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正義論で知られるあのマイケル・サンデルの生命科学本。
遺伝子操作によって人間を増強(エンハンスメント)することの是非を問う。
訳がやや固すぎるきらいがある(「被贈与性」など)が、まあ意味はとれるだろう。
著者の言わんとすることは、共同体生活の危機である。
遺伝子操作にも教育やスポーツ鍛錬、薬物投与による能力の強化(エンハンスメント)にも本質的な違いはない。しかし、遺伝子操作によって、人間が子どもの才能を設計できるという「選択」ができることで、天賦の才への尊重が薄れ、かつ、障害や高齢、能力の低い子どもへの「寛容さ」が薄れる。すなわち、能力が個人の自己責任へと帰すことで、社会は相互扶助と連帯感を失っていく、というもの。
この視点は生命科学倫理としては斬新であろう。
欧米のキリスト教義的な「胚は人格である、ゆえに治癒のために胚は破壊することは殺人行為」論については、胎児にまで成長しない胚は、いわばドングリとその木の関係に例えて、これを退けている。
本としては薄いのですぐ読める。
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なんか感情的にもろ手を挙げて賛同することはできないけれど、実に緻密で計算されつくした議論が展開されていて、サンデル先生さすが、もうしびれちゃう。
そして訳者による解説もいい。サンデルの議論をシンプルにまとめ、さらに多角的に検討するための視点を提供してくれる。
非常に良い本である。
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「ハーバード白熱講義」で注目されたマイケル・サンデルによる「エンハンスメント」問題に対する考察。エンハンスメントとは健康の維持や回復に必要とされる以上に人間の機能を向上させることを目指した試みのこと。ドーピングもそうだが、予備校教育まで含まれる。治療目的を超えての医学技術の行使は許されるのかといった生命倫理学上の問題を検討した本。
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端的に言えば、人間が自分たちの身体を作り変えることがどこまで許されるのかということになるのだろう。
もちろん明確な答えなどないが、バイオエシックスに関する思考訓練の教材として有用な書であると思う。ただし、内容的に少し古く最新の知見が反映されているわけではない。
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私のようなものに献本ありがとうございます。正確でよみやすい訳。
しかしまあ第5章の議論がうまくいっているとはとても思えない。っていうかひどい議論だわね。
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB0336708X
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題名に惹かれて購入。向上心を持たなくてよいよ、ということではなくて。努力しなくてよいよ、ということでもないし。無理しなくてよいよ、ということでもない。そういう理由でこの本で僕は楽にはならなかった。そんな理由で本を読むなと僕は僕に言いたい。副題が目に入ってなかった。
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遺伝子エンハンスメントに関する生命倫理の本。驚きの事実が満載だった。(例えば、クローン技術は何年も前からビジネスに使われていて、飼い犬のクローンを作る費用より、猫のクローンを作る費用の方が圧倒的に高額。詳しくは本書で。)
また生命倫理の諸問題について、それぞれ異なる立場の考えも紹介されている。問題の解がスイッチのように切り替わるので、便乗していると、次の瞬間には破壊される。そのため考えさせられる内容となっている。彼の主張は一体なんなのかと思うが、背後には彼のメッセージが滲んでいる。実力も運のうち。
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自己決定権とは何か。嬰児や胎児にそれはあるのか?胚にはあるのか?
どんぐりと樫の木は同じものだが違うという表現が心に残る。
倫理的な側面と政治的・感情的な側面を分けて考えるべきか、それとも感情を踏まえて考えるべきか。