかった本です。
普段の生活の中で、風景の中に工事現場が眼に触れることは結構あるけど、工事現場の中に入り込んで、工事中の様子を見ることはありません。そういう意味では、土木作業の工事現場に入り込んでそこの様子を見せてもらい、イラストにしてルポする仕事はおもしろかったろうと思います。
イラストを担当したモリナガヨウと専門家の溝渕利明先生の取材時のお話が添えてあるので、興味深く読むことができました。できることなら、一緒に見に行きたかったな!
構成は以下のようになっています。
第1部、土木現場見学
第2部、土木の基礎知識
土木現場は、道路、川、橋、トンネル、ダム、鉄道、駅、地下鉄、空港、原子力発電所、タンク、さらに土木現場で使用される原料の工場として、セメント工場、鉄筋工場、コンクリート製品工場、が取り上げられています。
●トンネル工事(24頁)
シールドマシンの先端「切羽」で土をガリガリ削るわけですが、この部分は気圧を上げておかないと脇から水が入ってきてジャージャーと漏れてしまうので、「圧気」しているんですね。これを「圧気工法」といいます。シールドマシンがなかった昔は、トンネルを掘るときにはもっと広いスペースを圧気して、そこに人間が入って掘ったんですね。
●オオサンショウウオ(31頁)
オオサンショウウオって、目の前の動いているものは、何でも噛み付くみたいですね。
●セメントの作り方(35頁)
セメントは、石灰石と粘土と「珪石」というガラスの素みたいなものを原料にしています。セメント作りは、まずこの3種類の原料に鉄を少々加えて、粉々にすりつぶすところから始まります。この後の工程で焼くんですが、焼く時にはなるべく細かくなっていた方が火の通りがいいんですよ。原料をすりつぶすには「ミル」という粉砕機を使うんですが、ミルの中には原料の他に小さな鉄球をいくつも入れるんです。すると、機械を回したときに鉄球同士がぶつかり合って、原料を効率的に粉砕できます。
●川崎市のゴミ(36頁)
案内してくれた方によると、ずっと高温で焼き続けなければいけないので、地元からごみをもらってそれを燃料にしているそうです。川崎市にゴミの分別がないのは、この工場(㈱デイ・シイ)で焼いてしまうからだという話でしたね。
●コンクリート(43頁)
「コンクリートは乾くのではなく、化学変化で固まる」
コンクリートは「養生」しなければいけないんです。だから、常に水を撒きます。
●土木5分野(68頁)
土木には基本的には5つの専門分野があるんですよ。土、構造、水、材料、計画で、これを総称して「土木5分野」といいます。例えば、材料はコンクリートや鉄筋などのことですね。また、計画については、都市計画という分野があるんですが、都市を設計する場合、基本的には国や県が主導で、その地域の政治と経済の両面で考えながら進めることになるんです。
●もの作り(98頁)
土木の面白さは、子供���ころ皆さんが感じていたもの作りの面白さそのものであると思います。
●土木とは(99頁)
土木とは何なのでしょうか?土木とは、一言でいえば皆の生活を支えているものなのです。人が住むためには、道路を作り橋を架け、地ならしをし、電気、ガス、水道、下水、通信といった生活に欠かせない設備を用意しなければなりません。
●土木と建築(101頁)
「土木は地面から下を作り、建築は地面から上を作る」
土木構造物は地下が多いのですが、橋やダムのような施設は土木の分野です。また、建築でも建物の基礎は建築の分野です。
●普請と作事(101頁)
日本では古くから「普請」と「作事」という言葉があります。普請は石垣や濠などの建設、城郭の設計を指す言葉で、今でいう土木事業に相当するものです。一方、作事は皆さんがよく知っている大工仕事に相当するものです。
●ダム(109頁)
日本の場合、ダムは短期間に集中する降水を溜めて洪水を防ぎ、渇水のときに放流して資源として利用することを目的としているわけです。
(2011年4月30日・記)
投稿元:
レビューを見る
イラストレーターである著者が、土木の専門家とともに、日本各地の土木現場を尋ねたルポ。「土木学会誌」掲載の連載を一般向けにまとめたもの。
日経サイエンスの書評で拾った本です。
読んだ自分は、土木に関しては(も)シロウトです。ついでに言うなら、著者のモリナガ・ヨウさんのこともまったく知らず(^^;)。
それでも楽しく読めました。
土木に関して、やっぱりシロウトであるモリナガさんが、ひたすらシロウト目線で「いやー、すごいなー」「へー、そうなんだ」と感嘆している横で、一緒に「うわー」と眺めている、そんな感じで楽しめる本です。
見学した現場もいろいろで、駅や鉄道、セメント工場、ダム、地下道、トンネル、原発などなど。今まで見たこともない、多分これからも見られない土木現場のあれこれが詳細なイラストで描かれています。
現場の全容が感覚的にいまひとつ掴めないので、ちょっとわかりにくい部分もあるのですが、社会科見学・工場見学のノリで読み進められます。
「トンパック」だの「ふとんかご」だの、現場で使われるマニアックなものの名前を一度知ると、あちこちで目に付くようになる、という著者の感覚、ああ、わかるわかる、という感じです。それで著者が自分の子どもに「あれは『トンパック』というものだ」とか教えているのがとても楽しい。
巻末に、一緒に見学に回った先生による、土木に関するミニ講座付。
*いろいろ「すごいなー」があったけれど、一番すごいと思ったのは、埋め立て地で使う「サンド・ドレーン工法」。ヘドロでふにゃふにゃな土地を埋め立てる前に、まず水を抜いて地盤を少し固めるんだという。そのため、砂の杭を入れて、毛細管現象で水を吸い上げるんだそうで。へぇーーーー。
*技術ってすごい!!
投稿元:
レビューを見る
全国各地の土木現場を、写真とイラストでレポート。道路・トンネル・河川・ダム・鉄道…。地面の下でも、高層だったりして。島根の原発もあります。
投稿元:
レビューを見る
子供のころ、砂場でまず、山を作り、その後トンネルを掘るというのに熱中していた時期を思い出しました。また、側溝に土を入れてダムを作り、決壊させて遊んでいたことも。土木って、誰でも親しみのあるものなんですね。まあ、それは所詮子供の遊びで、現実の土木の世界は本書で十分堪能できます。この本も、たなぞうでであった本です。(実は、大学受験のとき土木学科も受けていたなんて、今の会社の人に言っても信じてもらえないだろうな)
投稿元:
レビューを見る
想像以上に興味深く読めた本でした。
写真では表現できないところがイラストならではの表現力で強調され、大変分かり易く質の高い土木の紹介本になっているものと感じた。
私は土木の専門家ではないが、以前ゴルフコースとダムの建設に関わったことがあり、そういった仕事に携る人々の思いも一部に見られてうれしかった。
投稿元:
レビューを見る
イラストレーターのモリナガ ヨウ氏が土木学会誌に連載した現場見学記。技術的な課題にもきちんとふれられています。
投稿元:
レビューを見る
土木学会誌の連載の集成。
2010/9 発売という時期から原発の現場も収録されており、資料的によかったと思う。
土木の現場は、機会があったら万難排して見学すべきだと思う。一期一会ということを思う。
投稿元:
レビューを見る
イマイチ。
イラストレーターの方がいろんな土木工事の現場へ行って取材するという本なのですが、素人の方が数時間眺めるだけなので取材の仕方がとても浅い。
投稿元:
レビューを見る
土木学会誌2007年1月号~2009年3月号に連載された「モリナガ・ヨウのぶらっとぉ土木現場」を元に加筆・修正したもの。土木現場見学のイラストルポ
登録情報: D01.01*M 58420 開架