紙の本
『海』の重要性を知るきっかけ。傾聴必須の一冊
2011/03/20 22:02
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る
講談社+α新書刊の『日本は世界第○位の○○大国』シリーズ第2作。
このシリーズは、知っているようで意外と知られていない日本の特徴や話題に焦点をあて、一般知識としての情報提供から、主題にまつわる問題提起までを詳述した書籍である。
著者は作品ごとに異なっており、テーマごとに各分野を専門とする者の手で執筆されていることも特徴だ。
本作の焦点は『海』。
世界的に見て国土の狭い日本だが、陸だけではなく海洋を含めると、実は「大国と表現しても良いほどの広大な面積(容積)を保有している」とされている。
より具体的には、日本の領海と、経済的権益を保有する排他的経済水域とを足した面積では世界第6位、同領域における海水量(体積)で比較すると第4位の「大国」であり、面積が小さいゆえに各産業面や資源保有量で他国に劣後していると見なされがちな日本は、一方で豊富な海洋資源を潜在的に有しており、それらを活用することで、更なる成長可能性を秘めている、という著者の持論が展開されている。
本作は全4章立てであり、第1章は海にまつわる用語説明や歴史的経緯、海洋資源に関する一般的な知識についての解説、第2章では海洋資源うち鉱物資源の活用やそれを巡る各国の動きの解説、第3章では海洋資源のうち水産資源についての基本知識とその活用にかかる国内の取り組みの解説、結びの第4章ではそれら豊富な日本の海洋資源を巡る領土問題について解説されている。
全編読み終えた後の感想としては、各章とも一般に馴染みの薄い用語等の解説を終えた後で著者の持論が述べられていることから、知識のない者が読んだ場合でも腹に落ちやすい。
元々、著者は海賊問題の歴史的経緯や国境問題を含む離島問題こそ専門であるが、専門外の海洋資源・水産資源にかかる積極活用を、今後の展開への期待という形で各種解説を加えているため、多種多様で広範にわたる内容が面白く、また、大変に分かり易い。
また、著者の専門分野についても、本人にとっては今更な領土問題に関して、簡潔ながら逐次解説が記されており、全体的に読みやすさを意識した作品となっている。
『日本は世界第○位の○○大国』シリーズ共通の特徴であるが、「主題についての知識を、読者が有していない」ことを前提に執筆された作品であるため、例えば中学生・高校生程度の理解力でも、十分に内容理解が可能となっている。
見方によっては、そういった低年齢層にこそ意識を持って欲しい主題であると言えるかもしれない。
これは本作の最大の特長でもあるが、近年問題が深刻化している領土・領海問題について、終章である第4章で取り上げられていることからも、著者の取り上げたい主題の在り処が明白と言えよう。
作品冒頭で領土問題に簡単に触れつつ、その領土問題の重要性を説明するための手法として、歴史的経緯や政治・外交問題をその切り口とせず、敢えて海洋資源・水産資源の有用性を焦点に作品を構成している点からも、『話の焦点はどうあれ、領土問題について知識と関心を持って欲しい』という著者のメッセージ性の強さを感じる。
たまたま私は北海道出身ということで、特に北方領土問題についての歴史的経緯を知ってはいるが、そういった事情がなければ、領土問題について知識を持つ層はそう多くはないだろう。
対外的な問題から、日本は諸外国ほどには、自国の領土防衛に繋がる歴史教育を国民に施せずに今日に至っており、『尖閣諸島や竹島問題、北方領土問題は何が問題になっているのか』ということを尋ねられた場合に、正確な回答を出来る人は小数に納まる状況と断じても良い。
しかし、日本と諸外国とで争っている領土問題については、少し調べるだけでも、領有権を主張するに十分なる根拠を有していることが分かる。
人によっては意外に感じる話かもしれないが、しかるべく国際司法裁判所にて相手国と係争したならば、日本の勝率が高い案件という表現の仕方も可能だ。
勿論、国益が絡む話とはいえ、元々関心の薄い中『領土問題に関心を持とう!』と声高に叫んだところで、恐らく国民の関心は高まるまい。
昨年発生した尖閣諸島沖での巡視船衝突事件などは好例であり、当時は大きな話題となったが、その注目が必ずしも持続しているとは言えない状況でもある。
そうした中にあって、本作は必ずしもナショナリズムを煽ることを目的にはしていない。
ただし、領土問題という、ある側面からは外交問題に直結するテーマについて、政治的な問題から話を切り離し、豊富な資源を有する領域としての海洋を取り上げることで、読者のより強い関心を高めたいという狙いは十分に伝わってくる。
例えば『北方領土は日本の領土だ。だから守ろう』と一方的に言われたところで、関心を抱き辛いのが実情であるが、『日本の海には豊富な資源があります。今後活用も期待できます。だから海に注目しよう』と言われれば、なるほど少し勉強してみようか、と意識を促されることもあるだろう。
ここで話が巧みなのは、日本の海に注目し、その鉱物資源・水産資源の豊富さを知った後には、必ず上述の領土・領海問題に話が突きあたることであり、最初はどんなに関心のなかった人も、最終的には領土・領海問題の本質を学ばざるを得ない。
付言すれば、資源の豊富な海について関心を抱いた者は、必然、領土・領海問題にも関心を抱かざるを得ない。
著者の狙いはどうあれ、作品を読了すると、最終的には『日本は世界第4位の海洋大国』という事実よりも、「第4位の海洋をいかに活用し、いかに守るか」ということの方がより重要であることを理解させられ、また、その事実に対して、自然と関心を高められる内容となっている。
敢えて作品の難点を挙げるとすれば、章立てから見る外形としては「海洋資源・水産資源は有効活用できる。今もしている」点に対して期待の高まる構成であるが、実際に中身を読んでみると、コストの問題や技術的な問題から、「海洋資源・水産資源を真の意味で有効活用するには、まだ時間とコストが必要」という大きな課題が浮き彫りにされている。
つまり、「1:へえ~海洋資源等は有効活用できるんだ(本作)→2:でも、その資源を巡って日本の海が脅かされているの?(領土問題への関心)→3:皆で日本の海を守ろう!(国民意識の醸成)」という流れを仮に目的にしていた場合に、「1:」でその目論見が崩れ去る可能性が高い。
例えば第3章の水産資源についての内容は、私も見知っている内容であったが、自分の知りうる知識の範囲でも、また、本作の内容を読んでも、声高にこの点を強調するには、根拠の土台が緩いのが実情だ。
評するに、本作は『海』の重要性を知るきっかけになり得る作品である。
傾聴必須の一冊であり、一読の価値は大いにある。
無理なく読み進めることのできる作品なので、本作は一般教養を身につけるという意味で、幅広い読者にお奨めしたい作品といえる。
ただし、タイトル通りの内容を期待すると、肩透かしに遭う可能性は高い。
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日本の海洋国家としての指針がコンパクトに纏まっている良書でした。
日本が海水量において世界4位、領海免責で世界6位の海洋国家であることに触れ、海洋を1.海底鉱物資源、2.海水中の資源活用、3.水産資源の活用に分けてそれぞれの魅力について触れています。
海底鉱物資源に関しては別著「海底鉱物資源—未利用レアメタルの探査と開発—”http://booklog.jp/users/hase62/archives/4274502872”」が詳しいですが、コバルトリッチや海底熱水鉱床、また海水からのレアメタル・レアアース、ウラン、金銀白金の抽出、海底に眠る天然ガス、石油資源の掘削、他にも水産資源(魚介類)の活用について書かれています。
またタイトルの通り、領海、排他的経済水域、大陸棚や低潮線、海洋基本法などの国際基準・法律に関する事柄や韓国の竹島の占領、中国や台湾の尖閣諸島への利権拡大、北方領土問題に関する対策案も触れられています。韓国の一般人は国策とバイアス教育に煽られて過激化し、知識人の国外流出が増えているなどエピソード付きです。領域問題は全国民が注視すべき内容でしょう。
また海洋バイオマスを利用した海中資源抽出、浄化、洋上風力発電、養殖技術、波力、潮力、海洋温度差発電などの技術状況も書かれてます。
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陸地面積でこそ世界で61位の日本だが、領海と排他的経済水域を足した面積では6位、さらに海水自体を資源と見なして推定体積で比較すると4位にまで上昇するという。
海水に含まれるウランなどの鉱物やメタンハイドレードなどの海底熱水鉱床を始め、潮力発電や漁業資源、海藻によるバイオ燃料など、国策としてもっと海洋資源を開発すべきだという主張。
先に読んだ「日本は世界5位の農業大国」もそうだが日本の潜在能力を活かす方策はまだまだありそうだ。ただ、そこに投資する余裕がなくなりつつある。今のうちにアクションを起こさないと。
政権争いにかまけている場合ではないのに、今の日本の政治を思うと非常に残念な状況である。
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日本の権益という視点から海の広さ(排他的経済水域)や「体積」をとりあげるという発想に惹かれて読んだ。著者がいっていることはなるほどそういうこともあるかと思いつつも、著者自身の思想性の低さにはがっかりしている。(福島原発の事故後に読んだという点は差し引いても)海水からウランはいくらでもとれるので原子力発電は大丈夫とか、バイオエタノールへの高い評価といった点は、私からすれば容認できるものではない。
海の豊饒なめぐみによって私たち日本人が生かされてきた、そしてこれからも生かされていくことは間違いない。著者が憂える漁業従事者の高齢化も深刻な問題である。その点に異議はないのだが、先に書いた通り、著者の社会に対する視点というものが透けて見えてしまった点ががっかりである。
ブックオフ行き。
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日本には資源が大量に眠っていた」
なぜこの本を手に取ったか?
「日本の海にはとてつもなく大きな可能性がある。
エネルギー資源のみならず、レアメタルまでもある。
そういった情報をまとめている参考図書を探していて本書を発見した」
流れ
日本は海洋大国
↓
日本の海に眠る資源
↓
日本の未来のために日本人の手で日本の海を守れ
『尖閣諸島周辺には、イラクの原油の推定埋蔵量に匹敵する
1000億バーレル、約700兆円分もの石油が
埋蔵されていると見られている』(P. 4)
イラクといえば、世界でも1、2位を争うほどの産油国です。
そのイラクと同等程度の油田が尖閣諸島周辺にあるとなれば、
日本の未来は相当明るいのではないでしょうか。
この埋蔵量は、日本がまったく輸入に頼らなくても
60~70年間は自前でやっていける量です。
『94年分の天然ガスが眠る海』(P. 73)
さらに、メタンハイドレードなどのガス田が日本近海にはあります。
これらをすべて合わせると、日本のガス消費量の約100年分だそうです。
『日本の陸地、すなわち領土の面積は世界で61番目だ。
しかし、日本が他国を排除して、
経済的なさまざまな権益をもつ海域である「排他的経済水域」と、
領海を足した面積は、世界で六番目の広さになる』(P. 16,18)
『「深さ」の要素を加え、三次元的に見るとどうなるか。
驚くことに、「海の大きさ(=海水の体積)」を比較すると、
日本の海の大きさは、世界で四番目となる』(P. 19,20)
日本は小さな国であると思われていますが、
実は結構大きな国です。
人口でもトップ10に入るくらい大国です。
(岡崎大五氏著「日本は世界で第何位? 」参照)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4106102404?ie=UTF8&tag=ezweb443-22&linkCode=xm2&camp=247&creativeASIN=4106102404
比較対象が、極端に大きなアメリカだったり中国だったりするので、
日本が小さく見えてしまいますが、
陸地だけでいっても、約200カ国存在する国々の中で
61番目というのは、健闘している方だと思います。
さらに、海をいれると世界で6位の面積を誇ります。
これはすごいことです。日本は海洋大国なのです。
そして、著者は海の体積までも計算にいれて、
日本は第4位の海洋大国であると言っています。
しかし、海の体積がそれほど重要なのか、疑問に思うでしょう。
『海水中にはウラン、コバルト、リチウムなどのレアメタルが、
微量ながら含まれている』(P. 42)
『原発500年分のウランが毎年』(P. 58)
ということから分かるように、海水の体積が多ければ多いほど、
海水中に含まれる資源確保の余地があるということです。
ゆえに、海水の体積を計算に入れるのは、
資源確保の観点から、ごく自然なことなのです。
特にすごいのがウランを海水から取り出す技術です。
コストは現在のウランより2倍程度と高いのですが、
ウランはここ20年で数倍に高騰しており、
このままいけば、
海水から取り出した国産ウランの方が安くなる可能性があります。
また、現在のコストでも、火力発電よりは低コストであり、
国産ウランで原子力発電をしても採算はとれるところまで来ているのです。
現在、それをしないのは、
ウランは輸入した方がまだ安いから、それだけの理由です。
もし、資源争奪戦がはじまり、ウランが高騰した場合、
日本は、火力発電の比率を下げ、原子力発電の比率を上げることで、
現在の料金と同程度のコストで、電気を使用し続けられるでしょう。
『レアメタルを国内で採取できる可能性はあるのか。
それは海にある。「海底熱水鉱床」と
「コバルト・リッチ・クラスト」だ』(P. 81)
エネルギー資源が、日本にたくさん眠っていることはわかりましたが、
実は、エネルギーだけでなく、
レアメタルも日本近海には、たくさん眠っているのです。
ただし、やはりコストがネックとなって、
市場での競争は困難です。
しかし、他国が日本にレアメタルを売らない、となっても、
コストを度外視すれば、ある程度のレアメタルは確保できるのです。
『日本沿岸は「世界三大漁場」』(P. 107)
いま、エネルギー資源、鉱物資源が
日本にはたくさんあると言いました。
しかし、それだけではないのです。
食糧確保の観点から、漁場としての海は重要です。
日本には暖流と寒流が交わる潮目があり、
良好な漁場をもっているのです。
よって、海洋大国日本は、
エネルギー資源、鉱物資源、水産資源の宝庫であり、
壮大な可能性を秘めていると言えます。
『無人離島は、目を離すとたやすく占領されることもあるのだ。
この点からみると日本の離島の管理は、脆弱といわざるを得ない』(P. 154)
これだけの魅力的な海です。
諸外国が黙ってみているはずがありません。
いろんな国が日本の領海を狙って侵犯してきています。
領海侵犯は警告後発砲するなんて、
ロシアやアメリカなどの諸外国では当たり前なんですが、
日本は、領海侵犯された上に逆に銃撃を受けたりします。
政府が弱腰過ぎて、対応が甘く舐められているのです。
そのしわ寄せがきて、現場で日本を守っている人たちの命が
本来なら不要の危険にさらされているのが、大変気の毒でなりません。
『日本の海は、広くて大きい。
そのため、無限の可能性を秘めている。
この海を利用し、この海とともに生きていくことこそが、
日本人の未来への道なのである。
そのためには、日本人の手で海を守らなければならない。
目をつぶっていると、あっという間に東シナ海となり、
オホーツク海は未来永劫ロシアの海のままだ。
いずれ、日本海は「東海」と呼ばれるようになり、
韓国の海にならないとも限らない』(P. 182)
そのとおりだと思います。
日本の未来は、日本の海にかかっています。
これからの時代、日本は海を守らずして、未来はありません。
日本の海の可能性を、全ての日本人が知り、
意識して守っていけるようにすべきだと思います。
ぼけっとしていたら、競争の激しい国際社会で、
日本はせっかく手にできたはずの権益を、
みすみす他国に奪われかねません。
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[甘味読書]
今回は、
ブックプラザ小野原店で、
本を購入しました。
「中国の5倍の海!
今資源大国になる日本のすごい未来!!」
帯に、
このような文字が躍っていました。
最近、いろいろと外交で問題がありますが、
ちょっとでも希望になる情報があればと、
購入しました。
この本を読んで、
日本を囲む海が、
大きな資源であることを改めて実感しました。
日本独自の文化や言葉。
サラリーの語源や、
お清めの塩の話などは、
とても興味深いものがありました。
この本では、
歴史上の人物に対して、
改めて敬意を表したくなる人たちについても述べています。
遣唐使
フラシスコザビエル
鑑真
どの人も、
交通が不便な中で命がけで海を渡った人たち。
私たちが、
今当たり前に思っていることが、
命がけの人の行動によって存在することを、
実感します。
そのほかにも、
・メタンハイドレードの商用化
・洋上発電
・波力発電
・ドコサヘキサエン酸(一時流行りましたね)
・魚文化と日本人の体質との関係性
・漁業に雇用創出の希望
・九時五時で1,000万の年収
・パヤオ漁とは
・海資源からバイオエタノール
・離島を守る
など、
興味深い記述が盛りだくさんです。
海洋資源は、
自然体災害の鉱脈であるとの記述がありました。
かつてのテレビ番組の、
活断層がある場所においしい水があるとの
内容を思い出しました。
地震が多い地域には、
酒蔵があり、湧水があります。
灘、伏見、越後など・・・。
しかしながら、
その地域は、過去に大地震が多く発生しています。
その話が陸の話なだけであって、
海も同じ。
人は、
自然体災害から、
資源を提供してもらっているのだと感じました。
最後のあとがきに、
清水港についての記述がありますが、
それもとても興味深いものです。
とりとめのない内容になりましたが、
少し難しい内容もありますが、
とても興味深い本なので、
ぜひ読んでください。
読んだ後、
日本の恵まれた環境に、
感謝の思いでいっぱいになりました。
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農業5位の本の続きで読んだ。農業ほどインパクトはなかったが、海をテーマにいろんなアプローチがされていてためになる。領土問題の所は勉強になった。歴史的経緯とか、隣国の領土問題のことなど知らなかったことが多かった。
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海洋国家の日本
海洋に囲まれた日本には
未来を生き抜くための財宝が眠っている。
・海底資源
・海洋資源
・水産資源
資源豊富ゆえに、
排他的経済水域を越えた
領土領有権の争いが国家間で起きてしまう今日。
中国・台湾・韓国・ロシアとの
領土問題の概要も歴史的変遷も含めて簡潔に記載されている。
今後の日本は海洋国家としてどうしていくべきか。
著者の山田吉彦氏独自の見解も記載されている。
驚くべきは、事実として、海洋国家であるはずの日本において
未だ海洋法が十分に整備されていないことや、
海底資源が豊富に存在するとは言われながらも、
発掘作業、研究が実用化しきれていないという現状がある。
自民党や民主党は超党派で
海洋法の整備を進め、国家予算も組み入れているものの、
本格的に動き出したのがここ数年の話。
食料や資源の確保といった観点で、
日本を囲む海洋をいかに利用していくか、
そのために今後具体的にどうしてかねばならないか、
日本国家としてのビジョンを明らかにしつつ、
領土問題でぎくしゃくする近隣諸国との交渉戦略も、
夢物語を語るだけでなく、
「実行」を過程に入れた長期的なビジョンも示していかねばならない。
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「海洋国家」日本について書かれている本です。
日本の国土面積は世界第61位ですが、領海・排他的経済水域(EEZ)の面積は世界第6位、「二次元の面積」ではなく、「三次元の体積」でみると世界第4位なんですね。
知らなかった。
本書ではエネルギー、鉱物資源、水産資源など海の資源に焦点を当て、その有用性について説いています。
また、それを争う周辺国との関係も著者の主張を踏まえながらわかりやすく述べています。
それぞれのテーマが重いため、ざっくりとしか述べられていません。
しかし網羅的に述べられており、雑誌的感覚で読めば面白い一冊です。
筆者の作品では「日本の国境」が有名なので、機会があれば読んでみたいです。
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2010年9月7日,中国漁船が,沖縄県尖閣諸島付近まで操業し,その後,海上保安庁の巡視船に衝突.(冒頭の一文)
結局,何が言いたいのだろうか…
海洋大国の良さがいまいち伝わってこない.
最終的に国境問題の議論になってしまった.
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惜しい。資源、水産品、エネルギー……、海を巡るさまざまな問題を網羅。新書で扱うには、テーマがあまりにも広大だったのかもしれません。あと、本書で少しだけ触れられていた“利権”について、もう少し読みたい感じでした。
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「海洋」という観点から日本の強みと可能性を滔々と述べた本。
ざっと主要な内容を箇条書きにすると、
・日本の領海+EEZの広さは世界6位で、海水体積は米、豪、キリバスに次ぐ4位(1580立方㎞)。
・その「日本の海」の中には尖閣諸島の1000億バレル、800兆円分の石油の他、ウラン、レアメタル(プラチナ、インジウム、コバルトなど)、医療や環境などの科学分野で応用できる生物やバクテリアなどが豊富にある。
・日本の海には世界三大漁場の一つである北西太平洋の漁場があり、地球全体の海の生物の内14.6%(33629種類)が生息している。
・近年日本は、2007年の海洋基本法の制定、2009年の海洋管理のための離島の保全管理の在り方に関する基本方針の策定などを通じて今までなかった「海洋政策」の観点から国家戦略に取り組んでいる。
・他にも2008年には国土の1.7倍の大陸棚確保に向け、海底地形の変化を示すデータを国連大陸棚権限委員会に提出している。
・漁業従事者は97年に約28万人、07年に20万人と減少しつつあるが、養殖漁業などの新しい形態は成長の可能性が高く、参入のチャンスはある。
・2006年、韓国は日韓漁業協定に基づく話し合いで、EEZの基点を竹島とした。これが認められると日本は約2万2千平方㎞のEEZを失うが、その代わりに日本が長崎県の肥前鳥島を基点とすれば、約3万6千平方㎞のEEZを獲得し、その付近に眠る地下資源も得ることになる。そのためにも肥前鳥島を開発すべきである。
といったことが書かれていて、海のロマンと日本の可能性について想いと考えを巡らしたくなる内容である。個人的に『日本は世界5位の農業大国』より興味深く、勉強になった。
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日本の海洋国家としての位置づけや可能性、現在の技術や領土問題など平易な文体で幅広く抑えているな、という印象。かといって内容が薄いわけではないので、いろいろな所で気になって調べていたトピックスを頭の中で整理してUTDするのにとても良い本でした。
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62点。日本は国土自体はは小さいが排他的経済水域と領海を足すと世界で6位。さらに深さの要素を加えると4位にもなる。「日本の海」というくくりだったら何でもいいや的に書かれた一冊。
日本の海は鉱物資源が豊富だしたくさんのエネルギーも産むよ。そればかりか美味しい魚も高級魚もとれるよ。魚を食べると体にいいんだよ。竹島や尖閣諸島は日本のもんだよ。あと北方領土もね。海があれば未来は明るいよ。ご親切に考察も少なめ。内容がなさすぎて伝わらない一冊。
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日本が豊かな海洋国であることをエネルギー、レアメタル、食糧といった点から述べている。またその実現のためには、一層の技術進化と国際間の問題を視点に入れていかなくてはならないとある。
2011年3月の震災前だったら素直に受け取れたのに・・・・と思います。
早く震災から復興し、これらの事をまた考える時がくれば、と思います。