紙の本
新しい絆を求めて
2010/12/22 08:39
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2010年)の流行語大賞にも選ばれた「無縁社会」。そのもとになったのが2010年1月に放映されたNHKスペシャル「無縁社会」です。本書はその番組を核にして、その後の反響で製作されたNHKの放送内容を補いながら、まとめられた一冊です。
「無縁社会」とは、「つながりのない社会」「縁のない社会」といったことを指す造語です。単身世帯がかかえる「無縁死」という衝撃が大きな反響を呼びました。
「無縁社会」は、身寄りのないことを指してはいません。たとえ身寄りがあっても、彼らはその縁をもてないでいます。
従来、この国には「血縁」というつながりがありました。家や家族、親族といったつながりです。あるいは、「地縁」というつながりがありました。故郷や地元といった、その人にとっての場所的な拠りどころです。さらにいえば、「社縁」という、自分が勤める職場を介在としたつながりもありました。「無縁社会」はそれらのつながりを維持できない人々のありようです。
本書のなかにたびたび出てくる言葉があります。それは「迷惑をかけたくない」という言葉です。この言葉が意味することは、「無縁社会」を考えるにあたってはとても重要に思います。
この言葉の主語は明らかに「私」です。「無縁社会」に生きる人は自ら「血縁」「地縁」「社縁」に対し、「迷惑をかけたくない」という一言で「縁」を断ち切っています。
「縁」とは一方的に「迷惑をかける」ことなのでしょうか。「縁」とは「迷惑をかける」だけでなく、「迷惑をかけられる」ことでもあるはずです。「迷惑をかけられる」側が「縁」を切ることは想定できますが、彼らはそうではない。「迷惑をかける」ことだけを気にします。つまり、「迷惑をかけられる」、そして「面倒をみる」ということを想定していません。これはどういうことでしょう。
本書で紹介されている哀しくつらい「無縁社会」の現状をどう解決していくかという答えがそこにあるような気がします。
「迷惑をかけられる」生き方を選択することで、「絆」を取り戻すことに、新しい「縁」のつながりになるのではないでしょうか。
この本は新しい生き方を考える一歩を提供してくれています。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
人は一人で死んでいくものなのか
2011/10/18 20:17
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰にも引き取られず、自治体により火葬、埋葬された遺体、約3万2千人。NHK取材班による調査が明らかにしたこの数字。地縁も血縁も社縁も崩壊し、ひとりぼっちで死を迎える人が、日本で急増している。本書はNHK取材班がいわゆる無縁死が拡散しつつある日本社会を無縁社会とし、取材成果をまとめたものである。
本書を読むまで無縁死について偏ったイメージしか持っていなかった。都会に出てきた人で、仕事に邁進しすぎて過程を顧みなかった企業戦士か、生涯未婚の男女。前者は退職により社縁が途切れ、その時には家族との間に埋めがたい溝ができてしまい、離婚というパターン。後者は、様々な事情はあるが、生涯未婚が理由で無縁の死を迎えるパターン。本書にはどちらも登場するが、それだけに留まらない。
122~123頁にNHK取材班による聞き取り調査の結果が掲載されている。それは無縁死予備軍とも言える、団地に住まうひとり暮らしの人たちに対するもの。回答者の85パーセントは65歳以上とのことだ。彼らのひとり暮らしのきっかけは、「配偶者の死亡」が最多で56パーセント、「子どもの独立」が20.8パーセント、「未婚」が15.2パーセント、「離婚」が8パーセントという。
この調査結果は衝撃だ。配偶者の死亡、子どもの独立で一人身となった人が全体の75.8パーセント!当初、イメージしていた無縁な人びとの3倍もの割合を占めている。このデータは日本国中のだれもが無縁死を迎える可能性があることを端的に示している。
この事実に強い反応を示したのは、高齢単身者ばかりではなかった。NHKでのテレビ放送後に働き盛りの年代である30~40代がツイッターで自身の不安感を呟き始めたという。今の30~40代はロストジェネレーション、失われた世代とも呼ばれる世代。バブル崩壊に伴う就職難のあおりをうけて、いまだに非正規雇用という立場に追いやれている人が多い世代。テレビに映し出された無縁死の人びとや無縁死予備軍と自身の姿を重ね合わせ、先の人生に強い絶望感を抱いたようだ。
ただ、本書にはかすかな光明も示されていた。無縁社会を描いたNHKの放送後、番組に登場した無縁死予備軍の人と一度縁が切れた人たちが連絡をとってくることがあったというのだ。このことは一度無縁に陥り社会の外に放り出されたと絶望するよりも、自身から歩み寄ることの大切さを示している。縁は自らの努力で繋ぐことが可能なのかもしれない。
都会に雇用が集中し、人口も金のそこに流れた。しかし、血縁、地縁は断ち切れるようになり、社縁も退職と共になくなる。誰もが無縁死を迎えかねない今の世の中。その実情を理解しつつ、どう人生設計を組み立てていくかは人それぞれ。軌道修正もその人次第だ。本書は人生設計や人生の軌道修正のヒントを与えてくれると考える。決して絶望をあおるだけのものではないことは間違いない。
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NHKスペシャルで話題になった番組を書籍化したものだが、テレビよりもより突っ込んだ内容になっている。
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これはやばい。2010年に読んだ本の中でもベスト3には入るくらい。
現代社会の生き辛さ、他人との関わりが困難なこんな時代で
僕らが大人になった時に何ができるか。
深く考えさせられる素晴らしい一冊だった。
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久しぶりに重厚なノンフィクションを読みました。
自殺者3万人、という記事や本はよく見かけますがまさか年間3万人以上の人が「無縁仏」として葬られれているとは全く知りませんでした。
そしてその大半が身元が解っていながら遺骨の引き取り手がない…
だれにもみとられずに死んでいくことのむなしさや寂しさ、想像しただけでも胸が痛みます。
でも無縁仏になるのは誰にでも可能性があります。
「離婚」「リストラ」「路上生活」「夜逃げ」など…
日本と言うのは有形無形の人のつながりで出来上がっている社会だと思っていました。
私にとって全く未知の世界でした。
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誰にも知られずに死亡し、遺体の引取り手もない「無縁死」が増えているようだ。
NHKが自治体の協力で独自に調査した「無縁死」が年間3万2千人にものぼるという。
そのひとたちの多くは、「行旅死亡人」として身元を探す最小限の情報を国が発行する「官報」に掲載されるが、そのほとんどは身元が判明せず、自治体により火葬・合葬される。また、身元が判明しても家族がいるのに引き取られないケースもあるという。
核家族の時代から単身化、未婚化、少子化の時代へ。
これらは「無縁社会」の拡大を推し進めているのか。
この本は、NHK取材班が、一人ひとりの「行旅死亡人」の縁を警察の捜査のごとく解明していき、その原因や今後考えなければならないことを考察している。
読んだ人の多くが「衝撃的」という感想を持つと思います。
私自身もいっぽ人生の歯車がずれるとこの様になりかねないと感じています。
誰にでも可能性は十分にあると思います。
そもそも、つながりや縁というものは、互いに迷惑をかけあい、それを許しあうものではなかったのか。
それが「迷惑をかけたくない」という言葉に象徴される希薄なつながりが多くなっていることは確からしいです。
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あんまりにも話題になっていたので購入。
というか、自分もこういう仕事でかつ家族がそばにいなかったら絶対孤独死予備軍だよなぁ…という現実を見させられました。暗くなる。
本の内容はもちろんいいのですが、やっぱり映像で見てみたいです。
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重い。未婚率が高まり、地方が廃れ、都会に出たものの、地方に帰れない人たちの行く末はこのようになって行くのだろうか。。これは20年30年後の自分かもしれないね。
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切実すぎる!
今ある家族・親戚・会社など・・・
無縁死が取りだたされているけれども、死だけが問題ではないことが良く理解できた。
今の現役世代、未婚(男女問わず)や離婚の果ての頼る引き取り手無き将来・・・
正に自分自身にも近々当てはまるかもしれない・・・
無縁=絆の大切さ
皆さには是非読んでいただきたい!
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NHKスペシャルでも報道された無縁社会のルポ。
今の日本であまり知られていない負の一面。
ただ、それは、自分の最も身近なところに潜んでいる。
そういうことを意識させられた本です。
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「無縁社会」という、NHK「無縁社会プロジェクト」取材班 がまとめた本を読みました。
TVで話題になっていたのと、私達や、うちのスタッフさんにもけっして他人事ではないと感じたからです。
TVをご覧になった人も多いかもしれませんね。
「無縁死」という新たな死。
「誰にも引き取られない遺体」が年間3万2千人。
年間に約3万人が自殺するという日本ですが、この無縁死というのも新たな衝撃です。
事故や発見の遅れる孤独死など、名前の分からない身元不明の遺体は年間1千人近く。
こういう人たちは、「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」と呼ぶそうです。
それから身元がわかったとしても、急増する遺体の“引き取り拒否”
高齢になれば、すでに兄弟も亡くなり、甥や姪、遠縁は、すでに
何十年も会ってないのだから、と拒否されるよう。
単身化、未婚化、少子化といった家族のあり方の変容が、
どんどんこうした無縁社会になっているようです。
そして今までにない新しいビジネスが生まれています。
「特殊清掃業」~
自治体などの依頼で、家族に代わって遺品を整理する専門業者。
今や、30社あまりに増えている。
「家族がわりに亡くなったあとのサポートをするNPO」相次いで設立。
家族の絆が薄くなり、地縁、社縁、血縁が崩壊し、“ひとりぼっち”が急増するニッポン。無縁死はもはや他人事ではないです。
確かに、高齢化がどんどんすすんでいます。
社縁というのも、退職後意識してつながないと、
10年、20年経ってしまうとわからなくなってしまいますね。
そして、兄弟でも、90歳の姉と86歳の弟が離れたところに住んでいれば、もう行き来はできませんね。
若い方には、ピンと来ないかもしれませんが、日本の20年後は、一人で暮らす単身世帯が全世帯の40%近くに達するそうです。
ビジネスも大きく変わりますね。
驚くのは、高齢者や未婚者ばかりではなく、30代、40代の若い世代。
この番組に鋭く反応し、書き込みやツィッターのつぶやきが集中したそうです。
「将来の自分だ」「他人事ではない」
「このままでいくと、私も無縁死だ」という恐怖感。
私自身も独身子供なしですが、自分自身のことより、
社員やスタッフさんのことが本当に心配になりました。
経営者として、今の事業とは別の、年をとっても希望する人がギリギリまで働ける会社も作ろう、
老齢化した単身者のサポートをする団体も作ろう、近い将来の目標ができました。
家族の絆の薄さは、私の身の周りでもよく聞きます。
結婚すると、親戚やかかわる人が増える場合もありますが、
実家や兄弟姉妹、親戚と疎遠になることもあるようです。
また仕事一筋で家庭を顧みず、離婚する場合は、長い人生でみれば、淋しい結末となります。
人間関係にも努力が大切だと私は思っています。
親兄弟、親戚の血縁を大事に。
地域のコミュニティにも積極的に参加し、会社や周囲との人間関係を良いものにしていく努力を継続していきましょう。
そんなことを社内報にも書きました。
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1人で孤独に亡くなって行く人が、全国で3万2千人にのぼるという。地縁、社縁、血縁が崩壊し、“ひとりぼっち”が急増するニッポン。無縁死はもはや他人事ではない。人間関係の大切さを考えさせられる一冊です。
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NHKが2010年に特集を組んだ「無縁社会」の書籍化。
2010年の日本社会学会にて、番組ディレクターの話しを聞けたこともあり、購入。
遠く離れた地に家族・親族がいながらも、頼ることもできない高齢者たちの孤独が痛いほど伝わる。
そして、家族とはなんだろうかという思いを抱く。
家族のバラバラ化、社会とのつながり、それが断たれた後の自分とは。
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このテーマを多数で共有するきっかけになったという点では、番組にもこの書籍にも大きな価値がある。一方で、ひとりで暮らす人への視線、血縁やお墓へのこだわりには違和感を覚えるところもある。
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人間ってめんどくさっ
誰にも弔われずに無くなることに恐怖を覚える
生きてるのなら死ぬのは自然の摂理だし、動物であればそのまま分解されて土に帰るべきなんだけれど
私たち人間は親から生まれ、縁が生まれる
そしてそれは恒久的なものではなく、なくなってしまうこともある
周りに忘れ去られて死んでいく無縁死
こんな死んだあとの事に怯えながら生きていくなんて、私は遠慮こうむりたい