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各時代におけるカカオの貿易・生産・消費について書かれた本。
世界貿易と植民地化、奴隷貿易とともにヨーロッパに広まっていったカカオ。スペイン・ポルトガル・フランス・イタリアなど(カトリック圏)と、オランダ・イタリアなど(産業化・工業化が早かった地域)での広まり方の違いは面白かった。
飲み物だったココアは、宗教的背景もあり、薬として受け入れられていく(薬なら断食の間も許されるから)。様々な効用を持つため医学にも影響を与えた。優れた老舗ココア・チョコレートメーカーは、化学・医学に精通した薬剤師の家系であることが多い。そのうち機械の知識も合わせ持ったものの間から、チョコレート、ミルクチョコレートなどが改良される。
キットカットの青いラッピングペーパーにまつわる話は象徴的。チョコレートの見方が変わるかも。
最後の方に出てきたフェアトレードの話をもっと読みたかった。
一行だけ登場したモディカのチョコレート。行ってみたいと思っていたことをこの本で思い出した。
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中南米原産のカカオ豆から作られるココアとチョコ。西欧は当初いかに受容していったか。どのように変化して世界に広まったか。知るほどにチョコが食べたくなる一冊。
19世紀以降の話が,イギリスの事例(そのなかでもロウントリー社の例)に偏ってるきらいはあるけど,カカオのたどった歴史がざっくりわかる。16-17世紀にスペインから,砂糖を加え熱くして飲む習慣がヨーロッパ中に広まった。当初は宗教的事情から「カカオは薬か食品か」論争が繰り広げられる。
カカオ豆の胚乳部分を炒って,すりつぶしたのがカカオマス。それをプレスすると油が分離して,ココアケーキとココアバターが得られる。現在のココアはこのココアケーキからできる。プレスの技術は,1828年にオランダのヴァン・ホーテンが発明。それ以前は長らく油分の多いチョコレート飲料を飲んでいた。
カカオマスにココアバター・砂糖・ミルクを加えるとチョコレートができる。油分を含むカカオマスにさらに油を加えて,砂糖を溶かし込みやすくしている。ミルクを加える技術は,1876年スイスのネスレらによる。だから固形チョコレートの誕生って,19世紀でだいぶ遅い。
ヴァン・ホーテンやネスレ以外にも,リンツやキャドバリーやキットカットなど,ココア・チョコレートで有名な固有名詞がいろいろ登場。
安定で安価な供給が可能になると,ココアもチョコも大衆化し,広告もいろいろ工夫される。ポスターなどの図も豊富に紹介されていて楽しい。有名なキャッチコピー「Have a break, Have a Kit-Kat」は1962年に始まったらしい。50年とは息が長い。
あと,イギリスのカカオ産業を率いた会社が,いづれもクエーカー教徒の創業者をもつことは興味深い。大衆飲料を酒からココアへ,工場の労働環境を改善,など社会改良を目指す思想が,カカオ産業の成長を後押しした。
本書では詳しく触れられていなかった,ベルギーなどヨーロッパ大陸のチョコレート産業。イギリスで大量生産チョコレートが確立した後,20世紀に消費の多様化が進んでいくにつれて家内工業的だった非規格品のチョコにも注目が集まる。業界再編も経て,今世界には多様なチョコレートが出回っている。ありがたいことです。
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ページの多くを割いているのが、ロウントリー社が行った貧困・労働環境改善への取組み、キットカット関連の取組みについて。データが豊富で、読み応えのある興味深い内容だった。ココア/チョコレートの基本から歴史までじっくり味わえる良書。次回、チョコレートを買いに行くのが楽しみだ!
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国立科学博物館の「チョコレート展」が面白かったので読んでみた。中米の神々の食べ物から大西洋三角貿易でヨーロッパへ渡り、宮廷の飲みものから庶民のココア、チョコレートになるまでは、チョコレート展とほぼ同じ内容。イギリスのチョコレートの大衆化、産業化がクエーカー教徒によってなされた部分が詳しく書かれている。特に、キットカットのロウントリー社の歴史は、興味深い。19世紀から従業員の福祉制度を重視し、社会の貧困問題にも関心を持っていたとのはなしには驚いた。「近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石」とのサブタイトルどおりの内容で、チョコレート展で得た知識の整理と新たな情報により満足度が高い。
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アステカの貴族が飲んでいたカカオ飲料は、いかにして世界中で愛されるチョコレートになったのか?
食物の歴史から世界史を紐解くという作りの本はいくつかあるが、本書はなかなか出来のいい一冊だった。バレンタインの季節に書店にたくさん陳列されていたので、思わず手に取った一冊だったが、文句なしに人に勧められる。
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カカオから、ココア、そして、チョコレートに至までの流れ、それがまず興味深かったです。
今や身近となったチョコレートでも、近代ぐらいまでは、貴族のもので、それが時代の移り変わりなどとともに、一般の人の口に入るまでになったその過程にも知ることが多かったです。
チョコレートは、栄養食品にもなるので、南極探検で有名なアムンゼン隊も大量にもっていって、役にたったとか。
そして、あの有名なお菓子「キットカット」の話とかも。
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カカオがアステカ文明で珍重された話や、三角貿易に組み込まれていたあたりの話には目新しさはなかったが、
その後の話が面白かった。
十九世紀後半、労働者に必要なカロリーを、アルコールに代えて、砂糖、つまりはココアやチョコレートで摂るようになったこと、
イギリスのチョコレート業者がメソジストを中心に発展したこと、
メソジストが社会貢献に熱心なため、労働者の教育やモチベーションに配慮したチョコレート工場が経営されていたことなどが、興味深かった。
後半、
そのメソジストのチョコレート会社、ロウントリー社で考案されたキットカットについて、長く書かれており、あまり好きな味ではもないのに、食べたくなった。
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フグやナマコなど、最初にこれを食べた人間は勇気があるとか語られたりする。それらとは別方向で意味不明な食べ物といえば私ならチョコレートを挙げる。複雑怪奇な製造法や産地と製造国の不一致など、お菓子の代表格としてでかい顔をしているが相当に不思議な食べ物である。
本書は本来アメリカ大陸で薬や疑似貨幣として扱われていたカカオがヨーロッパで菓子として市民権を得るまでとイギリスの産業社会の発展と寄り添ったチョコレートの歴史を紹介している。
カカオにとっては砂糖と紅茶がまさに運命を変えた出会いとなったが、奴隷制や植民地政策と密接なそれら作物との関係を思うと業が深い食べ物だと感じる。
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“薬としてのココア”から“スイーツとしてのチョコレート”への変遷。前に読んだコーヒーの歴史と重なる部分も多く面白かった。特に4章以降のイギリスのチョコレート工場の話が興味深い。クエーカー教徒が運営する、労働者を大切にするチョコレート工場。かつてカカオ生産の現場でインディオや黒人奴隷を使い捨てたのとは対照的だ。福利厚生を充実させることで、労働力を再生産する。青いパッケージのキットカットからは、消費者に対する誠実さも感じられる。食品偽装問題が騒がれている昨今の日本でもぜひ見習いたい精神。
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とてもおもしろかった。
本の中心にあるのはキットカット。キットカットの歴史は、それを生み出した Rowntree 社の歴史であり、それはイギリス福祉の歴史であり、それはクエーカーの歴史であり、三角貿易から自由貿易への歴史であり…という感じで拡がっていく。
拡がっていく、というのは読み終えてから見返した時の視点であって、それは著者が後書きに書いているこの本を書くに至った発端からの発展ではあるけれども、本自体は紀元前からカカオが人間とどう歩んできたか、どうキットカットに至るのか、というような構成になってる。キットカット奥が深い。
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カカオからチョコレートやココアが誕生し、庶民の口に運ばれるまでが世界史として書かれている面白い本
何と言ってもイギリスの日本にはないキャッチコピーがイイね
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表題通り、中南米のカカオ豆が、大航海時代にヨーロッパに渡りココアになり、産業革命によってチョコレートとして展開していく流れが良く分かりますね。
筆者の専門分野かと思われますが、途中からイギリスの産業革命の工場の話に流れてしまい、何の本だか、って印象もして、近代チョコレートの話が少し物足りない感じもありました。
まあ、時間があれば、読んでみて損はないかな。
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後半は20世紀前半の福祉中心の話とキットカットの話になる。高級チョコより、労働生産物としてイギリスのチョコ史を見れて面白い。ただ、チョコの世界史というかイギリス史なのは留意点、
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なぜか意外と知っていたチョコレートの歴史。とは言えもちろん、初めて知ることもちらほら。
お茶とコーヒーとチョコレートってほぼ同時期にヨーロッパに入って来たんだけど、他の2つよりはいまいち席巻しなかったんだよね。そのあたりの関係も整理できて、ちょいとすっきり。
最近『〇〇の世界史』を何冊か読んで、歴史の面白さを再認識。ある出来事が、ある事象に思いがけぬ因果をもたらしていた、と喝破することが歴史の醍醐味だと個人的には思う。
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タイトルのおもしろさに惹かれて手に取ってみた。チョコレート好きなのも理由の一つかも。現在のチョコレートになるまでの過程を、様々な歴史的背景と交えて知ることができた。チョコレートがこんなにも歴史と深く結び付いているとは思いもよらなかった。