紙の本
シンデレラはその後、幸せだったのかしら・・・?宮下さんの煌めく言葉で綴られたそんなお話です。
2010/11/22 09:06
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nyanco - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブランチでご主人のことをハンサムで、名前を見ただけでドキドキしたんです…と話していらした宮下さん。
転出届に書かれた夫の名前を見るシーンから物語が始まります。
4年前はあんなにときめいた夫の名前なのに…、たった4年でいったい何が変わってしまったのだろう…。
幼稚園児と2時間おきに泣く乳飲み子を抱え家事に育児に追われる生活。
あんなに好きだった夫なのに、彼のことを心配する時間はあまりなかったかも、そう一日8秒くらいだったか…。
子育てをしている、そしてしてきた女性に沁み込む言葉です。
こんなに一生懸命頑張ってきたのに、夫が鬱病になり、田舎の帰ろう…と言いだす。
いる、いらない…と引っ越し荷物と捨てる物を分けるシーンも印象的。
知り合いが一人もいない田舎に引っ越した梨々子、もうそれだけでも息が詰まるのに、子供たちがトラブルを起こすたびに学校から呼び出される。
よく彼女は耐えられるな…と読んでいて本当に辛い。
東京時代のママ友達からのメールの軽さ、でも自分には友達と呼べる人もいない。
息のつまりそうな毎日。
子育てと家事に流されていく…。
子育て中って外界との繋がりってママ友しかいないんですよね。
○○ちゃんのママでしかないけれど、それを失うと繋がりが何も無くなってしまう、自分は何者なのかという恐怖。
子育て中に田舎引っ越し、ママ友を失った彼女、その後のメールでそれがくだらない付き合いだったことが解る、しかし新たな出会いがない状況で更に自分の存在価値が見いだせない葛藤。
子育て経験者としてはヒリヒリと彼女の痛みが伝わってきます。
≪圧倒的な孤独の中で正気を保つために
鍵が欲しい。
どこかへつながるドアを開けたい。≫
≪ありがとう、と言ってもらいたい。≫
こんな言葉達にかつて同じ痛みを感じた者として掛ける言葉も見つかりません。
アサヒと出逢い、自分の存在価値を見いだせそうになった彼女、しかし彼女はアサヒの手を離し子供の元へ。
彼女の選択はとても宮下さんらしい。
でも彼女はいったいどうなってしまうの。
ヘルペスになっても夫は自分の病気ほどに心配はしてくれず、頑張っている彼女を誉めても労ってもくれない。
今までの宮下作品は普通の女の子が煌めく何かを見つけていく作品でした。
本作は『幸せに暮らしましたとさ…というお伽噺のその後を描きたかった』とおっしゃっていました。
夫の病気が完治する訳でもなく、彼女は現状を受け入れることで終わる…いえ、続けることを選んだラスト。
う~~ん、ちょっと辛い感じがしました。
無理やり納得させる感がしてしまって…
(もしかしたら私が読み違えているのかしら・・・)
何者にもならなくても良いかもしれない、でも、いつまでも輝いていたい…そんな思いを抱えていてはいけないのかしら。
だって彼女は私よりずっと若いのに…。
いつか写真館に輝くような頬笑みを浮かべた家族写真をみたい…と感じました。
相変わらず、言葉の紡ぎ方が本当に巧い作家さんだと感じます。
気になる言葉に付箋を付けながら読んでいたら読み終わった時には付箋だらけでした。
結婚前の若い世代はこれをどう読むのでしょう。
10年後なんて誰にも解らない。
でもきっとそこに光があると思って私は生きていきたい。
投稿元:
レビューを見る
<内容>田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。
投稿元:
レビューを見る
宮下まじーーーーーーーーーーーーーっく。
その2、
(『よろこびの歌』のがあとに読み終えました。)
良かった。
最初は、主婦のおはなしだったからそこまでのめり込めないかな?
とか思ったけど
やっぱり女の子はいつまでも女の子なのだ。
そしてそんな女の子のココロをほんとにリアルに描く
宮下さん素敵。
そりゃ宮下さんも女の子だからなんだけど
ここまで作品として伝えられるのがすごい。
まだ私には主婦の気持ちはわからないけど、
女性としての心情が文字から伝わってくるのです
そして最後に『田舎の紳士服店のモデルの妻』として
ひとりでふんばっている
梨々子に感動
これは主婦層読んだら大ヒット間違いない。
あー宮下さんもっとたくさんの人に読んでほしい読んでほしい読んでほしい!!!!!!!!!
ゴリ押しです。
そして個人的に歩人がかわいすぎてたまらなかった!
「おたあたん!」って!
投稿元:
レビューを見る
タイトルからもっと明るくかるい感じかな、と思ってたけど、実際は夫がうつ病になり、東京から田舎へと島流し(梨々子いわく)にあう話。
風変わりな息子ふたりと、田舎の紳士服店のモデルをする旦那との10年間。
アサヒとの掛け合いがすてきでした。ロマンチックで、きゅんとなる
それと歩人の描いたたのしいかぞくの絵、見たい!笑った!
洗練された文章のなかにあるほっこり感。さすが宮下さん。おもしろかったです。
投稿元:
レビューを見る
田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語(「BOOK」データベースより)
主人公におおまか共感はできないんだけれど、そこここに散りばめられた心の機敏に、思わずハッとさせられる事の多かった一冊。
宮下さんは、こういうの書くのがホントうまい。
投稿元:
レビューを見る
タイトルとジャケで読みました。
が、登場人物に全然魅力を感じなかった…。
のっぺらぼうのまま読み終えました。しゅん。
投稿元:
レビューを見る
自分が結婚して子供を産んで、主人公と同じ立場になったらまた読みたいと思う。
今の私には理解しきれず流し読みしてしまう部分が多かったです。
何も無い単調な展開の中で主人公の考え方や周りの環境が少しずつ変わっていく姿は、現実社会に投影してちょっと気持ちが明るくなれた。
投稿元:
レビューを見る
+++
田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。
+++
会った瞬間に輝きを感じ、「この人だ!」と思った夫が鬱病を患い、会社を辞めて田舎に帰るという。東京以外で暮らすことなど思ってもいなかった梨々子だが、夫とふたりの幼い子どもと共になにもない北陸の田舎町に移り住むことになったのだった。物語は、十年日記に記されるようにして進んでいく。
夫との、子どもたちとの、田舎の近所の人たちとの、東京時代の知り合いとの、さまざまな関係のなかに、自分の価値を見出せずに入る梨々子の、ただ息を吸って吐いているうちにきょう一日がまた終わった、というような無為な空しさは、だれにでも思い当ることがあるのではないだろうか。だが、彼女を見ていると、なにかを成さねばならぬという大げさに言えば強迫観念のようなものに自分からどんどんがんじがらめにされているようにも見えて痛々しささえ感じてしまう。しかしこれは前半の梨々子である。日記も終わりに近づくころの梨々子は、少しずつではあるが何者でもない自分を認め、しあわせを全身で受け止められるようになっていくのである。潤の手を引いて横断歩道で立ち止まっている思い出の場面で一気に熱いものがあふれた。普通がとても丁寧に描かれた一冊である。
投稿元:
レビューを見る
結婚四年。
爽やかで健やかで賢くて仕事のできる夫がうつと診断された。
田舎へ帰ろう、梨々子は夫の言葉を受け入れた。
特別だと思っていた自分の家族が足元から崩れていく。
うつ病を抱えた夫、無口な何を考えてるかわからない二人の子供、笑わない隣人、田舎との関係。
こんなはずじゃなかったのに、ヒリヒリする焦燥感を感じながら時が過ぎていく。
結婚伊念日、そして誕生日、迷い、悩み、とまどい、笑い、それでも何とか前を向いて歩いていく。
宮下さんは人の内面の複雑でナイーブな感情を独特な感性で描いていくのがうまい。
もし僕がうつになったら僕の家族はどうするんだろう。
そんなことを考えながら読みました。
この作品は読み手が男性と女性で物語の受け止め方がまったく違ってくるんだろうなぁ~と強く感じました。
投稿元:
レビューを見る
社内のエリートと大恋愛して、結婚して、社宅住まいで、2児の母。自分の容姿に自信を持っている『東京の人』が、良くも悪くも個性的でない田舎の町に住むことになる10年間。
梨々子が最後に思う「ふつうの幸せ」というものがあまりにも大きいと私は思う。『特別』という言葉はとても甘い囁きだけれど、それは自分を縛ってしまう枷でもあるし、そうやってだれかと比べてしか自分の存在を認識できないことは悲しいことだ。「一番下じゃなきゃいい」 誰かを貶めて自分を立てたところで、所詮は虚しいだけ。普通に見える家庭になにが潜んでいるかわからない。
迷って悩んで流されて、問題を先送りしてでもいいから、生きてかなきゃならない。たまには妄想でも恋をしてはしゃぎたいし、感謝の言葉もかけてほしい。頭の中にはいつだっていろんなことが混在して同列に並んでいる。
自分の中の「生きてる」ってことが、本当にちょっとしたことで感じられるなら、平凡に見える毎日だって、自分にとっては『特別』なのだと思う。変わっていくものを受け入れることで、見つけられるものもある。刻んでいくものがあるなら、それだけで前に進んでいる。
投稿元:
レビューを見る
うつとなった夫と息子2人で、夫の実家がある田舎で暮らすことになった主人公。
田舎とは言っても田園が広がる田舎らしい田舎というわけではなく、大きなデパートや高いビルのない、私立校お受検の心配のない、地方の小都市。
取り立てて変化の無い10年を送ることになるが、家族4人が平凡に暮らしていくには、これしかなかったのかもしれませんね。
(変化を求めるならば、都会に戻っていたのでしょうから…)
投稿元:
レビューを見る
なんということはない日常なのだけど面白かった。ただもう少し起伏があるほうが好みではある。この作者の他の話も読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
結婚して4年、夫が鬱で退職して帰郷することになります。夫の田舎は北陸の中でも一番目立たない県、即ち福井県です。そこの県庁所在地とありますから福井市ですね。もちろん宮下さんの故郷でもあります。
東京を発つときに友人から10年日記を手渡されます。結婚記念日のある10月が10年が2年ごとに描かれていきます。
ストーリーはどうということはありません。夫の鬱もそれほどたいしたことはないようだし、息子らもいろいろありますが、それほど深刻なことになるわけではありません。田舎と言ってもマンション暮らしですからご近所付き合いで閉口するということもないし、姑ともめるわけでもありません。
だいたい八王寺に生まれて東京人だとか都会育ちだとかいうのが、地方人にはちょっと笑えてしまいます。もしかしたら、宮下さんはそういう人たちに冷めた目線を送っているのかもしれませんね。
関東の人たちの都心にいかに近いかへの競争心に呆れたのももう30年以上前になります。その頃よりは少しは治まったのかな。多分あまりかわらないのではないでしょうか。
そういうことも含めて、自分は自分らしく、日々を編むように生きていくことの大切さを丁寧に描いています。
投稿元:
レビューを見る
【収録作品】0年 かすりの梨々子、田舎に立つ/2年 潤とピアノと二人三脚/4年 たくさんの間違い、ひとつの出会い/6年 歩人とたのしいかぞく/8年 誕生日が待ち遠しい/10年 とりあえず卒業おめでとう
痛々しく、苦い読後感は梨々子につい自分を重ねてしまうからか。
投稿元:
レビューを見る
ある意味「平凡」な主婦の物語。主人公の「普通な主婦」像が生々しい・・。主人公梨々子は私の中にも居る、確実に・・。梨々子に共感したり、理解する度に、あぁ、私も歳をとってきたんだなと再認識させられマス。間違いなく20代前半では分からなかった感覚です・・。