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紙の本
香水をめぐる殺人事件、何だかストーリー展開が奇妙だ
2010/11/14 21:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は浅見光彦が活躍する内田康夫作の推理小説である。本書では警察関係者も多数登場するが、内容は推理小説である。探偵の浅見が殺人事件の謎解きをする。もう一つの特徴は、本書の主題が香水にあるということである。
プロローグが付いているが、これがこの物語の背景である。一つのエピソードとして紹介されているが、これだけでは何のことやら分からない。そして、ある日浅見に封書が届く。これがこの物語の幕開けになる。
ところが、ストーリー展開はやや分かりにくい。登場人物が複雑で、新たに発生した殺人事件の裏にもう一つの殺人事件が存在していた。それも十年も前のことである。舞台はフランスであったり、栃木県であったりして、その辺りはいつものように多様である。
今回は主題が香水だけに、香水産業や業界にスポットライトが当てられている。さもありなんと思われる業界事情も描かれているが、真偽のほどは定かではない。香水の決め手は何であろうか。これは素晴らしい香水だと万人が認める香水があるのだろうか。匂いについての好悪は人それぞれであろう。これが同じ化学工業分野ではあっても薬品とは異なるところだろう。
そこで止めておけばよかったのに、別物と結び付けて香水の存在を違う方向に導き、無理やり殺人事件との関連を明らかにしようとしたところに多少無理があったと思われる。途中から展開に違和感を覚えるようになった。
さしもの内田もその場その場で展開を考えいき、最後に何とかまとめるという方式が破綻したのかと考えたが、実際は最後の解説で種明かしがあった。ここでは詳細は秘すが、大勢のアイデアを内田がまとめることになったというのだ。一つにまとめるのは相当苦労したようだ。
これを出版しようということになったらしい。率直に言って出来はよくない。作品の数がこれだけ多くなると、こういう類のものが出てきても仕方がないかとあきらめたくなるのだが、これを最後にしてもらいたいものだ。飽きないように登場する設定を広くしようという意欲は分かるのだが、無理はいけない。
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