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蟻族 高学歴ワーキングプアたちの群れ みんなのレビュー

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紙の本

「蟻族」(イーズー)、すなわち「大卒低所得群居集団」たちの「下から目線」による中国現代社会論

2010/11/18 13:04

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「蟻族」(イーズー)というネーミングを考案し、はじめてかれらの存在を目に見えるものとした本格的な社会調査の記録である。昨年2009年に出版されたこの記録は、中国ではベストセラーになり、「蟻族」というコトバが一気に拡がったという。本書はその日本語版である。

 調査対象は、首都北京の「大卒低所得群居集団」、平たくいうと大卒だが低所得層で、都市と農村の境に立地する賃料の安くて狭い集合住宅に数万人単位で群居し、部屋をシェアして集落のなかで暮らしているワーキングプアたちのことだ。「蟻族」という表現を、私が初めて耳にしたのは数ヶ月前のことだが、それにしても卓抜なネーミングである。まるでその姿が手に取るように見えるではないか。
 「蟻族」はいわゆる「80年后(バーリンホウ)」とは世代的にほぼ完全に重なる、「改革開放」の1980年以降生まれの現在30歳以下の若者たちである。ただし、「蟻族」はあくまでも大学卒のインテリ大衆であり、同じく地方出身のワーキングプアといっても、「民工」や「農民工」といった下層労働者層とはまったく異なる存在だ。
 中国政府の政策により「知識社会」に備えるべく大量に設置された大学で学んだ若者たちであるが、しかし現実は彼らが夢見た姿とは大違いであった。労働需要を上回る大学卒業生供給の結果、北京のような大都市では、権力もコネももたない彼らが 職を見つけること自体が容易ではなく、たとえ仕事が見つかってもキャリアアップにはつながらないものばかりだ。「蟻族」としての生活を送ることを余儀なくされたかれらに共通するのは、そんなはずではなかったのにという思いからくる「剥奪感」。まさに「大学は出たけれど・・・」の状態だ。

 そもそも公的な統計データのないのが「大卒低所得群居集団」の世界である。アンケートによって収集したデータにもとづく定量分析と、ディープ・インタビューによる定性分析は、編著者たちが私費も投入して行った苦労の産物であるが、たとえ置かれている状況が大きく異なるとはいえ、「同じ中国人の同世代の若い研究者たちによる同世代の若者たちの調査」であったことが、好結果をもたらしたのであろう。
 とくに後者のインタビュー集「群居村取材レポート」は、等身大の若者たちのリアルを描きだして実に興味深い。隣の国の若者たちの姿を手に取るように理解できるのは、本書のもとになった調査がすぐれたものであるだけでなく、よみやすい日本語になるよう工夫をしているからだろう。

 副題にある「高学歴ワーキングプア」について、この表現は日本では文系の大学院以上の高学歴者が職を見つけられずにいる状態を表現するコトバとして作られたものだが、中国の現状はむしろ「大学大衆化」がもたらしたものであり、ニュアンスは大きく異なることに注意しておきたい。また、編著者は「日本の読者へ」のなかで、「蟻族」は日本では自発的な選択である「フリーター」にあたるといっているが、これもまた実際とは大きく異なるように私には思われる。
 大学大衆化と大学院大衆化という違いはあるが、中国も日本もともに、経済政策と文教政策と労働政策がお互いチグハグなまま生み出された悲劇であるといえようか。日本以上に深い社会矛楯を抱えた中国であるが、しかしながら「蟻族」たちは、成熟社会に生きる日本の若者たちよりも、就学生として日本で働く中国人の若者たちに似て、むしろたくましく生き抜いているように思われるのだ。

 中国の若者たちの「いま」を知るうえで、遠藤誉による『中国動漫新人類-日本のアニメと漫画が中国を動かす-』(日経BP社、2008)と『拝金社会主義中国』(ちくま新書、2010)とあわせ読むことを薦めたい。多様な若者たちの姿を知ることによって、現代中国についてより深い理解が可能となることだろう。

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紙の本

働けど働けど

2010/11/14 13:30

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

先だって尖閣諸島の中国の領有権を訴える大規模な反日デモが中国の地方都市で頻発した。ニュース映像は、反日をアピールする若者たちを映していて、彼らのことを「八〇後(パーリンホウ)」と紹介していた。つまり、1980年代に生まれた世代。ちなみに1990年代に生まれた世代は「九〇後(ジウリンホウ)」というそうだ。

「蟻族」は、「八〇後(パーリンホウ)」で、「改革解放後に生まれ、-略-中国経済の急成長と社会の大きな変化を目撃してきた」世代だとか。「戦争を知らない子どもたち」をもじるなら、「ビンボーを知っている子どもたち」が、「八〇後(パーリンホウ)」。「ビンボーを知らない子どもたち」が「九〇後(ジウリンホウ)」なのだろう。

で、「蟻族」って何だ?「大卒低所得群居集団」のことだそうだ。学歴は高いが、まともに就職できず、つーか急激な大卒増による就職難で、家賃や物価の安い北京郊外の「唐家嶺(タンジャーリン)」などに間借り生活をしている。地方出身者で親元は裕福でないので、自活を余儀なくされている。劣悪な居住環境、信じられない交通渋滞などにも耐えながら、ひたすらステップアップするチャンスをうかがっている。

このあたりが、戦前の日本の下宿していた大学生と似ている気がする。

この本の最も魅力的なところは「蟻族生態図鑑」ともいうべき彼らの生い立ちや学歴、経歴などを取り上げているところだろう。もちろんそれぞれに異なるのだが、共通しているのは、成りあがろうとする、這い上がろうとする意志の強さ。たとえば一攫千金を狙って貯めていた金をはたくが、結局は騙されてしまう。友人だろうが、同朋だろうがスキがあれば騙す。でも再び立ち上がる。断じて、草食系じゃない。夢が北京に家を買うことだそうで、でないと、彼女と結婚もできないとか。いやあガッツがあるわ。

「蟻族」の不満が臨界に達したら、矛先が、反日から中国政府へといつ変わるかもしれない。大学まで出ているのに、なぜ希望する職業に就けないのか。なぜ高卒の労働者の方が現在の自分の給料よりいいのか。社会が成熟化すれば現在の中国共産党体制には、矛盾を感じて当然だろう。ましてや偏差値の高い蟻たちにとっては。

中身の濃い本である。ただし、訳文が少々ぎこちない箇所もある。大学の先生が翻訳したのか。それからレイアウトに工夫がなく、読みづらいのが難点だ。せめてタイトルと小見出しのポイントの差はもっとつけてほしい。できれば、タイトルの後にリード文があれば、読む人にもわかりやすくなるだろう。もっというなら、「蟻族」の面々を紹介するなら常に右ページの頭というレイアウトなら、とも思った。大きなお世話かもしれないが。

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2010/10/30 02:00

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