紙の本
紙の本と電子書籍をくらべるにはまだはやい ?!
2011/04/05 22:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
37 人の著者が 6 ページくらいずつ,本へのおもいや本にまつわるおもいでなどを書いている. 日本でも電子書籍がでまわるようになってきた現在だが,紙の本にこだわるひともいれば,電子書籍になってもかまわないというひともいる. しかし,概して電子書籍に批判的な著者がおおい. それは,ほとんど電子書籍にふれていないことからきているのではないだろうか. 出版されたのが 2010 年 11 月ということだが,日本でこの種の本をだすにはまだちょっとはやすぎたのではないだろうか.
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有識者のべ37名が、”本の未来”について語ったエッセイ集。書店・古書店・図書館・取次・装丁・編集、そして練達の書き手・読み手による議論はどれも読み応えがある。紙の本への愛情を説くもの、電子書籍の欠落を語るもの、読書の本質は変わらないと主張するもの、さまざまな視点からの意見は、実にバラエティに富む。
ただ間違いないのは、電子化への流れは抗えないということと、紙か電子かという二項対立でものを考える必要はないということだ。この二項対立の構造は、委託制、再販制に基づく旧来型のプラットフォームか、Amazon、Appleなどのプラットフォームかという、ビジネスモデルの構造に根差しているところが大きく、読書そのものを二項対立で捉える必要は全くない。
本書によって得た気づきは、昨今の電子書籍の議論によって、欠落している視点が二点あるのではないかということだ。一つは、書き手の視点による議論が少ないということ、もう一つは、ブログをはじめとするネットメディアからの視点で考える議論が少ないということだ。
◆電子書籍の議論で欠けている視点
・編集の縦軸と横軸の広がり
本を送り届ける側にとって、紙の本ありきで物事を考える必要がないというのは、非常にポテンシャルを大きくしてくれると思う。土台から考えることによる負荷は大きくなるかもしれないが、選択肢が増えることによる編集の横軸の広がりは表現の多様性を引き出すことになるだろう。また、送り手側でのパッケージをどこまで行い、読者の参加感をどのようにデザインするかという、編集の縦軸の広がりも、新しい世界観をもたらしてくれる。
・溶けていく境界線
電子書籍を、紙の本とネット・コンテンツの中間に位置付けて考えてみる。電子書籍の登場による影響は、紙の本とは反対サイドにいるネット・コンテンツも同程度受けることであろう。”体系化されたストック情報”のポジションに電子書籍が位置どることになると、隣接するネットメディア、ブログメディアはよりリアルタイム感のあるフロー情報に特化していき、TwitterやFacebookとの境界線があいまいになっていくかもしれない。また、短文の電子書籍、長文の有料メルマガなど定義をあいまいにする表現物の登場も予想される。そしてその誰にとっても、電子書籍の登場は、出版することへの敷居を今までより格段に低いものにしてくれる。
今後想定される、本の送り手の増加というものを考慮すると、送り手側の視点こそが、今後の電子書籍の命運を握るのではないかと思う。
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いろんなひとの、本にまつわる考え。
示し合わせたわけではないと思うけれど、似たようなことを発想している人がいたり。おもしろいね。
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タイトル通りのテーマで書かれたエッセイ集。それぞれがそれぞれの立場からいろんな切り口で、本とは、読書とは、電子書籍とは、と語る。
大いに同意するとこもあるし、ちょっと言い過ぎじゃないの?って思うところもあった。
自分としては、電子書籍とは流通革命、と捉えているが、全体を読み終えてその思いを新たにした。
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【概要】
・紙という重さのある素材を失ったために文筆の営みはすっかり軽くなり、量産が可能になった分だけ製品はぺらぺらのものばかりになった。そもそも人類の知の総量が変わるはずがないのだから、インターネットによって生産を加速すれば中身は薄まる理屈だ。(池澤夏樹)
・KindleもiPadも、読書のための道具に過ぎません。読書そのものは不滅なのです。(池上彰)
【ポイント】
電子書籍か普通の書籍か、という話は、実はあまりたいした話じゃないのかもしれません。
手段と目的を切り分けて考える必要があるわけですね。
電子書籍が普及するためには「電子書籍だからできること」を追求すると。(ituneみたいな仕組みがあればいいのに)
転じて、結局は今流行りのソーシャルメディアもタブレットも、「それで、どうすんの?」がないとただの流行で、ブブゼラと同じなんですね。
流行りのものを使うのは、手段なのか目的なのか、意識をしないと飲み込まれちゃいますね。
(あっき)
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これだけの著者が並んでいるのに「教科書こそ早期の電子書籍化へ」という意見がなかった。
登山家のようなカバンを持って出かける子供たち。
置き勉をすることで、予習復習もできない。
教科書、辞書こそ電子化されるべき。電子黒板もたちどころに端末に入力されるし・・・。
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これからの本について、考えるきっかけを作ってくれる一冊。
少し紙の本に偏り気味に感じた。
電子書籍と紙の本はどのように共存していくのか、はたまた拡大・淘汰されていくのか?
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岩波HPの紹介文より
37人が思いを馳せる、書物と人間の未来形
みんな、「本」を愛している!
■編者からのメッセージ
ぼくはワープロで書いた最初の芥川賞作家だった。当初はフロッピーで入稿するということをしようとして、受ける側にその用意がなくて混乱したこともあった。以来、メモやノートや詩は紙にボールペンで書いても、原稿はすべてキーボードで書いてきた。
しかし本そのものは今もって紙に印刷し、製本するという形で流通している。読者は本を手に持って、一ページずつ開いて読む。時にはぱらぱらとめくる。
それが変わろうとしている、と世間は言う。本当だろうか?
(中略)
ここに集められた文章全体の傾向を要約すれば、「それでも本は残るだろう」ということになる。あるいはそこに「残ってほしい」や、「残すべきだ」や、「残すべく努力しよう」が付け加わると考えてもよいかもしれない。
みんな本を愛している。
(池澤夏樹)
■編者紹介
池澤夏樹(いけざわ・なつき)1945年北海道生まれ。作家。小説に『スティル・ライフ』『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』『静かな大地』『カデナ』など多数。『読書癖(1~4)』『嵐の夜の読書』などの書評集をはじめ、エッセイや評論も数多い。『世界文学全集』の個人編集を行う。
■目次
序 本の重さについて 池澤夏樹
電子書籍時代 吉野朔実
本の棲み分け 池内 了
発展する国の見分け方 池上 彰
歩き続けるための読書 石川直樹
本を還すための砂漠 今福龍太
屋をめざす若者へ 岩楯幸雄
書物という伝統工芸品 上野千鶴子
活字中毒患者は電子書籍で本を読むか? 内田 樹
生きられた(自然としての)「本」 岡﨑乾二郎
本を読む。ゆっくり読む。 長田 弘
装丁と「書物の身体性」 桂川 潤
半呪物としての本から、呪物としての本へ 菊地成孔
電子書籍の彼方へ 紀田順一郎
実用書と、僕の考える書籍と 五味太郎
永遠の時を刻む生きた証 最相葉月
綴じる悦び 閉じない夢想 四釜裕子
誰もすべての本を知らない 柴野京子
変わるもの、変わらないもの 鈴木敏夫
三度目の情報革命と本 外岡秀俊
私(たち)はなにをどう売ってきたのだろうか 田口久美子
最悪のシナリオ 土屋 俊
「追放本」てんまつ 出久根達郎
図書館は、これから 常世田 良
地域に根づいた書店をめざして 永井伸和
電子書籍のもつ可能性 長尾 真
和本リテラシーの回復のために 中野三敏
「買書家」の視点から 成毛 眞
届く本、届かない本 南陀楼綾繁
電子書籍がやってくる 西垣 通
出版という井戸を掘る 萩野正昭
「本ではない本」を発明する 長谷川 一
本と体 幅 允孝
大量発話時代と本の幸せについて 原 研哉
紙の本に囲まれて 福原義春
読前・読中・読後 松岡正剛
しなやかな紙の本で、スローな読書を 宮下志朗
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1011/sin_k557.html
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私達は本を愛しているが故に、この「電子書籍元年」を冷静に本質を見ることができているだろうか。「本」の持つ物質性を伴った読書という行為にこだわる方あり、コンテンツが重要であると説く方あり、本好きにとっては賛否両論思い浮かべながら一気に読めてしまう一冊でした。考え方が近いと思った:三度目の情報革命と本(外岡秀俊)でも文章は面白くない。本という形式にこだわって:綴じる悦び 閉じない夢想(四釜裕子)、世の中全体の方向は絶対行かないけど、個人的にはしようと思う:和本リテラシーの回復のために(中野三敏)、通勤行き・帰りで一気読み。
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○電子書籍
・記憶媒体(シリコン頭) but 欠損リスク
・辞書、辞典
・読み捨て本
・リニアな構成
・視覚
○紙の本
・思考媒体(カーボン頭)
・絵本
・教科書
・古典
・哲学書
・複雑な構成(位置の感覚)
・五感
木簡、竹簡
↓
パピルス、巻物
↓
冊子
↓
電子書籍(巻物)
↓
Twitter(木簡、竹簡)
↓
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偉い方々が、(電子書籍に対しての)紙の本の良さを語る本。楽しみにしていたけど、ちょっと期待はずれ。一話ずつならよかったが、これだけ「本は残る」「本はいい」といろんな人に言われるとウンザリしてしまう。
そんな中、代々木上原の幸福書店のおじさんの、本屋の日常を綴った話がなごみました。
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本に造詣が深い識者が、書籍の電子化について語った本。
端的に結論をまとめるならば、
●紙媒体の書籍は残すべきだ
●(残念ながら)紙媒体の書籍は淘汰される
この2点。
「みんな本が好きだ」ということを前提に各者各様の論陣を張る。
上野千鶴子は、本は伝統工芸品になると述べる。
鈴木敏夫は、書籍はこれまでどおり超然と屹立すべきと述べる。
この二人が特に象徴的。
個人的な見解を述べるならこんなところ。
純文学のように、表出的な本の読み方に適しているのは紙媒体の本。翻って、道具的に、知識を目的遂行のための手段とするならば、電子化のほうが効率化することは明白。
だとしたら、紙媒体をのこしたいならば、社会全体が能力主義、メリトクラシーを支配的原理とするのではなく、かつての長老主義を導入すべき。しかし、後者は現代のニーズと不親和。だから、紙媒体は淘汰こそされないだろうけれど、移行は不可避。
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「本は、これから」という題目で37人の読書人が電子書籍に対する考え方を書いている。既存の「本」の立場の人が多いので、本は残る、残すべきと考え手いる人が多い。電子書籍礼賛派の人も読むべき一冊。
書き手もよくぞ、この人をという人が多く編者も見事。
さすが、「本」派だと思うのは、文章が見事なこと。電子書籍礼賛派はえてして口語調になったりするが、この本では、どの人の文章も、大学入試に出題されるレベルまで、磨かれている。感嘆。
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40名弱によるオムニバス形式。昨今の電子書籍ブームに対するアンチテーゼ的著書、と表現してしまっても問題ないだろう。
タイトルのとおり「本」を愛する方々による著書なのだが、執筆者の面々は多種多様だ。批評家や教授をはじめ、写真家、デザイナー、国立図書館長、音楽家、書店勤務者…など。
各々が異なる切り口で本への愛情を表現する。
中でも興味深いのは、各々の本にまつわる体験やストーリーだ。幼少期から現在に到るまで、本にまつわるエピドードが紹介されるのだが、それらが結果的に多彩な個性を紡ぎ出している。「40名弱…」と冒頭で記したが、まるで「40人40色」とも言うべき様相をなしているのは、それが起因しているに違いない。
一方で、あまりに本への執着が強く、短絡的な批評が散見される。どっぷり本に魅了されている方々なのである程度は承知していたけれど、フラットな視点から批評しようという努力はあまり感じられなかった(勿論全員というワケではなかった)。
ただ、こうした偏った批評は「本に対する愛情」の裏返しである、ということは理解すべきだ。
今後、電子書籍事情がどういった様相を呈すかは分からない。
しかし、彼らのような読書人が存在し、本を愛する者たちが多く存在するということは意識にとどめておかなければならない。
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まあ、従来の紙の本も電子書籍も、しばらくは同居していくんだろうということ。
それから、電子書籍の方はますます利用しやすくなり、コンテンツが増えていくだろうということはわかった。