それぞれのアット・ホーム
2010/12/04 08:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『幸福な家庭はどれも似たものだが、 不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである』 とは、作家トルストイの言葉だが、本書を読んでも果たして同じ言葉を言えるだろうか?
4篇それぞれに登場する家族たちは、「どれも似たもの」ではなく「いずれもそれぞれ」の形を成している。表題作では、家族それぞれがある目的を持って他人同士で暮らしているし、『日曜日のヤドカリ』は子連れの女性と独身の男性が再婚したところに、女性の前夫と地の繋がらない連れ子が絡む。『リバイバル』では、映画の『パイラン』或いは、浅田次郎の『ラブ・レター』にも似た話を持ちかけられた、バツイチのしょぼくれた中年男と外国人女性がつかの間の家族を形成する。『共犯者たち』は、妹の子供の体に傷を見つけた男性が、彼女の児童虐待を疑い、思いがけない家族二代の姿を発見する。
従来、優しいイメージが強かった本多作品にしては、途中暴力的な場面も登場して、意外な印象を持つ読者もいるのではないか。しかしご心配なく。いずれの作品も人の優しさを信じられる作品に仕上がっている。
結局は、他人が見て幸福か不幸かを決めるよりも、家族の一人一人が考える幸福の形は違う。そして血の繋がりを重視する従来の家族観よりも、心で繋がっていることを重視する本書の「いずれもそれぞれ」一見不幸に見える家族たちの方が、実は幸せなのではないか。そして心の繋がりを重視することは、血の繋がっている家族においても大事なことではないかと思えてきた。
核家族化が進み、血族だからこその凄惨な事件が起きている日本に、ぽぉんと優しい提言が投げかけられたような作品であった。
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そこは人がほんとうに帰るべき場所なのだろうか? ふぞろいで歪つな4つの家族とそこに生きる人々。2010年エンタテインメント小説、最高の収穫!
《2010年10月31日 読了》
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いろんな事情を抱えた家族の物語、4つの話をそれぞれで違う切り口で見せてくれる短編集。基本的には洒落のきいたテンポ良い文章で、さくさくと読ませてくれて、そしてどれもに抱くのは、血のつながりの温かさ、という根本的に当たり前のはずのこと。あまりにも身近だからつい忘れてしまいがちなそのことを、ときにおかしくときに切なく描いて思い出させてくれます。
最初の家族がずっと出るのかと思ったら、そのお話だけでちょっともったいないなと思ったんですが、そのほかの3つの話のキャラクタたちもなんとも味のある人々ばかりで楽しかったです。
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軽快でさわやかなエンディング・・・本当の家族の絆とは何か?について考えさせられた。「相談しなくたって、力を借りに行かなくたって、兄貴がいると思うと救われている。最後にはこの人を頼ればいいだって、そう思えるだけで全然違う。もしっも何も出来なくても、すくなくとも私と一緒に悩んでくれる、悲しんでくれる。怒ってくれる」「忘れるんだよ。年を取るとよ、嘘じゃなくて、本当に忘れていくんだ。色んなことを。自分がそうしたことは覚えていても、何でそんなことをしたのか、さっぱり思い出せねえ。・・」オチを途中多少は予測はしたがやはりハッピーエンドはいいもだ。「七瀬ふたたび」の後だけにその心地よさが際立つ。
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表題作 at Home 他3篇からなる
“家族”を題材にした短編集
「あなたは僕の友達になりたいんですか?」
という言葉、答えがYesでも悪くないと思えてしまう
家族とはこうあるべきだというこだわりポイントって
たぶん人それぞれなんだなと思わされる
こだわるのはきっと手に入れてこれなかったものだから
登場人物のこだわりポイントを
自分の琴線に触れるものと触れないものとで
振り分けていくのも自分が見えて面白いと思う
自分の理想の条件なり項目を全て満たしていても
“理想の家族”ができるわけじゃないんだな…と思った
家族なんてとりあえずやってみなくちゃわかんない
続けてみなくちゃわかんないものなのかもしれない
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at Home
寄せ集めの、家族。一滴の血の交わりもなく歪で生業も真っ当じゃないけれど、でもまごうかたなき家族。
オチ前がすごく深いなと思った。だって、たった一行分の空白。オチなのに、改ページももうちょっと開けるも、何らかの装飾記号もなくたった一行。でこのオチ。たった一行なのに、30枚くらいの白紙が挟んである感じだよ!
他も家族にまつわるお話。家族って、なんだろう???
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血の繋がりだけでは無い家族を描いた短編集です。
特に2話めの敬語を遣う義理の父と娘の話が好きです。特に娘が秀逸。
読み終わると、気持ち良い溜息が出ました
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いろんな家族のおはなし。「日曜日のヤドカリ」が特に好き。story seller 2で読んだはずだけどあまり記憶がない。むしろat Homeのほうが何かで読んだ印象が。
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本の内容
そこは人がほんとうに帰るべき場所なのだろうか?ふぞろいで歪つな4つの家族とそこに生きる人々。涙と冷酷と波乱を存分にたたえたエンタテインメント小説。
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家族っていいなぁ…と思える短編集。気軽に読めて、コミカルな感じもあり、最後は泣ける。本多さんの小説は独特の空気感みたいなものがあってどれも好きだけど、これが一番良かった。
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少しいびつではあるけれど、”家族”という方向には真っ直ぐだと思われる4家族の話。
各キャラキターがそれぞれきちんと個性を持っていて、
”ドラマみたいだな~” というのが全体を通しての感想です。
現実世界には、こういう家族(人々)は存在しないと思います。
ただ、単なるフィクションではなくて、しっかりと心に残るものがある。
人の行動にはそれぞれ何かしらの意味がある。
本多さんの作品を読むのは2作品目ですが、この方の文章, 話の展開の仕方は嫌いじゃないです。
(2011/1/6 読了)
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2010/11/2
小さい頃によく行った近所の本屋さんにて購入。
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本多作品3作品目。この人の作風結構好きだなぁ。
わかりそうでわからない人間関係とか、登場人物の性格とか、焦らし加減が絶妙!
4つの家族の在り方を描いた今回の作品。
世の中にはいろーーーんな家族があって、その関係性や、在り方は様々。そして絆は強く、独特なものがあると思う。
読み終わったら、ほんのり心が温かくなる本多さんらしい作品でした。
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家族の在り方について考えさせられる短編集。
四つの短編それぞれにどこかいびつな家族が出てきて、それぞれの絆が描かれる。
登場人物たちの「家族」への思いが、自分に改めて家族という存在を認識させてくれます。
個人的には「at Home」と「日曜日のヤドカリ」が好き。
本多孝好の綺麗な文章で紡がれる優しい物語は一読の価値ありです。
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歪んだ家族の温かな日々、4編。水中メガネを用意するほどじゃないが、いい話だ。個人的には第一話の家族が好きだ。
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4つの短編が入ってるが、どの家族の形もとても強くてとても素敵。血が繋がっているだけが家族じゃなくて、心が繋がって初めて家族になれるんだと改めて思いました。
普通の感覚だと不幸だと言われかねないことを、さらっと当たり前のように書くのが上手い。そしてそれが本当に不幸なのか幸せなのかは、その本人にしかわからないと言われている気がした。