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多重債務国家 余命5年の日本経済 (YELL books) 単行本(ソフトカバー) – 2010/12/20
財政破綻か大増税の救われない二者択一
2011年1月6日記述
危ない大学シリーズやこの会社が危ないシリーズなどの著作のある島野清志氏の本。
評価できる点は三橋貴明氏が主張するような国債は借金にあらずという理論は間違いであることを明確に指摘していること。
最近の経済評論家には余りにいい加減な主張をする者が多い。
(ここまで来ると言論の自由という範疇を越えて言論の無秩序と言って良いのではないか)
その意味でも正確な情報発信に勤める著者の姿勢は良い。
日本の借金が膨らむ一方であることから財政破綻が避けられないという近未来予測を書いている。
民主党などの現政権でこの難局を乗りきるのは難しいという指摘もしている。
本の中盤では戦後の日本の政治と絡めて国債発行がどのように増えてきたのかを解説。
終わりでは今後起こる可能性について列挙している。
日本の現状というものがいかに危機的であるかがよく分かる。
著者の島野清志氏はかつて危ない会社についての本内で、ツラ目評論家(日本経済楽観論か、もしくは日本経済悲観論を唱え続ける手法)は無視せよと指摘したのだが・・・
その筆者が日本経済の危機を指摘し始めたということはいよいよ日本の財政も厳しいのは間違いない。
本書の終わりでは終末の時代の財テク作戦としていわゆる「売り」について述べている。
ただし本書で日本経済の低迷の理由として新産業が登場していない事を指摘している。
しかし新産業が発達してこなかった遠因に島野清志氏のような新興企業への不信、猜疑が多くの
日本人の根底思想にあったからではないのかと思う。
(とは言えども本当に酷い企業もあったのだろう)
従来の伝統的企業を重んじる昭和的価値観の影を島野清志氏から強く感じる。
そのことが日本が新しく生まれ変われない遠因ではないのか。
新産業や若い世代への応援抜きに妙な達観ばかりしていても駄目だとつくづく思うようになった。