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紙の本
それぞれの理由
2006/05/07 15:19
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
電撃文庫初のハードカバーということで、若干躊躇しましたが、作者の前作「塩の街」が好きだったので、購入しました。結論、買ってよかった。
空の中に何かいる。不可思議な航空事故を調査していく過程で判明していく事実。それとは無関係に思えるのどかな場所で子供が拾ったもの。それぞれの場所にいる無関係な人間達がリンクしていくとき、これまで人類に知られていなかった存在が歴史の表舞台に出てくる…
綿密な取材に基づくリアリティとファンタジーの融合。同じ事件を見つめる子供と大人の立場の衝突。親子で読めば、それぞれの見方ができそうな物語です。
紙の本
真の意味で生産的な生物の在り方って?
2010/03/03 09:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに読んだファンタジー、というよりもむしろSFなのだろうか?そう思うくらい話はリアルを残しつつ、SF(=少し不思議)フィクションだ。
まず主人公と怪物(?)白鯨との対話がとても小気味良くて面白い、そしてリズム感がある。主人公のこのこ気味良い会話やすっぱ抜けた性格が、読んでいるものに退屈を与えないのだろう。単なるアクションものとも、子供の悪戯やヒミツゴト、ファンタジーに留まらないパンチを持っている。
逆に言えば被害状況や街の混乱などの真実味というか切迫感がなかったのが残念でもあるが。
でもそういうところが気にならないくらいのテンポのよさに引き込まれ、最後までワクワクしながら読むことが出来た。
この中で深く考えさせられるのは、人間という動物性。自然界の中で人間がどれだけ特殊な生物かということ、それが客観的に白鯨という異性物の言葉を借りてつづれれている。あらゆる動物の世界にある「集団」と、人間のもつ「社会」「国家」とはどのような違いがあるのか。
人間だけが論理的な思考が出来る動物だと思い込んでいる人間が多いが、本書にはその論理性だけが優先された場合、どのような生物が生まれうるのかという、一つの実験的結果が示されているのではないだろうか。
日本が独自開発している超高空旅客機、そして自衛隊機と相次いで謎の墜落事件が起こる。ところ変わって同じころ、一人の少年がクラゲに似た不思議な生物と出会い、ソレと携帯電話で会話をすることのできることからいわゆる異性物との交流が始まる。
物語が進むにつれ、この未知なる生物を中心に墜落事故の原因と予想だにしない国家を巻き込む事件に発展していく・・・
必要最低限、過不足なしにサイクルを繰り替えし、連鎖を続けてきた人間以外の生物がまずこの地球に存在する。 人間は差別化をし、人と人とを区切り、囲い、国家を作り、分離し独自性をはぐくもうとする。主張し、他を排除することで自己を維持し高めることに奔走する。
その結果が戦争だったり差別だったり殺し合いだったりするのだろうけど。
そんな(白鯨にいわせれば)意味のないことだらけの人間性を随所に書かれている。これは人間がどれだけ「変態か」ってことか?(笑)いや、笑い事ではすまされない。
私たちは当たり前のことで日常を生きているから、今の世界が、人間性が、国があることや民族があること、戦争があることがすべて当たり前に思っている。白鯨からみれば非生産的この上ないことなのに、だ。人間の生物としての異常性。そんな中で平気な顔して生きている自分に警鐘を鳴らすべきだとふと思う。何も自然愛護者になろうというのではない。だけれども。
せめてもう少し自分の生きている社会がどんなものなのか、何が普通で何が以上なのか、見直そうと思う。