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紙の本

鼻がのびる。

2010/07/26 08:40

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 木の人形ピノキオの鼻はうそをつくとのびるが、私たちはどうも自慢すると鼻がのびるようだ。
 よく天狗になっていると揶揄されるが、天狗のように鼻が天をつく。けっして見たり聞いたりしても、気持ちのいいものではない。
 今回の書評はそんな天狗の鼻を書いてみた。

 「朝日俳壇」は「一年五十一週」朝日新聞に掲載されている人気コーナーであるが、毎週六千句以上の投句があるという。大串章、長谷川櫂、稲畑汀子、金子兜太の四人の選者が十句ずつ選ぶので、掲載されるのが毎週四十句という「狭き門」である。
 「俳句好きなら一度は選句されて、赤飯を炊いて祝いたい」といわれるほどであるから、俳句愛好者にとっては憧れの地だ。
 その一年間の掲載作品を集めたのが本書。
 新聞に載って、こうして本になる。
 俳句を趣味にするものにとってはたまらない。

 その「朝日俳壇」に私の句も採用された。今までにも何度か投句していたのだが、まったく選ばれない。そのつど、嘆息し、自分の才能のなさにしょげかえっていた。
 初めて掲載されたときも、やはりダメかと投句をやめようかと思っていた。だから、なにげなく開いた新聞に自分の句を見つけたときには心臓がぱくぱくした。
 そして、鼻がのびた。
 それから、この年に、あと二回掲載され、どんどん鼻がのびた。
 もちろん、不採用の句の方がうんと多いのだが。

 芥川龍之介の『鼻』の主人公禅智内供の鼻は、上唇の上から顎の下まで垂れ下がっているくらい長い。食事のときには小僧にその鼻をもちあげてもらわないと食べれないくらいだ。
 そんなみっともない姿になりたくはないが、本書に掲載されたわが句を見ながら、鼻をのばしている。

 やっぱり天狗の鼻はみっともない。

 ◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。

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