至って謙虚でリアル
2011/10/17 11:11
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投稿者:Pokhara - この投稿者のレビュー一覧を見る
本物のクライマーが書いた自伝は至って謙虚でリアル。エベレスト無酸素登頂とか、五大陸制覇みたいなメディア受けする記録を狙っている人たちが言うこととは次元が異なると思った。雪崩に襲われて死にかける描写はこちらの息が詰まるほどの迫力。山野井夫婦のギャチュンカンへの挑戦を描いた澤木耕太郎の「凍」や、同じクライミングでも道具を使わないフリー・クライミングの自伝物として「ユージ・ザ・クライマー」なんかと併せて読むと面白いと思います。
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投稿者:さしすせそまみむめも - この投稿者のレビュー一覧を見る
登山家、山野井泰史の7つの山の記録。
なかでも鮮烈に残るのは第7章「生還」です。厳しい下山の間、妻妙子に向けられる彼の眼差しを追っていると、山野井泰史が自身の登山について語るのとは別次元の深みが伝わってきます。
その記録は登山記の中でも異質のものであり、同じ類の文章が好きならばぜひ読んで欲しいと感じます。
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投稿者:falcon - この投稿者のレビュー一覧を見る
登山家の自伝や登山歴をまとめた本には、自己主張が強すぎたり、登山よりも自分を宣伝することが目的のようなものがあったりするのですが、この本の読後感はとても清々しく、筆者の山に向かう真摯で謙虚な姿勢が行間からあふれるような、それでいて山への熱意はひしひしと伝わってくるような本でした。
人間の極限を超えるような登山・遭難からの帰還も書かれていますが、それができたのもこの人柄があったからこそと感じました。
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面白くて一気に読んだ。著者については数年前の正月にNHKでドキュメンタリーやってて、すこし興味を持っていたところだったのだけど、これを読んだらもう言葉が出てこない。
文は簡潔だけど、その淡々とした文体がかえって凄みを感じさせる。特に最後のギャチュン・カン北壁登攀の章は感動的。
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以前から読みたいと思っていた、山野井さんの「垂直の記憶」
ハードカバーは、なかなか書店で見かけないと思っていたら、いつの間にか文庫化されていました。
「ヤマケイ文庫」と銘打って、出版しているようです。
すかさず大人買い。
読むのが遅い私ですが、予想以上に面白く、引き込まれる内容によって、あっという間に読了。
内容は、山野井さんの山行の中から厳選された7つの山行を紹介してくれています。
最初はクライミングの事を書いた本かと思っていましたが、山行記から滲み出てくるのは、山野井さんの山に対する思い。
従って山が大好きな人なら、クライミング経験が無い人にもお勧めできます。
クライミング経験があれば、より山行記に没入できる事うけ合いです。
読んでいて胸が熱くなり、今すぐ自分も山に行きたくなる。そんな本でした。
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夏の富士山登山に向けて士気を高めるために読んでみた。
もう山登りというか、崖上がり。
それが、気温マイナス20度のヒマラヤとかだから、すごい。
指が凍傷しようと、雪崩に巻き込まれて命綱が切れても挑み続ける、その情熱がすごい。
人は、こんなにも好きなことに没頭できるのか、と引き込まれた。
専門用語が頻繁に出てくるため、半分までは読みづらいけど、慣れてくるとクライミングの世界にどんどん引き込まれていく本。
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「凍」(沢木耕太郎)の素、本人による記述なだけにストレート、緊迫感があるが、素人向け(?)記述になってないので、???な部分もあったが、面白かった。ドキドキしながら読めました。
意外と(と言うと失礼だが)表現力も豊かで、それでいて誇張のない筆致がよかった。
「凍」から読むか、本書から読むべきか? どちらから読んでも楽しめたかな?
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ちょっと前に読んだ沢木耕太郎の『凍』が面白かったので、自伝記版のこちらも読んでみた。が、専門用語多くていまいち理解できず・・・。趣味で登山をやっている僕とは、山に求めているものが全くの別物なんだなぁと実感。
でも、『凍』でも魅力的に描かれていたパートナー・妙子氏との結婚生活についてのコラムは、とても印象に残った。山でもときどき老夫婦の登山者を見かけるけれど、ああいう姿はとてもうらやましい。
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寒い時期につい手を出しました。これからじっくり読みます。大きなスポンサーもなく、少ない装備で、自費で、登りたい山に登るスタイルの方で、山岳雑誌などに文章を書くのが数少ない収入と聞いたような気がして、珍しくちゃんと本屋で買いました。****読み終わりました。「凍」を読んでいたので結末はわかっているのにギャチュンカンの遭難は本当に息詰まります。沢木耕太郎のほうがノンフィクション作家なのだからうまいし興奮させるけど本人が書く実体験は当然ながらリアルでどれくらい苦しいのかどれくらい怖いのか、そしてどれくらいクライミングが好きなのかが偽りなく伝わります。あれだけ体を痛め恐怖を味わったのにもかかわらず、失ったものをいつまでも追い求めず、今もまた大きな夢をもって山に登っている姿はただ爽やか。奥さんの妙子さんもすごく魅力的な人物。山登りの記録の間に山に対する思いとか、妙子さんのこととか、ちょっとした文章が挟まれており、彼の人となりも少し見えてとても興味深かったです。数年前奥多摩でトレーニング中に熊に遭遇して鼻を噛まれてしまったという普通の人間からすると大変な怪我をした時に「鼻をかまれただけですから大丈夫でしょう」みたいなことをご両親がどちらかといえば笑顔で答えていたのをテレビで見て、心配でヨヨと泣いているような姿を勝手に想像していた私はなんだか不思議に思ったものですが、この鼻を噛まれた人が山野井さんだったと知った後はそりゃあそうでしょう、あの遭難に比べたら熊くらい・・と思うかもしれないな、と思いました。
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体力の無い私は山登りをしているとすぐに呼吸が浅くなる。
そんなとき、深呼吸をして、なんとかいつもの自分の呼吸を取り戻そうとするが、
とにかく歩かなくては、と足をつとめて前に出そうとするときには、
呼吸にまで気を回すことができなくなっている。
結果、少ない体力がさらに奪われることになる。
厳しい山に登っているわけではないのに、あのキツさ。
本書「垂直の記憶」に出てくる山の厳しさとは比べるべくも無いだろうが、
淡々と語られている山の厳しさに、まるで自分も近くに入るような気がして、時折呼吸を忘れた。
「早く、早く安全な場所まで降りてきて」
そう祈りつつ、最後のページを終えたときは、
安堵のため息がもれた。
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(感想を書き忘れてたのに気づいたのでリアルタイムな感想ではないですが)クライマーの本を読むのは初めてでしたが、記録を元に脚色を極力抑えて人に伝えようとする姿勢、決意が伝わる文章で、とても静かでとても小さいけれども密度の濃い内容でした。こういう人が存在してるっていうのがわかるだけでも、めっけもんかなと思います。
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文庫になっていたので、沢木耕太郎の「凍」とあわせて読みました。
壮絶な話だし、専門的な部分もあったりするのに、一気に読ませる文章。
山野井さんのやってることに共感できる訳ではないのに、この本を読み進めるにつけ、山野井さんという人間の魅力にどんどん引き込まれた。
この本をきっかけに、その後登山家ものを読み漁っています。
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世界的なクライマー山野井さんの登攀歴の一部を紹介している本。
以下の下りが最も心震えた。
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いつの日か、僕は山で死ぬかもしれない。死ぬ直前、僕は決して悔やむことはないだろう。一般的には「山は逃げない」と言われるが、チャンスは何度も訪れないし、やはり逃げていくものだと思う。だからこそ、年をとったらできない。仮に僕が山で、どんなに悲惨な死に方をしても、決して悲しんでほしくないし、また非難してもらいたくない。登山家は山で死んではいけないような風潮があるが、山で死んでも良い人間もいる。そのうちの一人が、多分、僕だと思う。これは、僕に許された最高の贅沢かもしれない。ある日、突然、山での死が訪れるかもしれない。それについて、僕は覚悟ができている。
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私も、山で死んでもよい人間になりたい。
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沢木耕太郎の『凍』と併せて読了。著者の山野井さんの言葉『はたして人は大きな夢を現実にした瞬間が最も幸せと言えるだろうか。僕は上に向かって前進しているときが、一番幸せのような気がしてならない』全てに感動しました。
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「ソロ」「凍」のモデルになった山野井さんご本人の山記録です。この人の前世はもしかして山?と思ってしまうくらい、山以外の無駄を削ぎ落として生きてこられてます。「普通」に流されたりしない凄く強い人。
自分が思っていた贅沢、幸せ、価値観を考えさせられます。山野井さんの存在を知れて本当に良かった。