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苦役列車 みんなのレビュー

144(2010下半期)芥川賞 受賞作品

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みんなのレビュー356件

みんなの評価3.5

評価内訳

349 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

突き抜けた卑俗

2011/09/10 01:32

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る

芥川賞受賞の瞬間の様子を取材で聞かれて「自宅で待機していたが、連絡が来ないので、そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」と平然と語る反骨精神。「震災、原発という大きな問題は、西村さんのような私小説家にも影響を与えますか」と尋ねられて「全くないです。被災地に足を運んでる作家も、言葉は悪いけど、ネタ取りにいっていると思うんですよ。しょせん、東京から出版社のカネ貰って行ってるんですから。ネタ取りと、ポーズと自己満足のために被災地に行っているとしか僕には見えないですね」と答えるふてぶてしさ。
そんな西村賢太自身、無頼派のポーズをしている偽悪者なのだが、これだけキャラが立っている私小説家は久々で、それが作品の魅力にもつながっている。


父親が性犯罪者、中卒、家出、人足で日銭を稼ぐ、常に空腹で孤独で、夢も希望もない。その日暮らしだった作者自身の陰鬱で自堕落な青春時代に材を取った表題作のほか「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。

退屈で悲惨な毎日を反復するだけだった北町貫太の生活は、日雇い先で出会った日下部正二という専門学生との交流によって好転していく。だが卑屈さの裏返しとしての攻撃性と、愛されてこなかったがゆえの甘えによって、せっかくの友情を自らぶち壊してしまう。殻を破って他者と親しくなったことで、相手を傷つけ自分をも傷つけ、かえって一層、寂しくなってしまうという展開は、自業自得とはいえ痛々しい。


劣等感、怠惰、嫉妬、憎悪・・・自身の醜さをさらけ出すのは私小説の基本であるが、芥川賞受賞の表題作はそれだけの作品ではない。日本の私小説はどこか露悪趣味なところがあって、それが鼻につくのだが、作者は貫太の愚行と自滅をユーモラスに描くことで、この問題を巧みに回避している。要するに貫太を戯画化することで自己を相対化している。
貫太は周囲の人間全てに迷惑をかける問題児であるが、彼には少しも悪意がない。単に身勝手なだけであり、その幼稚さが読者から見ると一種の愛嬌となっている。いわば「憎めないダメ人間」であり、作者は若き日の自分をそのまま描いたのではなく、人物造形に工夫を凝らしたものと思われる(そして世渡り上手の日下部との対照によって、貫太の不器用さが殊更に際立つ仕掛けになっている)。この辺りの匙加減が絶妙である。

また、実体験を基にしている有利を差し引いても、「下流」な生活描写が非常にリアルで唸らされる。特に性欲と食欲に関する記述が異様に詳細で、何とも下品な文章なのだが、卑俗に徹しているからこそ笑えるのである。この作家の文章力は侮れない。


無教養な少年が主人公の作品なのに、妙に小難しい言葉が多用されているのもポイントだろう。そこに語り手である西村賢太(40代の作家)と作中人物である貫太(10代の少年)との分裂が明確に示されているわけだが、教養をひけらかすことじたいが中卒である作者のコンプレックスの表明に他ならない。もちろん作者は意識的にそうしているはずで、なかなか食えない作家だと思う。

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紙の本

芥川と対抗して都落ちしていた頃の菊池寛のようだ

2011/03/30 08:56

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る



このように己が中卒であり、人生の敗残者であり、あまつさえ父親が性犯罪者であることを小説の中で暴露したり、卑下しているようで自慢したりする文学者はとても面白いと思うけれども、友人としては絶対に付き合いたくない。

芥川賞を受賞した表題作は、4帖半一間1万5千円のその日暮らしの若者が日当5500円の肉体労働にいやいや従事してやさぐれ、世間の成功者を妬み嫉み、そして鬱屈し、自涜し、たまに糞袋に精を遣りにいって身も世も呪いつつ自滅していく話で、底なしの自虐がいっそ心地よい60年代にはよくあった青春をコピーした私小説でどうということもないが、冒頭に「嚢時」なる旧弊の漢字をあえて使用したところに、著者の傲岸不遜さとあえかな矜持があらわれていると読んだは当方の僻目か。

そのようにいくぶん恰好をつけて書かれた「苦役列車」に比べると、同じ書物の後半にグリコのおまけのように収められた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、著者のやけくその捨て身の私小説家魂が赤裸々に叩きつけられていて、妙に胸をつかれる箇所がある。

「彼は文名を上げたかった。(中略)名声を得たなら、彼を裏切り別の男に去っていった女のことも、たっぷりと後悔さしてやれる。自分の方がはるかに価値ある男だと云う事実を思い知らしてやるのだ」

「後悔させて」ではなく、「後悔さして」であり、「知らせてやる」ではなく「知らししてやる」と書いてしまうところに、この人の本質がある。さうしてインテリげんちゃんならそう思っても絶対に書かないほんとうの本音を、この人はまるで芥川と対抗して都落ちしていた頃の菊池寛のように、マジで書いてしまうのだ。

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紙の本

モラトリアムな寛多

2021/05/16 00:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

ひねくれまくった主人公・北町寛多にも、時おり親近感を抱いてしまいます。港の倉庫や場末の酒場の、鬱屈とした雰囲気も味わい深いです。

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電子書籍

テレビでみてから

2014/05/06 16:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:天上大風 - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者の西村さんをテレビで見てから、興味をもち買いました。テレビでみた、空気感が作品にもでていました。下品ながらも面白いですが、私小説なのでネタ出し尽くしてしまってからどうなるんだろう。

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電子書籍

いいですね

2012/07/21 20:51

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Dat - この投稿者のレビュー一覧を見る

生きる手段の一つでもあるとおもいます

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2011/01/28 00:05

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2011/01/27 10:23

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2011/04/04 15:42

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2011/03/23 07:31

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2011/02/09 15:14

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2011/03/26 22:57

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2011/01/31 15:01

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2011/03/24 00:46

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2011/01/31 18:09

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2011/04/18 20:05

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