紙の本
遺言のような一冊
2023/01/25 12:56
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
「自らの歴史を再考するとき、わたしたちは単に過去を見ているのではなく、現在を見ているのであり、文明と言われるものの恩恵から取り残されてきた人たちの視点から見ようとしているのだ」
そんな歴史観を踏まえ、第二次世界大戦時、爆撃手として参戦していたハワード・ジンが、アメリカの原爆攻撃50周年に述べた反対論考。
ハワード・ジンは、当初新型爆弾投下を喜んだが、後に広島を訪れて、その被害を知り、自らの過ちに気付いたという。
原爆投下や「正義の戦争」という前提そのものに対する異議申し立てとして書いた「ヒロシマー沈黙をやぶる」と1945年4月に自身が参加した攻撃任務について書いた論考を組み合わせ、亡くなる一カ月前に完成させたという。
「歴史の公式見解と戦争の正当化に対する、一つの小さな反逆行為である」という言葉通り、偉大な歴史家の遺言のような一冊である。
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広島への原爆投下とフランス・ロワイヤンへのナパーム弾空襲。
違うようで繋がっているふたつの爆撃。
第二次世界大戦時、著者もパイロットとして参加したロワイヤン爆撃は、そこにいたドイツ軍をやっつけるための攻撃だけどちょっとそれてひとつの街が壊滅しちゃった☆という不幸な事故として語られるできごと。
ドイツ降伏のわずか3週間前の話。
実際の効果よりもそこにいる人の命よりも優先される、面子や士気や示威や「新しい武器つかってみたかったんだもん☆」という思惑。
そんな馬鹿な話を止められない責任の拡散と、考えない(考えさせない)下っ端たち。
なにそれアレの話?それともコレの話?古今東西の話の中で見たことがありすぎる景色だ。
日本やドイツは(自分たちのために)負けてよかったと思うけど、悪い奴はああやって倒せばいいんだという前例を作ってしまったという点で、世界のためには良くない負け方だったのかもしれない。
軍服を脱いでからヒロシマについて書かれた本を読んで、初めて自分がしたこと、自分がまいた爆弾の下にいた人たちに思い至ったという筆者の、贖罪の念に突き動かされるような平和への強い思いが凛として厳しい。
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もう報復の戦争や爆撃はしない。この連鎖を止めなくてはならない。
連合軍はユダヤ人を救うために戦争をしただろうか。ルーズベルトとハル国務長官はドイツの反ユダヤ政策に公に反対することを渋った。
トルーマンはジャップがソ連の介入でなくアメリカの爆弾によっておしまいになることを望んでいた。
戦争と進歩という概念は今や時代遅れになった。近代戦争がむなしいものであることは今や明白である。
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ハワード・ジンの遺作となった広島長崎への原爆投下の米国の思惑を、自身の行なったヨーロッパでの爆撃についてと、二つの話を一冊にまとめて、無差別爆撃の非情さとそこに至る政治との係わりをジンらしく追求します。
戦争を終わらせる為に必要な犠牲者だったのか、時の政治権力者のプロパガンダにより騙されてします事の恐ろしさ。
今ここに有る原発問題等にも繋がってくる大きな問題提起を考える事になる手軽に読める(民衆のアメリカ史に比べて)良い本です。
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爆撃 (岩波ブックレット)
(和書)2013年09月20日 11:34
ハワード・ジン 岩波書店 2010年8月4日
爆撃による無差別殺戮。それが戦争の手段であり目的とされることを自らの爆撃手経験を踏まえて書かれている。
他者を手段であると同時に目的(自由な人格)として扱え--とはカントの言葉である。これが戦争では殺戮が手段となり目的となる。まったく異なったものになってしまう。本質的に反戦運動でなければならない理由だと思う。
主要メディアにでてくるアメリカ人ではこういう人はなかなか出てこない。こういったハワード・ジンのような人がいるということ(いたというべきか)が僕に勇気をくれる。
自分自身に何ができるのか?それを考えたくなった。カント『実践理性批判』も読みなおしてみたい。
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『民衆のアメリカ史』の著者・ハワード・ジンの遺作。
#英語 THE BOMB by Howard Zinn
米軍による広島への原爆投下と、フランスのロワイヤンへのナパーム弾爆撃を検証した本。帯には「ヒロシマ・ナガサキ65年の夏に、日米同時刊行」とあります。 #読了